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» 2006年07月04日 12時00分 公開

何かがおかしいIT化の進め方(26):リーダーシップを発揮するにはどうすれば?(後編) (1/3)

前編に引き続き、今回もITマネージャがリーダーシップを発揮するための諸問題を考える。特に今回はリーダーシップの要素に関する問題を中心に取り上げる。

[公江義隆,@IT]

リーダーシップの要素(その1)――目標設定力

 前編ではリーダーシップそのものというより、どちらかといえばリーダーシップを発揮することと、発揮するためのマイナス面の除去といったことの双方を混在したまま述べてきた。しかし、不平不満をなくせば、人は必ずしも前向きで意欲的になるというものではないし、部下の能力や仕事の質が高まれば、求めるものも、細かい具体的なものから、より高いマネジメントレベルや“考え方”の問題に関するものに変わってくる。そこで、この問題をもう少し整理してみることにする。

企業には、「社会の中における自らの役割――何をするために存在するのか?」を示した経営理念がある。経営トップはその下で、目指す姿としてのビジョンや基本方針、そこへ向かううえでの当面の目標や、これを実現するための考え方や方法を経営戦略として設定する。

 社内の各部門はこの会社の方針を、部門トップが中心となって、自部門のビジョンや目標、部門戦略や施策にブレークダウンする。さらに、部門目標を達成すべく、部門内部の各組織の責任者(部長や課長……)は部門の方針や戦略の下で、自分の管理する組織の方針や戦略、施策を設定し、それを実行するという構造になっている。

 つまり、中間管理職はリーダーとして上位組織の方針をブレークダウンし、自分の管理する組織のビジョンや戦略、施策や目標を的確に設定して明確に部下に提示することが求められている。

 なお、いずれを取るかによって要求される能力の内容や特性に違いがあるが、“上位の方針のブレークダウンや戦略の施策”の検討は、リーダーが独力でやるもよし、部下や関係者の協力を得るもよしという、要は内容の的確性が大切な問題だ。

 しかし、検討内容の最終決定と、その結果に対する責任は100%リーダーに帰する問題である。また、“提示”つまり部下へ説明して理解させる仕事は他人に任せられない仕事だ。特に“改革”といった大きな変化や、新しい問題に対しては、関係者はやろうとすることに対して不安感を抱くのが自然である。リーダーが自分の言葉でビジョンをどこまで明確に提示できるかが決め手になる。

 「何のために、何を、どのようにして、どこまでやるか」を決める問題である。多面的な配慮が必要にはなるが、かなりの部分は理屈でも考えられる問題だ。ビジョンの設定と多面的な配慮の辺りに、リーダーとしての特性が出てくると思う。

リーダーシップの要素(その2)――動機付けをする力

 上で述べたように、やるべきことと、そのやり方や条件が明確になれば、それだけで部下は仕事に打ち込めるものだろうか。そこそこの水準の人と、それほど難しくない課題という組み合わせであれば、仕事として責任を果たそうとしてはくれるだろう。

 しかし、求める成果を得るためには、多くの障害を克服しなければならない困難な仕事や、挑戦的な取り組みが必要な高度な課題だったらどうだろうか。このようなうまくいかなくても、そのいい訳ができてしまうような問題を成功に導くには、やる人の強い意欲や高い使命感のようなものが必要になる。動機付け(モチベーション)が成果の鍵を握ることになる。

 部下への動機付けは管理者の重要な責務である。ただし、有効な動機付けの方法や内容は、対象とする人の特性、仕事の質によって大いに異なってくる。経済的な報酬や、昇進などのインセンティブ、ノルマのようなプレッシャーなどが基本的な動機付けの仕組みとしてあるが、これらが有効に機能するのは、努力に応じて成果が得られるといった対象の場合だけだと思う。

 個人差が相当あるだろうが、幾多のブレークスルーが必要な困難な仕事や高度な仕事では、自己実現、認められる、誰かに喜ばれる、誰かの(世の中)の役に立つ……といった種類のことと、それを自分(たち)がやる・やらねばならないという誇りや使命感のようなものが動機付けとして必要になる(注)。


注:
例えば、営業の仕事で目標管理の仕組みによってノルマを達成しようとする場合、生産性や品質の向上を目指す生産現場の改善、技術や市場開拓にブレークスルーが必要な新製品開発、極めて低い成功確率と成果が偶然性にも支配される研究といった仕事を考えた場合、それぞれに有効な動機付けにはどんな方法が考えられるだろうか?


 それぞれの仕事の性格と、このような仕事の分野に携わる人の価値観にはどんな違いがあるだろうか?

 上の「リーダーシップの要素(その1)」で述べた、経営理念・ビジョンを部門のビジョンや施策にブレークダウンする経営計画のプロセスを逆にたどり、自分たちがやろうとしていることと、その成果が何にどのような形で貢献するのかを整理してみてはどうだろうか。それを基に、自分の部下の理解できる範囲を見極めて、「自分たちのやることが、どのようにビジョン(夢)の実現へ一歩近づくことになり、誰にどのような役に立つことであり、なぜ自分たちにしかできない重要なことなのか」を、部下に問い掛けてみてほしい。

 昨今の、お金もうけが企業の理念、その中で金銭報酬のために働く社員ということでは、あまりにも将来がさびしくはないだろうか。

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