会計原価を損得計算に使うな!システム部門Q&A(20)(2/3 ページ)

» 2005年04月02日 12時00分 公開
[木暮 仁,@IT]

    (2)Bケーキ店の問題     

 「比較の原則」の練習問題です。Bケーキ店では、店主が品切れを非常に嫌うために多めに生産しています。従って、毎日いくつかの売れ残りが発生し、廃棄処分(廃棄費用は掛からない)しています。すなわち、生産量>需要量の状況です。それ以外の条件は、Aケーキ店と同じとします。

 では、ケーキ1個を落としたときの損失は何円でしょうか?

○正解は0円

 じらすのは失礼ですので、正解を示します。1個落としたことは、売れ残りが1個減ったということです。いい換えれば、廃棄処分を分散して行ったのと同じです。


 さて、同じ事象なのに、Aケーキ店では200円の損失、Bケーキ店では0円の損失になった理由は何でしょうか。Aケーキ店では生産量に余裕がなく、Bケーキ店では需要量に余裕がないという違いしかありません。そこで、損得計算の第2原則「余裕有無の原則」が存在することが分かります。

 損得の評価には、「比較の原則」と「余裕有無の原則」があります。この2つの原則を適切に適用すれば、正しく損得の評価ができます。逆にいえば、この2つの原則を無視した評価基準は、損得の評価には使えないのです。通常の財務会計や管理会計での原価は、これらを無視しているので、損得の評価に使うのは危険です。

    (3)Cソバ屋の問題       

 ケーキ店では見込み生産でしたが、ソバ屋では事前に生産すると伸びてしまいますので、注文を受けてから生産する受注生産(材料は事前に用意できるので、受注組み立て生産)になります。

 Cソバ屋では、店主が徹底しており「そば粉も新鮮なものが良い」といって、その日に作る分だけしか用意しません。その頑固さが受けて毎日行列ができ、最後尾のお客さままでには売り切れてしまって断っている状態です。販売価格や原価は(偶然ですが)Aケーキ店と同じです。

 ある日、1人のお客さまが注文した直後、店主がまだ作り始めていないときに、急用ができたのか注文を取り消して飛び出していきました。お客さまが出て行ったことによる損失は何円でしょうか?

○正解は0円

 帰ってきたときは、その人に作ればよい。帰らなかったときは、行列の次の人に作ればよく、断る人が1人減っただけなので、損失は0円です。


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