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» 2001年04月18日 12時00分 公開

第3章  マーケティング・システムeCRM実現のためのメソドロジー入門(3)(1/2 ページ)

[松尾順,@IT]

[1]マーケティング・システムの設計をするには

 「顧客との良好な関係づくりのための第一歩、それが『マーケティング・システム』である」

  今回は、このマーケティング・システムを設計するにあたって留意すべき点、拠り所となる考え方を解説していきます。

マーケティング・システムを設計するとは、どういうことか

 マーケティング・システムとはどんなシステムなのか、前回のホッパー図を再確認してみましょう(図1)。マーケティング・システムとは、非顧客を見込み客に変換する、すなわち「見込み客を創造する」という機能を持つシステムでした。

マーケティング・システムのホッパー図 図1 マーケティング・システムのホッパー図

 ところで、今回のホッパー図、図の右側に新たに「マーケティング施策」「IT施策」が追加されているのにお気付きでしょうか?

 第2章までは、話が複雑になるのを避けるためにあえて示さなかったのですが、インプットである「非顧客」をアウトプットの「見込み客」に変換する機能を実際に受け持つのは「マーケティング施策」であり、それを情報システムとして支援するのが「IT施策」です。

 これらはシステムを構成する要素であり、「システム要素」と呼びます。マーケティング・システムを設計すること、それは、「マーケティング施策」とマーケティング・システムのための「IT施策」を設計することにほかならないのです。

非顧客(ノン・ユーザー)を明確にとらえる

 マーケティング・システムを設計するにあたって、まずインプットの「非顧客」とはどんな人たちなのか、また、アウトプットとして得る「見込み客」とはどんな人たちなのか、を明確にしておきましょう。それによって、システム要素である、マーケティング施策の設計内容が変わってくることになります。

 「非顧客」すなわちノン・ユーザーは、大きくは2つに分けることができます。つまり、「競合他社の製品を利用しており、自社製品を利用していない人」と「自社製品も競合他社の製品のどちらも利用していない人」です。

 例えば、携帯電話という製品カテゴリでいえば、ドコモ、KDDI、Jフォンなど、どの会社であれ、「携帯電話を利用している人」と「携帯電話そのものをまったく利用していない人」です。前者を「他社ユーザー」、後者を「カテゴリ・ノン・ユーザー」と呼びましょう。

まつおっち先生の“ココがポイント”

非顧客(ノン・ユーザー)は、大きくは2つに分けることができる。「他社ユーザー」とは自社製品を利用していない人、「カテゴリ・ノン・ユーザー」とは他社・自社製品も含め、まったく(あるカテゴリにおける)製品を利用していない人である


他社ユーザーへのマーケティング施策

 ここで、素朴な質問をしてみましょう。他社ユーザーは、なぜ自社製品を利用してくれないのでしょうか? そもそも自社製品の存在を知らないからではないでしょうか。知っていたとしても、自社製品の他社との違い、優位性を理解してくれていないのかもしれません。

 自社製品の方が優れていることを分かっていながら、他社製品を利用している人もいます。ユーザーへのアンケート調査などで「現在の商品を利用している理由はなんですか?」という定番の質問をすると、上位に挙がる回答が「これまでずっと使ってきたから」「使い慣れているから」といったものです。

 ユーザーは、単なる習慣、惰性で製品を利用していることが多く、必ずしもその製品でなければならない明確な理由があるとは限らないのです。第1章でも書いたように、その製品が単に好きだから、という理由も、実は長く利用を続けていることから生まれる「愛着」という感情の場合があります。

 ともあれ、使い慣れた他社製品から自社製品へのスイッチを促すのはそう簡単なことではありません。ですから、ここでは他社ユーザーを自社製品に振り向かせるような、斬新なマーケティング施策が求められるわけです。

まつおっち先生の“ココがポイント”

利用製品をスイッチさせるためには、利用者の習慣を打破するような斬新なマーケティング・アイデアが必要だ


カテゴリ・ノン・ユーザーへのマーケティング施策

 一方、カテゴリ・ノン・ユーザーは、一言でいえば「食わず嫌い」です。そんな製品カテゴリがあるのは知らなかったというケースもありますが、多くの場合、その製品カテゴリの存在は知っていながら購入(利用)しないのです。

 それにはなんらかの理由があるのは当然なのですが、その理由というのがどうにもならないほど大きな阻害要因だとは限りません。例えば、単純に「よく分からないから」という理由で利用しない人がたくさんいたりするのです。

 IIJなどのインターネット・プロバイダが設立され、日本でインターネットの普及が始まった6、7年ほど前、使ってみれば便利さが実感できるインターネットの導入をためらわせた理由には、コンピュータ・リテラシーの問題と並んで、「インターネットってよく分からないから」といった感覚的な理由による抵抗も多かったのです(このような方、周囲を見渡せば、いまでも結構多いんじゃないでしょうか……)。

 そこで、健康上の理由などでその製品を利用することができないといった、本当にやむを得ないものは別として、購入を阻害している要因をうまく取り除いてあげる施策がここでは必要になってきます。

まつおっち先生の“ココがポイント”

「以前使ってみたが、自分には不要だと思ったから現在は使っていない」という利用経験を持つカテゴリ・ノン・ユーザーに対して、再び利用を促すのはかなり難しい。そうした人をマーケティング・システムのインプットとすべきかどうかは十分に考えるべきである


「見込み客」を定義してみる≫「見込み客」を定義してみる

 マーケティング・システムが、こういった非顧客(他社ユーザー、カテゴリ・ノン・ユーザー)を変換した結果として得るアウトプット、すなわち「見込み客」とはどのような人なのでしょうか(実際は、自社としてはどのような人たちに変換したいのか、というように主体的に考えるべきですが)。

 見込み客とは、文字どおり「(購入する)見込みのある客」で、自社製品を購入したい、あるいはそれほどでなくても、自社製品を認知し、興味・関心を持ったり、試したりしてもいいかな、といったレベルまで意識・態度が柔らかくなっている他社ユーザー、またはカテゴリ・ノン・ユーザーのことです。

 この見込み客は、マーケティング・システムに続く、「セールス・システム」のインプットになります。見込み客に対して「購入」という最後の決断を促し、アウトプットとして「購入客」を得るのがセールス・システムとなります。

では、次に「マーケティング施策」について考えてみましょう。

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