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» 2005年03月17日 12時00分 公開

何かがおかしいIT化の進め方(14):ITの動向や他社の状況を、気にし過ぎていませんか? (1/3)

今後IT予算を増やす企業や維持する企業、減らす企業など2極化、3極化していくだろう。今回は自社の今後の情報化を考えるうえで、企業の特性や戦略によってITの位置付けがどのように変わるかについて、3つの切り口からとらえて述べていく。

[公江義隆,@IT]

2極化、3極化してきたITコスト

 今後さらにIT予算を増やすという企業や、コストダウンを図りながら現状の予算水準の維持を目指す企業、積極的にコスト削減に傾く企業など、IT投資が2極化、3極化する傾向が見られるようになってきた。

 いままさにIT投資の最盛期にある企業や、今後もさらなるIT投資が必要・有効と考える業種の企業、先行してIT化に取り組み一段落した段階にある企業など、業績の動向も併せて見ると、IT化の流れに変化が出てきている様子がうかがえる。

 また、各企業がコスト削減のプレッシャーの中で、保守・運用費の削減に取り組むところが多いが、「やれることをそろそろやり尽くして、さらなるコスト削減がだんだん難しくなってきた」という声を聞く機会も増えた。削減したコストを新規投資に回すという方策にも限界がある。新規投資の内容や位置付けをさらに徹底して考える必要性が高まる。

 過去10年の“模索の時期”を脱して、多くの企業で経営の方向がはっきりしてきた。IT・情報システムの分野も一時期の混乱から抜け出て、1つの曲がり角にきている。将来を見据えた自社の情報化の姿や、体制の見直し・立て直しの機会、人材の育成を真剣に考えるべきときだと思う。今回は、自社の今後の情報化を考えるうえで、企業の特性や戦略によってITの位置付けがどのように変わるかについて考えてみる。

業種によって異なるITの位置付け

 いろいろな業種のIT関係者が参加する会合での話や、ITに関するマスコミなどの論調、ほかの企業や業界のIT化やその考え方に何となく違和感を覚えたことはないだろうか。IT・情報システムの位置付けは業種によって大いに異なってくる。メーカー(製造業)と、金融関係をはじめとした“情報が商品”の企業を比べてみよう。

 メーカーの場合、売っているのは形のある製品である。研究開発を通じて新しい製品を作り出し、これを製造して販売する。事業の中心にあるのは製品である。客が求める、満足してもらえる良い製品を、“いかに早く”創り出し、“いかに効率的”に作って、“いかに良いサービス”で届けるか、つまり“いかに……”に貢献するのがIT・情報システムの位置付けである。

 つまり、企業として戦力の主役はあくまで製品であり、IT・情報システムはこれを盛り立てる脇役の1つということになる。投資という面から見ても、研究開発や製造設備などが主な対象である。これらに比べれば、IT・情報システム投資は世の中が騒ぐほど、あるいはIT関係者が期待するほど大きな関心の的であることは少ない。

 一方、例えば、金融関係の企業では、扱っているお金やお金にかかわる商品は、金額という情報やそれにかかわる権利などの情報という見方ができる。教育事業や音楽・映画をはじめ、ニュースやいろいろな情報の発信などのメディア事業も、旅行代理店(商品はクーポン券ではなく、乗り物やホテルの利用の権利という一種の情報)も、作って売っている商品は一種の情報である。通信事業は“情報という商品”の保管配送を担う、いわば情報世界の物流会社の位置付けになる。

 これらの事業では、商品を“作り出す”“作る”“届ける”という事業の中核をなす業務処理、つまり基幹プロセス自体が情報処理システムということになる。現在は物理的な媒体で顧客に届けている商品も、デジタル信号として通信回線を通じて届けるという方向への業態変化も進む。メーカーにおける新製品開発のための実験装置や製品の製造装置、販売・在庫・物流機能などがIT・情報システムそのものというのに等しい。これらに、さらにこのプロセスの計画や管理のための情報システムが加わる。企業活動の中でのIT・情報システムの位置付けは、メーカーに比べるとより広範なものとなり、IT・情報システムに対する投資額も相対的に大きな比率を占めることになる。

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