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» 2005年01月20日 12時00分 公開

SCMコンサルティングの現場から(7):BTO生産方式によるメーカーとサプライヤの関係 (1/2)

パソコン生産・販売には、「デル・モデル」として有名なBTO(Built To Order)というやり方がある。今回はBTOモデルを取り上げてみる。

[南野洋一,@IT]

生産計画の前提としての“顧客注文”

 これまでの連載では、図1でいう「販売計画」「大日程・中日程生産計画」「調達計画」など、企業(工場)内に情報(需要予測やオーダーのデータ)がインプットされて以降の、オペレーション部分のシステムを検討してきました。

 今回は、もう少しユーザー寄りの視点に立ち、注文(企業側から見ると受注)から後、どのようなシステム処理が行われているのかといった点から説明していきます。ここでは、いまでは一般的になっているWebサイトからの製品発注・購入を例にします。これは、販売する側が製品を決めて製品を販売するモデルではなく、顧客のニーズに応じて製品を供給するビジネスモデルです。

ALT 図1 今回の焦点

デルのビジネスモデル

 前述の「顧客のニーズに応じて製品を供給するビジネスモデル」で有名なのが、「デル・モデル」です。

 パソコンを買う場合、顧客はメーカーによって用意されたいくつかの仕様(製品モデル)の中から選択するのではなく、パーツの単位で組み合わせをオーダーし、メーカーはそれに従って製品を供給するものです。

 いまでは、どのパソコンメーカーも参画しているビジネスモデルなので、あまり騒がれなくなりましたが、2000年ごろには「(広義の)ビジネスモデル」「ビジネスモデル特許」という単語がブームだったこともあり、先進的eビジネスのスタイルとして注目を集めていました。

 いわゆるデル・モデルは、直接販売とBTO(Built To Order:受注生産)が特徴です。顧客はコンピュータ製造・販売会社のポータルサイトに行き(直接販売)、ここで手順に従ってプロセッサの種類やメモリ、HDDの容量を選択します。メーカーはそのオーダーに応じて、製品を組み立て(BTO)、直接顧客に届けます。

 今回は、このオペレーションの裏側で、システムはどのような処理を行っているのか、順を追って見ていきます。具体的には、顧客がポータルサイトに入力したデータがどのように活用され、インプット情報/アウトプット情報になっていくのかを考えていきます。

ALT 図2 BTOのシステム概要図

1.ポータルサイトへのアクセス

 ポータルサイトには、顧客別にパーソナライズした専用ページを用意します。これにより、顧客は自分のし好に合った製品が表示されるといった機能が提供されます。これを実現するには、システム側に顧客の購買履歴やアクセス情報などのデータベースを構築し、きちんと情報を保持していなければなりません。

2.コンフィギュレーション・エンジン

 パソコンの各部品は高度に標準化され、その構成管理は一見簡単そうに思えますが、実際には「AとBを同時に使ってはいけない」といった組み合わせの問題が生じます。そこで登場するのがコンフィギュレーション・エンジンです。目的は複雑な製品構成を顧客が迷わずに定義できるよう、表示・ガイダンスし、不適切な組み合わせを許さないことです。これにより適切な商品を推奨することができるようになります。見積書や注文書の発行にも威力を発揮します。

3.結果データをSCMの仕組み

 顧客によって選択されたオーダー(注文)は、結果データとして製造側に引き渡されます。ここに出てくるのが“SCM”です。BTOモデルであっても需要予測は必要です。いま何が市場では受け入れられているのか、過去データをかんがみ、市場ニーズの変化とパーツの供給状況を見据えて生産計画を立てていくのです。

4.ERP(基幹系)システム

 コンフィギュレーション・エンジンの処理結果は、ERP(基幹系)のシステムにもインプットされます。ここでは、入力されたデータを集計して経営者向けの基礎データを生成します。もちろん、請求書発行などの会計システムも包含されています。

5.顧客データベース

 顧客データベース(CRM)のデータは、上記1.に記載している顧客別の“ポータルサイト”の基礎データになります。この部分を蓄積されたデータを踏まえて更新していくことにより顧客に密着したポータルサイトになっていきます。

6.ナレッジベース

 これら処理の結果をナレッジベースにまとめていきます。顧客ニーズを起点とする“ナレッジ”を整理・蓄積して、すぐに取り出せるように整備することで、市場の方向性を見極めたり、新製品開発のヒントにするなど、情報と経験を経営資源として活用できる基盤を作っていきます。

7.レコメンデーションエンジン

 販売ポータルサイトの顧客ごとに用意する“専用ページ”に、お買い得製品の推奨や高機能パーツの提案を行う仕組みです。例えば、「アクセス履歴」や「登録された属性」を利用して、顧客の「趣味・し好」「行動特性」をリアルタイムで解析予測し、利用者に最適な情報や商品紹介を行っていきます。

8.PDM(Product Data Management)の活用

 PDM(製品情報の管理のこと。製品の企画、開発・設計から製造、販売、保守に至る複雑かつ膨大な情報を一元化管理し、工程の効率化および期間の短縮を図ることを目指した情報システム)を活用して、頻繁な設計変更にも無駄なく迅速に対応できる体制を構築していきます。このシステムは、協業しているサプライヤに対しても(部分的に)公開され、設計・仕様の情報の共有を行っていきます。

 また、“SCM”“ERP”を活用して需要結果をリアルタイムに集計し、これを基に資材のオーダーを出していきます。そして、組み立て計画の結果に基づき納入指示を行います。

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