デスマーチを止める進ちょく管理の現実解:GanttProjectの導入で進ちょくをコントロールする明日からできるプロジェクト管理(1)(4/4 ページ)

» 2005年04月01日 12時00分 公開
[高野敦,@IT]
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PMの独り言

 これらの説明をしたうえでPMの石出さんに感想を尋ねてみました。

石出さん なるほど、このように進ちょくを管理するのか、こうすれば全体の予測も対応も取れることになる。でも成果物ベースだと成果物を把握しないといけないがどこにあるのやら……。

 進ちょく管理を進めるに当たり、新たな悩みが増えてしまったようです。成果物の管理の仕方については、次回説明することにしましょう。

ソフトウェアかんばん

 本文中では、全体の計画が立てられる仮定で話を進めましたが、そうでない場合(計画が立てられない場合)もあるのではないでしょうか。この問題に着目したのが以下で紹介する手法です。残念ながらこの手法をサポートできるツールは発見できませんでしたので、番外編としてご紹介します。

石出さん 円津さん、最近自分のプロジェクトの進ちょく管理で悩んでいて、ちょっと相談に乗ってほしいんですけど。

円津さん 石出くん、キミのプロジェクトって進ちょくは順調だって部長がいってたけれど。

石出さん 確かに協力会社さんから上がってくる報告は一見順調そうに見えていて、それをそのまま部長に報告しているんですが……。例えば、あるタスクの進ちょくがもう2週間も90%のままだったり、構成管理に上がってくるはずのコードがまだ来なかったり、そんなこんなで、ちょっと不安になっちゃって。

円津さん ちょっと待って石出くん、キミ、もしかしたら協力会社さんの実態を確認しないまま進ちょく報告を受け取っているんじゃないだろうね。

石出さん ええ、進ちょく会議では気付いた内容を質問しますが、それ以上は何か協力会社さんを疑うみたいで……。

円津さん でも部長はキミを信頼して報告を受け取っているんだよ。だから何かあったらすぐに指示を仰がなければならないじゃないか。そのためには正確な情報収集を常に心掛けなきゃ。それに、キミが確認して、もし協力会社さんのいうとおりの進ちょくだったら、キミの不安も解消するんじゃないかな。

石出さん それもそうですよね。

円津さん 進ちょくは成果物の達成度を規準に評価するから、すべての成果物をキミ自身がチェックするわけにはいかないけれど、それでも、重要そうな機能についてはキミ自身がいくつか評価してみたらどうだい。協力会社さんのいう進ちょく率とキミが見た評価を比べてみれば、キミのもやもやも明らかになると思うよ。

石出さん ……。

円津さん それと、週に1回進ちょくの報告を受けるだけじゃなく、もっとリーダークラスの人間とコミュニケーションを取ってみたらどうだい。本当は彼らもいろんな情報をキミに渡したいと思っているはずさ。協力会社さんとしても週1回の進ちょくだけじゃ、時間的にも限られているし、公式の場だからいいにくいこともあるだろうしね。定型的な情報以外がキミのところに集まりだしたら、協力会社さんもキミを信頼してきた証拠だと思うけど。

石出さん 確かに、メールのやり取りだけだと、いいたいことも限られてきますからね。

円津さん えっ、キミはいままでメールだけで進ちょくを確認していたのかい。こりゃ結構重症かもしれないな。

石出さん ……。

円津さん うーん、いままでいったことも重要なんだけど……。キミのプロジェクトは少人数だから、あまり管理負荷を掛けても生産性にも影響するだろうし……。そうだな、まずは進ちょくの『見える化』から始めてみようか。

石出さん 何ですか、その『見える化』って。

円津さん 『ソフトウェアかんばん』って知っているかい。

石出さん ???

円津さん 『ソフトウェアかんばん』は、永和システムマネジメントの平鍋さんが雑誌や講演で紹介したやり方(http://www.ogis-ri.co.jp/otc/hiroba/Report/OOPractice3rd/)なんだけど、キミのプロジェクトのようにやるべき作業が明らかで、個人単位に管理が必要な開発にはちょうどいいんじゃないかな。もともとは平鍋さんが翻訳したリーンソフトウェア開発というものを実践し、そこから生まれたいくつかの手法の1つと聞いているけど。僕がこれを初めて資料で見たときは、正直目からウロコだったよ。

石出さん 海外の方法論ですか、敷居が高そうですね。

円津さん いやその逆さ。そうだね、進ちょく管理のためにまず用意するのは、ホワイトボードと付せん紙、後書き込むためのペンがあればいい。

石出さん シンプルっすね。

円津さん うん。まずホワイトボードを『To-Do(未実施)』『Doing(実施中)』『Done(完了)』に分けるんだ。次に、ある期間に決められたタスクの一覧、個人単位のものがいいね。これをポストイットに書き出し『To-Do(未実施)』の欄に張る。ポストイットには、やるべき作業のテーマと目安の期間ぐらいが必要かな。

石出さん へー。

円津さん 次に担当者が決まったら、この付せん紙に自分の名前と終了予定期日を書き込んで『Doing』の位置に動かすんだ。作業が終了したらカードに終了期日を書き込んで『Done』の位置に動かす。どうだいすごくシンプルだろう。

石出さん でも、これって普通の進ちょく表と変わんないですよね。

円津さん 石出くん、さっき1週間に1回しか進ちょくをもらっていないといったよね。つまり、協力会社さんのリーダーが週に1回メンバーから進ちょく情報を集め、それを進ちょく表にまとめて報告しているんだろう。キミは最新の情報を知りたくても1週間待たなければならないよね。これなら毎日カードの前に行くだけで、最新の情報を知ることができるよ。

石出さん 確かに。

円津さん もちろんこれで知ることができるのは『To-Do』『Doing』『Done』の3つの情報だから、これだけで進ちょく管理はできない。だけど、メンバー全員がほかの人の作業を一目で分かるから、チームのモチベーションに大きな影響を与えるよね。

石出さん 逆にみんなに見られているようで怖いっすよね。

円津さん まあね、でも、チームの中で自然と結束力が生まれれば、結構プラスの方向に働くと思うよ。

石出さん ソフトウェアかんばんでは、ほかに何かやるんですか。

円津さん そうだね、平鍋さんは、『見えるように壁に張れ』と主張している人なので、ソフトウェアかんばんが注目されるんだけど、それ以外にも、朝会を毎日ソフトウェアかんばんの前でやったり、進ちょくのトレンドを見るためにバーンダウンチャートを作ったり、後イテレーションごとに振り返りをやったりして改善効果を上げているよね。

石出さん そうか、何だか自分にもできそうな気がしてきました。

円津さん そうだね、最初は僕も手伝ってあげるから、一緒にやってみようか。

石出さん はい、ぜひお願いします。

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