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» 2005年08月30日 12時00分 公開

何かがおかしいIT化の進め方(19):羽田空港の管制はなぜ止まったのか? (1/3)

8月初旬に羽田空港の管制機能が、電源システムの問題で止まる事故があった。今回は、この羽田空港の事故を題材に、ITの問題に移し替えて考えてみる。

[公江義隆,@IT]

IT徒然草――他山の石

 人間は勝手な動物である。自分にとって“都合の良いこと”は、いつの間にか“都合”が取れて、普遍的な“良いこと”に思えてきてしまい、“良いこと”=“正しいこと”のように錯覚してしまう。

 自分では、正しい・良いと思っていても、ほかの多くの人々が同じように考えているとはいい切れない。このような意味で、自分に直接的には利害関係のない分野の問題の方が客観的に物事が見え、問題の本質理解やあるべき対処方法を考えやすい場合がある。毎週のように新聞紙面やTV画面をにぎわす、各分野で頻発するトラブルを題材に、これをITの問題に移し替えて考えてみるのも、一考の価値があるのではないだろうか。

今回のテーマ――羽田空港

 8月初め、夏の旅客でにぎわう羽田空港で、電源システムの事故によって管制機能が止まり、日本の空が終日大混乱した。ある新聞によると、原因は“管制用機器に電流を供給しているCVCF(無停電電源装置)のブレーカー(電源の遮断機)が落ち、電流が流れなくなって起きた”とある。

 分かったような分からないような説明である。その昔、情報システムが事故(トラブル)を起こしたとき、部下から聞く事故(トラブル)原因についての説明を思い出した。「マスター登録のないデータが入力され、プログラムが止まってシステムがダウンした……」といったたぐいの、登場人物のいない機能的説明である。

事故原因は一人称の主語で考えよう

システムが事故を起こす原因は、“誰かがやるべきことをやらなかった”か、“誰かがやってはならないことをやった”か、“それらの両者が起こった”かのいずれかである。そのシステムで想定外のことが起こったためというなら、それを想定しなかった設計あるいは計画をした人のミスである。問題は、“どのような職場環境や仕事の仕組みの下で、そのミスがなぜ起きたか”である。原因究明の目的は再発防止だ。原因のとらえ方にもいろいろな方法があるが、このような見方で原因や問題点を具体的に把握しないと、防止対策が適切に設定できず事故はなかなかなくならない。

 事故の原因を正しくとらえ、防止対策を考え実行させるのはマネージャの大切な責務である。しかし、上のような見方で原因を究明するプロセスはなかなか大変なことでもある。事故を起こした担当者は、多少にかかわらず責任を感じているのが普通だ。その一方で責任追及を恐れているのも自然な心情である。日ごろからの信頼関係がないと、自分に不利なことはなかなか話してくれないものだ。

犯人探しではなく防止対策に熱心な組織風土を作ろう

 事故は、これを起こす人間の特性と、置かれた「職場環境」や「仕事の仕組みの組み合わせ」のミスマッチで起こる。前者の「人間特性の問題」のウエイトが大きい場合もあるが、一般的には後者の「環境や仕組み」に問題がある場合が多い。

 「人間のやることにミスはつきものである」などと“物分かりのよい”態度を示す人はマネージャ失格だと思う。事故には厳しく対処しなければならない。その対処の仕方が問題である。責任追及よりも、事故防止対策にエネルギーを使うマネージャの下で、事故を起こさない組織文化が育っていく。最初に人の考え方や特性を変えるのは大変だが、仕組みや環境を変えると人は変わってゆく。

 ただし、人の問題に先に手を付けざるを得ない場合がある。その仕事に対する適性が問題になる場合だ。しかし、これが問題になるケースでは、その仕事をその人に担当させたマネジメントの責任こそがまず問われるというのが、本来の姿のはずである。

マネージャの責任は結果責任――都合の良い建前論を排して現実的な対応を

 また、人それぞれ、公私ともどもいろいろな問題を抱えている。身体的にも、心理状態も調子の良いときとそうでないときがある。重要な仕事の重要な局面では、担当している人のこんな面にも注意を払っておくことがマネージャにとって大切な役割になる。

 昨今、個人主義や自己責任論、プロ意識、……などと言葉を変えて、都合の良い建前論が横行しているように思うが、名実ともに自己管理のできる本当のプロは、普通の会社の中にそれほどいるものではない。建前論でやっていると、必要なマネジメント行動が欠落してしまう。マネージャの責任は結果責任・成果責任である。部下の仕事の不始末は自分の責任である。現実的に考えなければならない。

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