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» 2011年01月28日 12時00分 公開

何かがおかしいIT化の進め方(49):失敗は成功のもと、成功は失敗のもと (1/2)

企業のIT関係者の話を聞いていて、悩み多き時代であることをあらためて痛感した。しかし、抱えている悩みの中には、自ら招き入れたものもあるようにも思う。また、問題が自らの内にあるのに、解決のハウツーを外に求め、見果てぬ夢に無駄なエネルギーが使われているような気がした。

[公江義隆,@IT]

情報システムの歴史は失敗の歴史?

 情報システム部門の歴史は「失敗の歴史」のように見えることがある。この問題は、歴史の評価を待つような類の問題ではない。「苦労の割に成果が感じられない」「成果を出しているつもりなのに、評価されていないと感じる」「ITの現場が、モチベーションのよりどころを失っている」こと自体が、すでに「仕事として失敗」である。

 こうした「失敗」は、そこで働く人たちの“受身の姿勢”が大きな原因だと思う。自律的な発想に変えて行けば、“問題”でなくなる問題も少なからずあるはずだ。「対応」という言葉がこれほど日常的に使われている部署は、他にあるだろうか。「新技術への対応」「社内ニーズへの対応」「トップへの対応」……。こんな言い方には反発もあるかと思うが、つまりIT関係者は、ある種の思い込みによって「外圧がなければ何もしない、できない」という環境を自ら作り出し、そこに暮らし、それに染まってしまっているのだ。

 また、IT関係の人たちは、「歴史を顧みて現在を評価する」ことに関心が薄いようだ。この分野では、同種の内容の問題が10年サイクルで「名前を変えた新しい課題」となり、「組み合わせと言葉を変えただけの同種の内容の方法論」が「新技術」と紹介される。

 そして最初からあった「問題」は、技術の進歩によって部分的には解決されても、その中途半端な事態がさらに新たな他の問題を生じさせるという、モグラ叩きのパターンを繰り返してきた。IT関係者は、「ITはいつも最新・最先端」と思っていたかったのかもしれない。「環境が変わった」を理由にする人もいるが、「問題」の本質をとらえれば、少なくとも「組織を挙げての大課題」といったことでは、多くの場合、なかったはずである。このままではポップカルチャーの世界である。プロフェッショナルはハイカルチャーを目指さなければならない。

 一方、過去の失敗は、中身をよく分析すれば宝の山になる。ただし、それは自分を外において物事を分析する「天動説的発想」ではなく、自分たちの発想や行動パターン、その判断基準など、自分自身を省みる「地動説的発想」をした場合に限る。つまり、「自身の中にある原因」を見つけ出す必要があるのだ。

世の成功物語の真似をしても成功しない

 成功者の多くは、「新しくやること」を自分で考えて実行する。失敗も多々あるが、たまに成功する。この数少ないケースに学者や評論家、コンサルタント、メディアは、一見分かりやすい理屈を付けて「成功物語」として世に喧伝する。自分で考えない人は「これこそが成功の方法や戦略」と思い込み、真似をして失敗する。「成功物語」に取り上げられた企業は、どこかの「成功物語」の真似をして成功したのではないのだが……。

 成功物語の当事者たちから、「たまたまうまくいったことに後から学者が理屈を付けてくれましたが、そんなことまで考えていたわけではありません。目の前の問題解決のために、自分たちなりに考え抜いた末のことです」といった話を何度か聞いたことがある。

 同じようなことをやって成功したケースと、うまく行かなかったケースを多数集めて、その要因を客観的に分析した研究やレポートを私は知らない。“ハウツー”として語られる多くの成功物語は、“外野席から観た勝利試合の勝因分析・解説”のように私には映る。

 かつて、「成功の秘訣は成功するまでやめないこと」と言った「名経営者」と言われた人がいた。目移りして簡単に諦めるようでは成功はおぼつかないだろうが、一方で、いつまでも一つのことにこだわって、泥沼から抜け出せなかった人も数多くいる。つまり、成功の“普遍的な方法”といったものは、実はこんな格言やハウツーのようなレベルには存在しないということのようだ。

 成功の背景にある「そんな考えや行動に至ったのはなぜか」を考えてみることが大切なのだと思う。そうすれば、そのような発想や行動に至らしめた哲学や、置かれていた環境条件の重要性が分かってくるのだろう。そんなことを念頭に置いて、「本に書かれている成功」の裏にある「書かれていない背景」を想像してみれば、得られるものがあるのかもしれない。

 書店には「できる人は〜」とか「東大生の〜」「脳を〜」といった冠を付けたタイトルの本が並んでいる。しかし、いま“できている”人は、こんな本を読んで“できる人”になったのでも、学校や資格試験などに合格したわけでもないだろう。本を読んでそのことが分かれば、それこそが収穫なのではないか。世の中に、うまい話などないのだ。

 「物事がうまく行かずに苦労している」と思い込んでいる人の中には、「自分が知らないうまい方法が、世の中のどこかにある」と思っている人が少なからずいる。そんな人は「他の人(会社)がどうしているか」を大変気にする。自分で考えるより“青い鳥”探しに熱心だが、多くの場合は徒労に終わるようだ。また、何かを決める場合に、「ライバルがやっているから」「世の中の傾向がそうだから」などと、自分の外に責任や理由を求めようとする。うまく行かなければ 「世の中が悪い」ことにして反省しないため、うまく行かないことは“多くを学べるせっかくの機会”でありながら、生かすことができない。

 一つ一つの“小さな失敗”から多くを学び、“大きな失敗”を避ける。また、“小さな成功”に向けて、真剣に地道な努力を積み上げ続けることの重要性に気付くことが大切だ。世の中、何事も簡単にはうまく行かないのが普通である。“借り物のハウツー”を当てはめればうまくいく、という安直なケースはほとんど見当たらない。「成功のためのマニュアル」といったものはないのである。ただし、失敗ケースには案外、共通性があるように思う。

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