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» 2004年06月19日 12時00分 公開

何かがおかしいIT化の進め方(7):仕事への取り組み方は最初の数カ月で決まる! (2/3)

[公江義隆,@IT]

初めてやることの取り組み方が特に大切

 会社の仕事についても、入社数カ月〜2年の間に「何をどのように経験したか」が、“仕事というもの”に対する認識となり、ここで作られた認識を基に、その後の仕事を理解するようである。縦縞での取り組みしかしなかった人は、その後も仕事の縦縞しか分からない。「情報システムをどういうものと認識するか」といった問題も、この時期の体験による場合が多い。

 上司にすれば“取りあえず”のつもりであったにせよ、最初にマニュアルどおり仕事をするように指示された人は、その後、マニュアルや上司からの具体的な指示がないと動けない人間になりやすい。「仕事のやり方を考えることも、自分の仕事の一部」という概念がピンと来ないわけである。

 これらは白紙の状態の頭に最初に刷り込まれる認識の問題であって、素質や知能の問題ではないが、1度刷り込まれた認識を改めさせることは大変難しい。いわば、最初の仕事の中で作られた色眼鏡でそれ以降の世界を見ているようなことになる。厄介なことに自分の眼鏡のレンズに色が付いていても、色が付いているという認識が持てない。赤いレンズを通して見れば赤い世界は白く見え、危険を示す赤い字は読めない。

新人はしっかりした考え方を持った人間につける≫

 「この建物は誰が造りましたか?」という問いには次の3種の答えがある。

  • オーナーのAさんです
  • 設計事務所(のBさん)です
  • 大工さん、左官屋さんです

 本来は質問の背景によりどの答えを選択するかという問題である。ユーザー企業の情報システム部門は、基本的にはオーナー(ユーザー)と協力して企画を立て、計画・設計と施工(開発・運用)監理を行う設計事務所の立場に近いと思う。

 そこで上の問いの“建物”を“情報システム”に置き換えてみると、情報システム関係者には、背景がどうであっても、なぜか“大工さん・左官屋さん発想”派が多いように感じる。「“もの”作り・システム作り=プログラム作成」がシステム部門の中心業務であった時代の発想や、「入社してオペレーション業務を担当。これを卒業してプログラマ、やがてSE」という、二昔も前のコンピュータメーカー推奨キャリアパス論の名残なのかもしれない。つまり「細かい作業の集大成が、情報システムという作品につながる」という発想が、無意識のうちに頭の中に出来上がっている。実務的だが、全体を見失いやすいという問題を残す構成(Synthesis)型の発想/アプローチである。

 この対極に、大学の研究者やコンサルタント、あるいは現場から遠ざかった本社スタッフなどが取る「分析(Analysis)的アプローチ」がある。大問題を分析して、いくつかの中問題に分解、さらに分解して多数の小問題に……という方法である。大問題を構成している小問題の整理や分類はされるが、いくら細かく分析しても答えが出てくるわけではない。事実の解明が目的であるサイエンス分野のアプローチの多くはこれである。

 問題解決が要求される情報システムや経営問題では、前者の構成型アプローチと、後者の分析的アプローチが融合された工学的アプローチが必要だ。こうした基本的な問題や考え方についての理解や認識を、早い段階に学んでおく必要性について、皆さんはどうお考えだろうか。

育てたいと思う若い人には仕事の中核部分を担当させる

 仕事やプロジェクトの人員配置、メンバー構成は、一般に“何となく”次のようになっていないだろうか?

・中核部重要ベテランが担当

・周辺部問題意識低結果的に経験の浅い人が担当

 情報システムについていえば、多くの人が重要と思っている中核部分は、理屈で考えやすくオーソドックスな方法で進められる問題である場合が多い。

 また中核部分から眺めると、問題の全体構造の把握や認識がやりやすい。この部分を担当するだけで意欲(モラル)は高まり、これが対面する困難への挑戦力にもつながるので学習効果は高い。多くの関係者が関心を持ってチェックしているから、万一間違った考え方や行動をしていても発見は早く軌道修正もやりやすい。

 扱いが難しいのは、むしろ周辺問題である。思わぬ問題や人が関連していたり、過去のいきさつや社内事情を含めた総合判断が必要になったりする場合が多い。こんな複雑な問題を実務経験の浅い若い人にやれといっても、うまくできないのが当たり前だ。全体構造の把握など、とてもできるものではない。

 理屈どおりにはいかないこんな問題こそ、ベテランの力を発揮し経験を生かせる場ではないだろうか。

 ただし、プライド高きベテランに周辺部をやらせるなら、そのための動機付け(モチベーション*4)が必要になる。上司の考え方と、人の評価の仕方次第の問題である。


*4:モチベーション〜motivate(動機付ける、やる気にさせる)の名詞形。動機を付ける側と、付けられる側の2つの立場がある。もっとも、管理職やプロフェッショナルは自分に対して自分を動機付けることが求められるが……。


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