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» 2004年09月23日 12時00分 公開

因果関係を知り、未来を予測する極意とは?──拍子を知れば負けることなし情報活用経営とビジネスインテリジェンス(5)(1/2 ページ)

本連載ではここまで、ビジネスにおけるマネジメントやIT/情報の活用のより本質的な部分について述べてきた。ここではもう一度、ビジネスにおいて情報を活用することとは何かを考えてみる

[杉浦司,杉浦システムコンサルティング,Inc]

“先のことを知る”ということ

 剣豪・宮本武蔵は、『五輪書』の中で「物事の景気と云事は、我が智力強ければ必ず見ゆる所なり」(火之巻)、「物毎につき拍子は有ものなれども取分け兵法の拍子鍛錬なくては及びがたき所なり」(地之巻)という言葉を残している。

 これは「世の中の事柄は、よく観察することでこれからどうなるのか分かる」ということをいっている。つまり世の中のリズムを感じることができれば、常に自分にとって有利に行動できるという教えである。

 『五輪書』はいまでは兵法書というより、人としての生き方や心構えを記した奥義書といった位置付けの感があるが、彼が負けなかった秘密に関してはしっかりと書いてある。その秘密とは「この先に起きることを事前に察知する方法」である。

 武蔵がいう未来を予言する方法は、実は非常に単純なことだ。それは、「目の前に事実として存在する出来事を、目や耳など自分の五感で感じたとおりに理解しなさい」ということである。

 人というものは、誰でも自分にとって不都合なことを見て見ぬふりをしてしまう。厄介なことに目に映じていることですら、無意識のうちに脳が認識を拒絶してしまうことさえあると精神医学的に明らかにされている。

 目の前にある変化こそ、これから起きることを示す端的な情報であり、それをそのとおりに素直に受け取ることができれば、何も苦労することはないはずなのだ。目の前の変化を認めて変化に応じた最適な行動を取ること──それが武蔵流の知恵なのである。

 武蔵にとって、窮地とは1つの変化の状況であった。彼はそこにある選択肢から最も有利な行動だけを取ることに精神を集中させた。他方、敵方は皆窮地の中で変化に対応できず、自滅していったのである。

IT革命の本質

 IT革命で騒がれている現代を見て武蔵は何というだろうか。彼ならきっとこういうのではないだろうか。「剣ではない。心だ」と。

 道具であるITをいくら実装したところで最強の剣法を得ることはできない。剣が銃に変わり、銃がペンに変わり、ペンがインターネットに変わろうが、勝つための、いや生きるための術は人の心の内側にあり続ける。大切なことは「心得」であり、心を会得することなのだ。

 インターネットをはじめとする最先端ITは、武蔵が最も重要視した物事の「景気」や「拍子」をきめ細かくかつ力強く察知して、われわれの行動を最適化することができるもののはずだ。その意味では現代は武蔵の時代の延長であり、決して「革命」ではない「革新」なのである。

 社内外でいままさに起きている事実を事実として認識し、その情報をデータベース化して分析し、そこから見えてくる変化の先に見えてくることを知恵として、社内あるいは取引先、場合によっては顧客と共有し、ともに最も良い道を歩んでいこうというのがIT革命の本質といえるだろう。

情報は一歩先の変化を読む

 現代において、「景気」と「拍子」を高度にデータ分析している企業としては、アマゾン・ドットコムを挙げることができる。

 彼らは経営戦略としてデータマイングを重視しているIT先進企業である。データマイングは収集した購買履歴データなどから一定の傾向を読み取って、将来売り上げや発生コストを事前に予測するというまさに武蔵流の必殺剣といえるだろう。

 彼らはインターネット店舗で陳列している商品が、どのような人たちにどの程度売れるかあらかじめ分かっているのである。

ALT 図 収集した情報から、変化の予測を導き出すためのデータマイニング
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