デスマーチを止める進ちょく管理の現実解:GanttProjectの導入で進ちょくをコントロールする明日からできるプロジェクト管理(1)(2/4 ページ)

» 2005年04月01日 12時00分 公開
[高野敦,@IT]

何はともあれ計画

  冒頭で、開発プロジェクトの進行を地図を作って……というたとえで説明しましたが、計画作成とは地図を作成することに当たります。スタート場所からゴールの場所までの距離、交通手段を決定し、時間を予測して方向や乗り換え場所を間違えないようマイルストーンとしての目標物や駅を設定します。計画を作成するのにとても似ていると思いませんか。地図と同様、計画の作業を細かく定義すればするほど精度が上がります。

 しかし、計画段階での作業の詳細化には限界があります。この辺りのトレードオフを検討しながら作業を分割し、階層化します。この作業分割した階層のことをWBSと呼びます。すべての計画はこのWBSに依存しているため、計画の大きな役割を占めます。WBSを作成するに当たり、分割対象が複数あります。プロジェクトの特徴によって使い分けることができます。

WBSの分割の対象

 作業を分割する対象には、成果物、作業、製品の3つがあります。成果物を対象とする場合にはプロジェクトで必要とする成果物を定義し、その成果物の内容によって分割します。成果物を明確にすることは計画を明確にすることにつながるので、計画を作るうえでの相性が良い分割方法です。

 作業を対象とする場合には、プロジェクトで行うべき作業を成果物とかかわりなく洗い出し、分割します。成果物が明確にならないタスクについても表すことができ、成果物と作業を複合してWBSを作ることもできます。一般的にプロジェクト管理の作業は成果物を伴わないタスクもあるため、組み合わせて表現することは一般的です。

 製品を対象として分割する場合は、製品が持つべき性質(機能)を構成する要素で分割します。例えば、サブシステム、コンポーネント、機能あるいはユースケースのようなもので分割します。

 いずれの場合もある程度分割した後でほかの対象で分割することもあります。成果物で大項目、中項目を分類し小項目を製品で分割したWBSの例は以下のとおりです。

大項目 中項目 小項目
要件定義書     ユースケース図 顧客管理
販売管理
在庫管理
発注管理
ユースケース記述 顧客管理
販売管理
在庫管理
発注管理
概念モデル 顧客管理
販売管理
在庫管理
発注管理
単語辞書 顧客管理
販売管理
在庫管理
発注管理
  成果物 製品
表1 成果物の分割

 同じ内容を製品を対象として大項目、中項目で分割し、小項目を成果物で分割したWBSの例は以下のとおりです。

大項目 中項目 小項目
販売システム 顧客管理 ユースケース図
ユースケース記述
概念モデル
単語辞書
販売管理 ユースケース図
ユースケース記述
概念モデル
単語辞書
在庫管理 ユースケース図
ユースケース記述
概念モデル
単語辞書
発注管理 ユースケース図
ユースケース記述
概念モデル
単語辞書
  成果物 製品
表2 製品の分割

 成果物および作業によって分割する方法はウォーターフォールによる進め方を選ぶプロジェクトに合っているということができ、WBSを再利用することができるのが特徴です。一方、製品によって分割する方法はアジャイルのような製品機能を重視するプロジェクトの進め方を選ぶプロジェクトに合っているということができます。このWBSは再利用することは難しいですが、WBSの作業構造がチームを表すこともでき、管理しやすいことが特徴です。このように作成したWBSを基にリソースをアサインし、そのリソースの生産性を配慮したスケジュールを作成します。それらをまとめて計画とします。

 プロジェクトの目標としてよくいわれるのがQCD(Quaility/Cost/Delivery)です。このQCDは、品質、コスト、納期の意味です。WBSを作成する際にこれらの要素について配慮することが重要です。例えば、品質に関しては顧客が求める品質を満たすような品質保証・品質管理の作業もタスクとして追加することなどが挙げられます。またリソースをアサインする際にコストを満たしているかどうかを検討してアサインするなども挙げられます。

 ただし、不適切な計画でも修正されないで無理して実行される傾向があるのでここでの判断は注意が必要です。計画そのものはWBSやリソースアサイン、スケジュールだけではなく、先ほど説明した進ちょく報告の仕組み(モニタリング)やほかの管理(品質管理、構成管理[文書管理])の方法を配慮する必要があります。

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