業務をパッケージに合わせるのではERPは成功しない特集:ERPトレンドウォッチ(3)(2/2 ページ)

» 2004年12月04日 12時00分 公開
[大津心,@IT]
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ディスク単価の下落が「脱密結合」につながった

俵氏は経営管理のクオリティを測る指標を、「連結ベースでセグメントキャッシュフローが月次で予測管理できていること」と定義している。その理由には、日本のように持ち株率100%でない連結子会社が多い場合、連結調整勘定、時価会計などの会計処理のやり方次第で、「いくらでも実態と違った数字を出すことができるからだ」(俵氏)といった例を挙げた。

 続いて、21世紀型の会計は「脱密結合」がポイントであると力説する。その要因に、ディスクメモリ単価の下落を挙げた。1983年だと256Mbytesのディスクは410万円だったという。現在では300GbytesのHDDが3万円で実売されている。256Mbytes当たりだと約94円だ。20年で約4万分の1までディスク容量の単価が下落していることになる。

 富士通の場合、会計データは単体で1カ月500万件のデータが発生するという。1レコード2000bytesで24カ月保存している。合計で240Gbytesにもなり、20年前の実勢価格でも25億円になる、いまでは10万円前後だ。これは単純計算で出した数値だが、20年前とはディスク単価がそのくらい変わっているのだという。さらに、データへのアクセススピードも格段に向上した。このように、情報インフラ性能の劇的な向上と1レコード当たりのコストが低下したことから、いままでのように「情報リンケージ」することや「データをまとめる」必要性がなくなったのだ。

 同氏は、「入力されたデータを“そのまま”持ってきて利用すればよくなった」と説明する。事業部や子会社の営業管理システムに入力されたデータは、即時に親会社のDBに保存することによって、データ改ざんや集計の遅延も防ぐことができるとしている。このように、会計データを保存する単価が減少したことにより、データの扱い方が劇的に変わり、現場が即時入力さえ実施すれば個々の業務が変化し、かなり精度の高い経営管理が可能になる、と強調している。

仕訳作業の自動化が、経営最善化の糸口か?

 また、俵氏は「システム導入時にプロセスを詳細に分析する必要はない」と言い切った。従来のプロセスを分析するやり方は、「紙の伝票の流れを踏襲し、電子化しただけのものだ」と分析している。このやり方に対し、同氏が提唱するのは「現場にあるデータの種類・属性をいかに定義するのか?」という問題に注力することだ。つまり、現場のデータを確実に取り出し、分類することこそが会計のシステム化では重要であるのだという。

 このデータ分類時に重要となるのが「仕訳」の方法だ。富士通では仕訳を、部門別、業務別など数種類に分類し、「A部門のB伝票で、Cという取引をしたときの仕訳はDで固定できる」ことに着目した。例えば、売上伝票であれば「借方:売掛金、貸方:売上高」とほぼ決められる。このように仕訳の仕方を決めたシステムを同社では開発した。このシステムでは、現場の人間がきちんとデータ入力を行えば、自動的に仕訳が完了する。実際に同社では、99.9%の仕訳が自動化されているという。

 具体的には現場の人間がデータ入力をし、それを上司が承認すると、システムが自動的に仕訳する。その際、「A部署で、BとCの取引組み合わせは前例がない」といったイレギュラーな仕訳が発生しない限り経理の人間が確認することはない。さらに、そのようなスクーリニングのノウハウが蓄積されることによってより精度が向上し、「伝票1枚1枚では分からない事象でも分かるようになる」としている。

 このように経理上の明細データをすべてデータ化することによって、現場の経理データを経営層が容易に把握できるようになったという。実際、同社の社長は全社員の給料明細から交際費まですべて閲覧することができる。事業部長であれば、事業部配下の社員データを閲覧可能だ。こういったシステムによって、現場の不正に対する抑止力にもなっているのだと俵氏は指摘している。

明細データ方式によって、月次での連結決算も可能に

 従来の会計ソフト、ERPの会計サブシステムは集約情報を仕訳し、財務諸表にまとめるというプロセスを電子化したものだった。GLOVIA/SUMMITはすべての明細データを保存していくデータウェアハウスであり、データを商品別、顧客別、担当者別といった具合にドリルダウンしていくことができる。

 今後、GLOVIA/SUMMITは、連結の仕組みを開発するという。今後は会計にもスピードが求められ、現在の四半期ごとの会計情報では物足りない株主などから、「概算でもよいから、月次の連結データを提示しろ」という要求が必ず出てくる。その際に、従来のように子会社の単体決算を実施し、親会社決算と残高を照合し、連結処理していたら物理的に1カ月以内に連結決算を取りまとめることが不可能になる。そこで、明細データを直接収集することができるGLOVIA/SUMMITでは、「締めた決算からデータを取り出すのではなくて、取引データから直接、個別照合して連結処理する」ことによって月次決算を実現するほか、さまざまな機能拡張を目指すとしている。

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