仕事への取り組み方は最初の数カ月で決まる!何かがおかしいIT化の進め方(7)(3/3 ページ)

» 2004年06月19日 12時00分 公開
[公江義隆,@IT]
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立場の変化は認識を改めるチャンスだが……

 1度形成された認識が、徐々に変わっていくということはほとんどないと思う。異分野や新しい種類の問題に初めて取り組んだとき、昇進や異動などで異なった立場になったときが、それまでの認識を改めたり問題を正しく認識し直したりする絶好の、そしておそらく唯一の機会であろう。

 しかし「いままでバラ色と思っていたことが実はブルーだった」といった認識を自ら持てるのは、変化や外部からの刺激が極めて大きく、衝撃的だった場合に限られる。多くの場合、衝撃の度合いはこの水準には至らない。あるいは自己防衛意識から変化や衝撃を否定するような方向に走る場合もあり、多くの場合、困難に直面しても従来の延長線上で努力しようとする。結果的に、新しい事態と新しい問題に対しても、それまでの古い認識に基づいて、決して適切とはいえない認識形成を繰り返してしまうことになる。

 人は本当に困らないと真剣に考えないし、他人の話を自ら聞こうとはしない。上司や周囲からの働きかけ(教育、啓発)が大変重要で、かつ本当に必要なのである。マネージャは上司として部下に適切なアドバイスのほかに、場合によっては強制的な行動を取ることも仕事として求められる。

 頭打ち/伸び悩み状態になっている人には、「当人が本当に困る=本気になって考えざるを得なくなる」環境を与えることが本当は必要なのである。マネージャの気力が試される問題である。ここでマネージャが、部下に対して物分かりのよい“いい子”になってしまえば、人は育たない。

 組織の中ではポジションが上がるほど、意見してくれる人は少なくなる。マネージャ自身の問題として、自分にアドバイスしてくれる上司、同僚、部下の存在が欠かせない。このための日ごろの言動や態度への注意や努力が大変重要である。

新しい行動は賞味期限内に着手する

 マネージャとして新しいポジションに就いたとき、新しい行動の着手はある期間内にやらないと始めることが大変難しくなる。状況把握や様子見も大切ではあるが、新任者は何かを期待されて着任してきたはずである。「何からどのようにやるだろう?」と部下や周囲の関係者が期待と不安をもっている間に、そして何よりマネージャ当人が使命感と緊張感を高めているうちに着手することが必須である。

 特にラインのマネージャ職の場合は、日々の仕事があるため、宿題の大問題に手を付けなくても今日明日にすぐ困ることは少ない。「始めるのは今日でなければならない」といったことでもないので、気にはしながら時間だけがどんどんたっていくといったことになる危険性が高い。

 一方で、関係者や自分自身の緊張感は時間とともにどんどん低下し始める。ある期間が過ぎると、最初の「やる前提で、いつからどうやるかが関心事であった」状態から、「やるのか、やらないのか」を問題にするところまで後退してしまっていたりする。

 「新米でよく分からないだろうから、多少のことは勘弁してやろう」「分からなければ教えてやろう」といった周囲の雰囲気はとっくになくなっている。こんな状態からの再立ち上げは、新米マネージャにとって大変難しい問題になる。

 マネージャにとってのこの賞味期限、最近では1〜3カ月、長くて半年であろうか。この賞味期限が組織として新しい問題認識の形成可能な時期になる。

仕事に余裕を持とう

 位置に付けば、即全力疾走が求められる厳しい時代になってしまった。ストレス発散を心掛け、せめて気持ちのゆとりを積極的に作らないと体が持たないし、仕事もうまくは進まない。

 仕事が逼迫(ひっぱく)してきたとき、物理的な限界より先に精神的なストレスの限界に直面することが多い。宿題の数がある限度を超えると、頭が混乱を始める。1つのことをやっていてもほかのことが気になり能率が上がらない。やっていることすべてが中途半端な状態になっていく。

 こんなときは、1つ1つ順番に片付けていくしかない。抱えている問題を紙に書き出して優先度を付けてみると、「あれもこれも、やらないといけない」を「取りあえず、あれとこれを、やればよい」という気持ちに変えられる場合がよくある。一覧表や鳥観図など、視覚の助けを借りて全体が見えるようにすると、頭が客観性を取り戻すようだ。

profile

公江 義隆(こうえ よしたか)

ITコーディネータ、情報処理技術者(特種)、情報システムコンサルタント(日本情報システム・ユーザー協会:JUAS)

元武田薬品情報システム部長、1999年12月定年退職後、ITSSP事業(経済産業省)、沖縄型産業振興プロジェクト(内閣府沖縄総合事務局経済産業部)、コンサルティング活動などを通じて中小企業のIT課題にかかわる


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