羽田空港の管制はなぜ止まったのか?何かがおかしいIT化の進め方(19)(2/3 ページ)

» 2005年08月30日 12時00分 公開
[公江義隆,@IT]

マネージャは大変だ! 行動が習慣になるまで問い続けよう

 事故の防止対策を考えるうえで大切なことがある。ものの本などで「同じ過ちを二度と起こすな」といった文言をよく見る。これは正しいようで正しくない。同じような状況に置かれると、過去の失敗にもかかわらず、人間は同じような判断をしてしまうことが多い。民族の歴史を見ても、会社や組織の行動パターンや個人のやることをたどってみても、「性懲りもなく」ということが結構世の中には多い。

“過ちを犯すような環境や状況を作らない・事前に回避する”対策が必要なのである。もう1点大切なのは、「“同じ種類”の過ちを起こすな」という観点である。「この事故の要因は、つまりは、xxxということか」というように、問題を一度、一般化・抽象化して考えてみると、周囲にあるほかの心配の種(潜在的な問題)がいろいろと見えてくるはずだ。

 「事故情報の共有が大切」と識者はよくいう。しかし、隣で起こったトラブルを見て、自分の問題として考えようという人は少ないのが現実だ。マネージャから「君の担当している××は大丈夫か?」とか「部下の××君はどうしている?」ぐらいのことをいわないと、部下はなかなか動きださない。部下が習慣として自発的に行動を開始するようになるまで、マネージャは事有るごとに、部下に問い続けなければならない。マネージャの責任は結果責任・成果責任だ。マネージャは大変だ!

コーヒーブレーク

 開発担当の課長になったとき、システムトラブルが頻発していた。いろいろな手を打って、ようやく「トラブルが発生すれば、その都度、当事者たちが防止対策を自発的に検討してくれる」ようにまでなっていた。

 そんなある日、ある事故の防止策の説明に来た部下に対して、こんなことをいう羽目になった。「君な?、今回の事故は本当に偶然、運が悪かっただけと違うか? これから毎回・毎回これだけ手間の掛かる作業方法に変える必要はホンマにあるやろか?」と。部下は、「せっかく検討してきたのに……。いままでいうとったことと違うやないか!」と腹の中で思っていたに違いない。

 本当にまれではあるが、適切な方法で実施していても起こる事故がある。このような事故には防止策の打ちようがない。現実的には、いま以上に何もしないのが正解というケースがあることを知った。難しいものである。



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