man month / MM
システム開発などの工数、仕事量を示す単位で、「人数×時間(月)」で表される。プロジェクトの大きさを表現する場合や、1人当たりの費用月額(人月単価)を掛け合わせてシステム開発の費用算定/見積もりに利用される。
工数計算における基礎は“標準的スキルを持つ人間(エンジニア)が単位時間(1カ月)に行う仕事量”だが、ソフトウェア開発においてはそれを定義する一般的な基準が存在しないため、同じ“1人月”といっても開発ベンダによって実際に可能な仕事量は異なる。
また、“月”の定義も一定でなく、22日以上の稼働をもって1人月としているところもあれば、週4日程度の作業を1人月としているところもある。さらに1人月の単価もバラバラでベンダによっては10倍以上の開きがある。同じ会社(開発ベンダ)内でスタッフのレベルごとに異なるフィーが設定されている場合もある。
人月表示では計算上、“3人×8カ月”も“6人×4カ月”も同じ「24人月」となるため、人数を増やせば納期を早くできると勘違いされることがあるが、ソフトウェア開発の作業は要員間のコミュニケーションの比重が大きく、人員追加はメンバー間意思疎通の効率を低下させるため、必ずしも納期短縮につながらない。進ちょく管理に人月の考え方を適用するという誤りは、古くはフレデリック・P・ブルックス,Jr(Frederick P. Brooks, Jr.)著書『The Mythical man-month: essays in software engineering』(1975年)で指摘している。
また、人月ベースでシステム開発委託契約をした場合、受注したベンダは優秀なエンジニアを登用して素早く仕事を終わらせるよりも、優秀でないエンジニアを用いて数カ月間、仕事をさせた方が儲かるため、質の悪いソフトウェアを高く買わされるという批判も古くからある。
しかしながら、尺度として分かりやすいことから、現在でもシステム開発のコスト見積もりにごく一般的に利用されている。
▼『人月の神話 新装版――狼人間を撃つ銀の弾はない』 フレデリック・P・ブルックス・Jr=著/滝沢徹、牧野祐子、富沢昇=訳/ピアソン・エデュケーション/2002年11月(『The Mythical man-month: essays in software engineering』の邦訳)
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