外資の現地法人設立に規制のあった中国だが近年、緩和が進んでいる。現地法人統合に伴い、システムの統合も求められる
中国は長らく、海外企業の進出について厳しい規制政策を取ってきた。海外企業が直接投資で現地法人を設立することは認められず、必ず中国企業との間に合弁の形で新たに会社を設立しなければならなかったのである。
出資割合は産業分野によって異なっており、例えば重点育成産業である自動車では海外企業の出資比率は49%以下とされていた。出資比率以外にも、会社を設立する際の認可手続きなど、さまざまな細かい規制が行われていた。
日本企業が欧米に進出する場合、生産工場を集約して独自の販売網を構築できたが、中国ではそれとはまったく異なる直接投資政策を強いられた。広い国土のあちこちに進出するごとに、地元の企業と合弁で現地法人を設立しなければならなかったのである。
その結果、気付いてみれば現地法人が中国全土に数十社も散らばっているという状況になっていたのである。大手企業ともなると現地法人の数は80近くにも上り、そうした拠点を集約したり、連携させることはほとんど不可能に近かった。ましてや情報システムの統合などは夢物語にすぎなかったのである。
ところが2001年12月、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟して、事態は劇的に変わった。中国政府が外国企業に対する規制を大幅に緩和したからである。関税率の引き下げや非関税措置の廃止なども行われ、事実上、保護貿易国家から自由貿易国家への大変身といってもよいほどの政策転換となった。
その中でも最も影響が大きかったのは、直接投資の緩和だった。自動車など重点産業の一部を除いて、海外企業が100%出資で現地法人を設立できるようになったのである。
この結果、中国に無数に乱立する現地法人を集約し、統合していこうという動きがここ数年活発になってきている。そしてそうした統合の際に最も問題になるのが、情報システムの共通化だ。つまりは乱立している現地法人に対して、どうコーポレートガバナンス、ITガバナンスを機能させるかという問題が生じてきたのである。
日本オラクル 執行役員 アジアパシフィック事業開発室長の沼田治氏が解説する。「これまでピンポイントとして存在していた情報システムを、面としてとらえなければならなくなった。これまではバラバラでガバナンスがほとんど働いていなかった情報システム部門について、サーバを統合して1カ所に集約し、ネットワークで各拠点を結び、そして会計などのアプリケーションをすべて共通化するといったプロジェクトが各企業の間で始まっている」
その好例とされているのが、松下電器産業だ。同社はOracle E-Business SuiteのOracle Financialsを採用し、2003年から財務会計システムの中国展開に着手している。
松下電器産業の中国進出は古くから行われており、中国全土には53社の拠点が存在している。この会計システムを統合するのがプロジェクトの狙いで、システムは同社がすでに構築している上海のシェアードサービス・センターで一括統合運用し、最終的には53カ所の拠点すべてを結ぶ見通しだ。この共通化の結果、コストを最小限に抑えた維持管理を行うことができ、中国国内の各拠点の財務情報もリアルタイムで本社が把握できるようになるという。決算情報もいち早くディスクローズすることが可能で、経営のスピードは格段に速くなることが期待されている。プロジェクトは、2005年春に完了する予定という。
松下グループの松下電工も同様の取り組みを進めており、中国国内十数カ所に分散している工場と販売会社のシステムを、北京の情報システム部に統合しようとしている。そしてこうした動きは1企業、1産業分野に限らず、あらゆる場面で起こりつつある。
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