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» 2001年06月09日 12時00分 公開

第6章 サービス・システム 〜製品に付随するサービスが優良顧客に繋がる〜eCRM実現のためのメソドロジー入門(6)(1/2 ページ)

[松尾順,@IT]

[1]優良顧客を生み出すサービス・システム

 顧客との関係づくりにおいてトリの役割を務めるのが“サービス・システム”です。サービス・システムは、「優良顧客」(ロイヤルユーザー)を生み出します。「優良顧客」とは、自社製品を繰り返し購入してくれるお客さんであり、また、自分が購入するだけでなく、友人や知人に購入を推奨してくれたり、あるいは自社製品の改善につながる感想や意見を積極的に企業に伝えてくれる人々です。

 企業側としては、この段階まできて初めて、顧客をかけがえのない「資産」として考えることができるようになります。優良顧客は、短期的な売り上げしかもたらさない一過性の顧客とは異なり、毎年安定した売り上げを生み出す基盤となるからです。

満足を超えて、反復購入を促すサービス施策とは

 では、まず例によって、ホッパー図でサービス・システムの大枠を確認しましょう(図1)。

図1 サービス・システムのホッパー図 図1 サービス・システムのホッパー図

 サービス・システムのインプットとなるのは、「満足客」です。満足客は、第5章で解説した“エクスペリエンス・システム”によって創造された人々でした。彼らは、購入した製品を実際に利用することによって、自分の望んでいたこと(ニーズ)が満たされた状態にあります。

 しかし、製品に満足しているからといって、必ずしも反復購入に至るとは限りません。前回お話ししたように、顧客にとって大切なのは、製品自体の利用がもたらす満足を超えたトータルでの利用経験であり、満足した顧客をさらに優良顧客へと進化させるには、サービス・システムで展開される「サービス施策」が重要な役割を果たします。そして「サービス施策」を有効に機能させるためのツールが、顧客データベースを核とする「IT施策」なのです。

製品を補完する付随機能の提供が必要

図2 製品の3要素 図2 製品の3要素

 ここで、基本に立ち戻って「サービス」の本来の役割や位置付けについて考えてみます。そのためには、「製品とは何か」という視点からサービスを見るのが分かりやすいでしょう。製品とは、図に示したように3つの要素から構成されると考えることができます(図2)。

 まず、円の中心部には、製品が提供するベネフィット(効用)があります。ベネフィットは問題解決と言い換えることもできます。例えば、自動車を購入することによって得られる基本的なベネフィットは「移動」です。自動車とは、ある目的地に移動したい場合の解決策(移動手段)の1つだと考えることができますね。これを「製品の中核」と呼びます。

 次に、この中核となっているベネフィットは、実体のあるものとして実現しなければなりません。具体的には、「品質水準」「特徴」「デザイン」「ブランド名」「パッケージ」です。「移動」のための解決策である自動車は、排気量の大きさや、セダン、RV、トラックといった車種、セルシオ、オデッセイ、RX-7といったブランド名によって、形のある製品としてわれわれに提供されています。これが「製品の実体」です。

 そして、一番外側にあって製品の実体を取り巻いているのが、「製品の付随機能」で、ここには、「製品の設置や納品」「支払い方法」「保証」「アフターサービス」といった項目が入ります。これらは、製品の購入や利用に必然的に伴うさまざまな機能であり、それぞれがきちんと役割を果たさないと製品は完結しません。自動車の場合だと、高額商品ですから、現金払いだけでなく、ローンやリースなどの各種の支払い手段を用意することが求められますし、常に移動できる状態であればこそ自動車としての価値を持つのですから、故障時対応が不可欠です。

 本論における「サービス・システム」とは、この「製品の付随機能」を指します。付随機能ですから、あくまで補完的な役割です。ですから、製品本体が、顧客の求めるニーズを満たすだけの優れた機能を提供できなければ意味を持ちません。一言でいえば、サービス・システムとは製品を常にベストの状態で利用できるように保つ仕組みといえるでしょう。

 ただ、これまで何度か述べてきたように、製品本体では他社との大きな違いを出せなくなってしまったいま、サービス・システムの優劣が、顧客の満足度、さらには反復購入してくれる優良顧客を創造できるかどうかのカギを握っています。なぜなら、設計段階で決定された性能・品質水準が工場出荷段階でチェックされる製品本体と異なり、サービスシステムは「人」の果たす役割が大きいため、サービス品質に大きな違いが出やすいからです。

 このサービス・システムにおいて、CRMの視点から見て最も重要な機能は、「アフターサービス」です。顧客は、製品購入後、アフターサービスを通じて企業と直接的なコミュニケーションを行います。この直接的なコミュニケーションこそ、顧客と事業者との良好な関係づくりに最も大きな影響力を持つのです。

まつおっち先生の“ココがポイント”

優良顧客は、企業にとって「資産」と呼べる。優良顧客を生み出し、維持するためには、顧客満足を超えたトータルでの利用経験を完成させるサービス・システムの構築がカギを握る


満足客を、優良客に進化させるサービス・システムには、

どのような心がけと仕組みが必要でしょうか?

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