PM(取材先のプロジェクトマネージャ) おっしゃることはよく分かります。口頭ではよく説明したはずですが、残念ながら、中国側と共有できるような判断の「モノサシ」は準備していませんでした。逆にお尋ねしますが、具体的にはどのような基準を用意すればよいのでしょうか。
──ポイントは3つあります。
中国オフショア開発では、最終成果物をチェックすればよいという考え方は通用しません。たとえ、日本から正確な仕様書を提示したとしても、途中の開発プロセスが正しく実施されているかどうかまで、根気強くフォローしなくてはいけません。
PM はい。先日実施されたレビュー報告書をご覧ください。
詳細設計からコーディング初期に実施されたレビュー報告書の一部抜粋。
──かなり辛らつな言葉が並べられていますね(汗)。この報告書を書いた(日本人の)担当者は、かなり感情的になっていますね。
PM そうなんです。実は、中国側との連絡窓口は経験の浅い若手社員が担当しています。いや、もちろん、技術的にはそこそこできるのですが、いろいろ事情がありまして……。何とかしたいとは思っているのですが。
──どこの会社さんも、そうおっしゃられます。私が毎日発行するオフショア開発メールマガジンでも触れていますが、中国ベンダとの連絡窓口は、やはり経験の豊富な方が適しています。社内事情があるのはお察しいたしますが、中国オフショア開発は一種の新規事業ですから。
PM ……(苦笑)。中国オフショア開発は新規事業ですか。確かにそうかもしれません。短期的には絶対に原価削減効果は表れないので、長期的な視点で取り組む必要がありそうです。
──おっしゃるとおりです。ところで、中国オフショア開発の設計からコーディング中に発生するトラブルの要因は大きく2つに大別されます。
前出のレビュー内容から察するに、中国側の作業が滞った原因は2の割合が大きいような気がします。6:4、ないしは7:3の割合で、日本側に改善の余地があると判断します。
PM 確かにそういう見方もあると思います。もちろん、開発標準などは、当方から事前にちゃんと提示しています。それでも、設計の考慮漏れやコーディング規約違反が大量に発生します。こうなると、さすがに当社の担当者も頭にきて、先ほどのように、報告書で厳しいコメントを書いてしまうのです。
──ところで、レビュー報告書には、担当者の愚痴も多く見られますね。担当者間で不満をいい合うのは、オフショア開発の負けパターンにはまっています。
PM では、どうすればいいでしょうか。
──担当者の愚痴や不満を吸い上げるのは、大切なことです。特に、今回は若手社員に負荷が掛かっているようなので、マネージャや管理部門の方が親身になって話を聞いてあげてください。そのうえで、中国ベンダに伝えるべきことがあれば、担当者からではなく会社幹部が直接中国ベンダの総経理にぶつけてください。
御社の例では、現場レベルの対策ではなく、会社間の問題として扱うべきでしょう。風通しの良いコミュニケーションを実現させることを優先させてください。
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