連載
» 2005年02月18日 12時00分 公開

テストという破壊的な作業の建設的なやり方ソフトウェアテスト・エンジニアの本音(4)(3/3 ページ)

[大西建児,株式会社豆蔵]
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リスクベースドテスト

鈴木 テストにおいてはバグというリスク以外にも、マネジメントという点でもリスクがあるため、いまおっしゃったような問題が生じるのでしょうね。そこで私からの質問ですが、Rexさんが書籍の中でも推奨されている、「リスクベースドテスト」をお客さまに説明するときに、どのように説明したら、その必要性を理解してもらえるか教えてください。実際、簡単に理解を得ることが難しくて、どうやればうまく説明できるのか悩んでいます。

Black 私の説明の仕方は、リスクに応じて作業量を配分するというものです。リスクが高いものに対してはテストに掛ける作業量を多くし、そうでないものに対してはそれなりの作業量にするというものです。このような説明をすればコンセプトを分かってもらえるでしょう。実際、私はこのように説明することで、すべてのプロジェクトのステークホルダから、リスクベースドテストの有用性を理解していただいています。肝となるのは、最初からプロセスの話をするのではなく、「まずコンセプトから説明する」ことです。

テスト業界のマーケット

大西 この辺りで視点を変えまして、私からはテスト業界のマーケットについて質問します。日本ではソフトウェアテストのマーケットがなかなか大きくなりません。そこで、この分野の市場を広げるにはどうしたらよいか何かアイデアなどありましたらお聞かせください。

Black 大事なことはドットコムバブルを起こさないことです。私の知っている範囲での話になりますが、5年前までテストコンサルタントとしてやっていた人の中でも、非常に幸運な人だけが、いまでもこの分野に生き残っているという現実があります。

 テストというのはどうしてもプロジェクト中の1つのオプションととらえられがちなので、苦しい時期には削減されてしまう部分です。ソフトウェアテストの市場を拡大させるには、経済が好況でないと難しいでしょう。そうでないなら、雇用を確保することに注力しなくてはなりません。そこで私からも日本のことについてお聞きしますが、景気そのものは良くなってきていますか?

大西 景気は徐々に回復してきています。ソフトウェアテストの業界を見ると、いまは追い風が吹いています。背景としては、不幸なことに組み込み系、エンプラ系にかかわらずソフトウェアの不具合による社会的損失がメディアによる報道などで、しょっちゅう報じられているからです。このため、危機感からテストの重要性に対する理解は広まりつつあるという側面があります。

 危機感からだけではなく、前向きな視点からも関心は広がっています。このシンポジウムに多くの方が参加されていることも、テストに関する認知度が高くなったことの表れだと思っています。日本ではようやくテストに対する投資価値が認められるようになってきつつあることをコンサルタントの立場からも実感しています。

Black なるほど。何といっても企業にとって何が価値があるのかということにフォーカスを失わないことが大切になっているからでしょうね。テストコンサルタントにはビジネスフォーカスとバリューフォーカスのできるスキルが重要です。

 アメリカのテストコンサルタントの中には、議論ばかり熱心になり、哲学的な話に夢中になり、お客さまに関心を持つ、お客さまに焦点を当てるのを忘れてしまう人もいます。大事なのはお客さまにどのような価値、サービスを提供できるかということです。そこに注目していくことが大切です。

テストとモチベーション

大西 では、最後の質問をさせてください。テスト技術者交流会は「テストは楽しい。テストは面白い」と前向きにテストに取り組むために何ができるのか、またすべきなのかについて、日々ディスカッションを続けています。こういったテストに対するモチベーションを良い状態に持って行くための秘訣があればぜひ教えてください。

Black テストマネージャやテストリーダにとって、楽しく、かつチャレンジングな環境を維持していかなくてはなりませんよね。そこで忘れてはいけないことがあります。「テストという破壊的な作業をいかに建設的にやるかというのが重要だ」ということです。

 アメリカではテスターの意識を高めるために、テストラボの中でバグが見つけるとベルを鳴らすのがよいと思っている人がいます。私はその意見に反対です。バグを見つけるたびにベルを鳴らし、みんなで集まりわいわいやっているのを、お客さまやプロジェクトマネージャが見ると、テスターがバグを見つけて喜んでいる。つまり、不具合をみんなで祝っているように見えて不愉快に思われてしまうからです。ハッピーに仕事をするのも大切ですが、プロジェクトのメンバーとして「プロジェクトの成功」こそが重要であるということを決して忘れてはなりません。両方のバランスを取ることが大切なのです。

大西 いろいろとためになるお話や経験をお聞かせいただいて、感謝します。われわれもテストプロセスをプロフェッショナルにマネージできるようにしていきたいと思います。また近いうちに日本でお会いできることを楽しみにしております。本日はありがとうございました。

[懇談後記]

 このようにディスカッション自体はまじめなものでしたが、非常にリラックスした雰囲気で行われました。これは、ブラック氏の人柄のおかげだったと思います。ちなみに、書籍の中で料理の例えがよく出てくるのですが、ブラック氏自身しょっちゅう料理をされるそうで、その腕前はかなりのもののようです。レパートリーは幅広く、中華に和食も得意だとのことでした。それだけではなく、品質管理について造詣が深く「ぽかよけ」を日本語でご存じだったことにも驚かされました。そんな幅広い才能を持ったブラック氏との交流を、ぜひとも続けていきたいと思いました。



参加者

[JaSST 実行委員会]

共同実行委員長 古川善吾(香川大学)

共同実行委員長 西康晴(電気通信大学)

[実行委員]

秋山浩一 (富士ゼロックス)

大月美佳 (佐賀大学)

大西建児 (豆蔵):本記事取りまとめ担当

大野晋 (SKサポートサービス)

片山徹郎 (宮崎大学)

榊原彰 (日本IBM)

鈴木太平 (プラネット)

鈴木三紀夫 (TIS)

高橋寿一 (ソニー)

野村絵里 (JaSST)

古長由里子 (日本IBM)

松岡正人 (日本IBM)

湯本剛 (サイクス)

和田憲明 (富士通)

敬称略(50音順)



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