連載
» 2001年12月04日 12時00分 公開

eビジネスが生み出すエクスペリエンス(5):音声”で広がるバーチャル・エクスペリエンス (1/2)

[鈴木貴博(ネットイヤーグループ株式会社),@IT]

今回の内容

  • 音声が切り開く次世代のインターネット
  • ブロードバンドにより出現する新しいエクスペリエンス

 これまで4回にわたり、「現在の」インターネットが生み出した新しいエクスペリエンスについて連載を続けてきた。今回からは視点を近未来に向け、「次世代の」インターネットがどのようなエクスペリエンスを提供してくれるのかを一緒に考察したい。まずは今回のキーワードはモバイルとブロードバンドである。

 

音声が切り開く次世代のインターネット

「電話」も新しいエクスペリエンスを提供し始めた。音声もこれからの新しいエクスペリエンスのキーの1つだ

 次世代のインターネットを身近に体験するにはVポータルに電話をしてみるといい。「Vポータル」とは、NTTコミュニケーションズが提供する音声によるWebサイトといった感じのインターネットサービスだ。使い方はWebブラウザに非常に近いのだが、唯一の違いは受話器から音声で「戻る」とか「スタートメニュー」と指示を出すことだ。もちろんコンテンツも音声で「聞く」という、従来のPCやケータイのインターネットとはまったく異なる世界を体験できる。

 百聞は一見(?)にしかずということで、ここでVポータルに電話をしてほしい。全国どこからでも0570-0033-03で、Vポータルのスタートメニューに接続できる。固定電話の場合90秒で10円、携帯電話(NTTドコモのみ)の場合14秒で10円の料金で利用できる。接続したら、以下のように(5秒程度の間隔を空けて)コマンドを話してみれば、どのようなサイトかが実感できる。

「天気案内」(5秒間隔 以下同じ)「東京」「東京」「今日」「スタートメニュー」「株価」「松下電器」「スタートメニュー」「ニュース」「J-Wave」


 どうだったろうか。最初の4つのコマンドをしゃべった段階で東京地方の今日の天気予報が聞こえてくる。次に「スタートメニュー」と発するといわゆる“ホーム”に戻ることになる。「株価」「松下電器」と続けると、松下電器産業の株価の現在値が耳に入ってくるはずだ。Yahoo!と違って株価は20分遅れではなく現在値であるところが特長だ。さらに「ニュース」「J-Wave」で聞こえてくるのは東京に住む人間にとっては耳慣れた「Headline

news、J-Wave」というメロディに乗った言葉に続いて、J-Waveの最新のヘッドラインニュースがストリーミング音声で流れてくる。

 ガイダンス音声を最後まで聞かなくても、途中でコマンドを発声すれば次のページに移る。これが「バージイン」という機能で、この機能のおかげで、Vポータルの操作性は通常のインターネットと同様の快適性が実現されている。インターネットユーザーがブラウザ上の情報を全部ダウンロードされる前にボタンをクリックすれば、次のページに移れるあの感覚だ。

 音声認識も現時点でOKのレベルに到達していると感じられた方が多かったのではないだろうか。実は、音声認識技術に関しては日本は米国に比べて優位にある。といっても技術的に優位というよりも、日本語自体が音声認識に適しているという話だ。そもそも日本語のほうが英語よりも1つひとつの音が独立していて機械に認識しやすいのに加えて、米国が多民族国家で同じ米国人でもアジア系、スペイン系で英語の発音が異なるのに比べて、日本には標準語という共通に通じる言葉でしゃべる人が多いという特性から結果的に音声認識技術が実用化されやすい土壌にあるということだ。

 このVポータルの技術やビジネスモデルは、将来的にログインや課金といったインターネットが現有している機能を取り込んでいくことで、音声によるインターネットというまったく新しいエクスペリエンスをわれわれに提供してくれることになるであろう。

米国の次世代モバイル“フォン”インターネット

 実は、iモードの普及していない米国では、モバイルインターネットの本命は音声ベースになると考える人間は多い。もう少し正確にいえば、音声ベースのモバイルと、文字・画像ベースのPCインターネット(プラスPDA)を組み合わせた方法で新しいエクスペリエンスが出現するのがモバイルインターネットの次世代であるという構想だ。

 米国のフォードとクァルコムによる合弁会社のWingcastが狙っているモバイルインターネットサービスはこの典型例といえる。Wingcastが使われるシーンは主として自動車のドライブ中である。米国の典型的なビジネスマンの1日は乗用車に乗り込んで職場に向かうところから始まる。Wingcastのデモに登場するビジネスマンはミディアムサイズのセダンに乗り込んで車を道路にすべらせると同時に、ハンズフリーのモバイルフォンからWingcastを呼び出す。Wingcastは彼が管理している自分のスケジューラにつながり、今日1日のスケジュールを読み上げてくれる。スケジュールをチェックしたり、NYのマーケット情報を聞いている途中でWingcastから音声ベースのメールが届く。「10時に予定されていたA社とのミーティングは、場所がパロアルトの本社からクパティーノの研究所に変更になりました」。そのメールを受け取るや否や、彼はハンドルを大きく切って自動車をUターンさせる。

 クパティーノでの会議が終了して、皆がざわざわと席を立ち始めたときに彼は携帯電話でWingcastを呼び出す。「Wingcast、ランチミーティングの予約を確認してくれ」。Wingcastは自然言語認識に対応する方向で開発が進められているようだ。「12時15分からサンマテオのWilson'sに2名さまで予約を入れてあります」というコンピュータ音声を聞くと、彼は「Wingcast、コールセンターにつないでくれ」と応じる。その言葉とともに、ハンズフリーフォンはボイスインターネットからコールセンターの秘書サービスへと切り替わる。「昼のランチの予約だが、大切なお客さまなのでサンフランシスコ湾が見える眺めのいい席を確保するようにしてくれないか。それから先週行ったときに勧められたワインを頼んでおこう。'98年もののオーパスワンをテーブルに持ってきてもらうように頼んでおいてくれないか」「かしこまりました。あと、メールが2通きていますが、いまお聞きになりますか」「いや、車に戻ってから聞く」「了解しました。またご利用ください」。このような具合で、コールセンターのオペレーターが会員個人のし好や履歴を参照しながら、秘書としてのサービスを代行してくれる。

 Wingcastの構想を見ると、PCやPDAベースで個々人が作ったスケジューラ・データやインターネットの情報提供の環境をそのままモバイルで自動車の中に持ち出すと同時に、インターネットとコールセンターをシームレスに使いこなすことで、1人1人のビジネスマンがまったく新しいエクスペリエンスを実感できる世界をつくり出そうという意欲が感じられる。現世代のインターネットが挑戦しているクリック&モルタルの世界から一歩進んで、インターネット&モバイル&リアルワールドといった社会をにらんだ展開を視野に入れた次世代のチャレンジといえよう。

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