PM(取材先のプロジェクトマネージャ) そうですね。場合によっては、中国側現場リーダーの変更もあり得ます。実は、委託先の中国ベンダには、ほかにも数名の優秀な中国人マネージャがいます。次のプロジェクトからは、最低1人は直接現場をマネジメントするように要求を出したいと思います。
──いい考えですね。可能なら「次回の対応ではなく、即時対応」を要求してください。
PM 次回の対応ではなく、即時対応ですか。
──そうです。次回の対応ではせっかくの努力が水の泡になってしまう恐れがあります。中国オフショア開発では、間髪を入れずトップダウン的なアプローチで交渉すると効果的です。リーダーが代われば、プロジェクトの様相は一変します。ぜひ、会社上層部を巻き込んで組織的な解決を目指してください。
PM はい。ありがとうございます。
中国オフショア開発は新規事業だという視点を持とう。プロジェクトマネジメントの限界を見極めて、会社として組織的に解決に当たる土壌を作るべし。
プロジェクトマネージャ養成に熱意を傾ける有限会社プロジェクトマネジメントオフィス代表取締役の好川哲人氏は、自律的に行動できるプロジェクトマネージャに求められるスキルセットについて次のように提言しています。
ワンランク上のプロジェクトマネージャを目指すには、かなり、明らかにプロジェクマネジメントスキルだけでは不十分である。そこには、ビジネスを創り上げ、そのビジネス上のニーズに従って自分のスキルを常に向上させる「スキル」が必要である。つまり、PMOに求められる下記のスキルが必要である。
(プロジェクトマネージャ養成マガジン〜プロジェクトマネージャへの道(No.29)より)
好川氏の主張する「ワンランク上のプロジェクトマネージャ」像は、オフショア開発時代に求められる「開発コーディネータ」と期せずして重なります。特に中国オフショア開発では、これまで蓄積してきた日本企業の標準ノウハウが通用しない場面が少なくありませんが、オフショア開発という「新規事業」を創造するには、従来のプロジェクトマネジメントのスキル体系では到底間に合いません。
ところが、多くの日本企業では組織的な解決手段に乏しいため、プロジェクトマネージャが孤立無援の状態となってしまいます。そこで、開発コーディネータには、従来のプロジェクトマネジメントでは対応し切れない「空白領域」を埋める大事な役割が期待されます。
幸地 司(こうち つかさ)
アイコーチ有限会社 代表取締役
沖縄生まれ。九州大学大学院修了。株式会社リコーで画像技術の研究開発に従事、中国系ベンチャー企業のコンサルティング部門マネージャ職を経て、2003年にアイコーチ有限会社を設立。日本唯一の中国オフショア開発専門コンサルタントとして、ベンダや顧客企業の戦略策定段階から中国プロジェクトに参画。技術力に裏付けられた実践指導もさることながら、言葉や文化の違いを吸収してプロジェクト全体を最適化する調整手腕にも定評あり。日刊メールマガジン「中国ビジネス入門 〜失敗しない対中交渉〜」や社長ブログの執筆を手がける傍ら、首都圏を中心にセミナー活動をこなす。
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