同僚と社長……錯綜するそれぞれの思いと業務(第3話)目指せ!シスアドの達人(3)(3/4 ページ)

» 2005年09月03日 12時00分 公開
[森下裕史(シスアド達人倶楽部),@IT]

ついにプロジェクトが始動!

 数日後、坂口はプロジェクトのキックオフミーティングを行う旨の連絡メールを送っていた。豊若に電話で相談したところ、一度メンバーを招集して意見交換をした方が良いとアドバイスされたからだ。

豊若 「ある程度きっちり基本案を固めることも大切だが、今回の営業支援は対象となる範囲が開発のポイントになる。そのためには、1度営業部以外のメンバーも招集して対象範囲を明確にすることが大切だ」

坂口 「営業部以外ですか? 基本案は営業部内のメンバーでは駄目なんですか?」

豊若 「営業支援システムに必要なことは何だと思う」

坂口 「そうですね。やはり、顧客情報や在庫情報ですかね。それと提案型営業のためのアイデア集も必要ですよね」

豊若 「間違ってはいないが、もっと根本的なことを忘れているぞ」

坂口 「何でしょう。自分がいままで使っていた情報はそれぐらいだと思ったのですが……」

豊若 「ここで答えをいうのは簡単だが、それでは君のためにはならないしな。まずは、プロジェクトのメンバーを集めて意見を聞いてみることだ。各部のキーパーソンを選ぶんだぞ。そうしないとせっかくのシステムが有効に働かないからな」

 坂口は豊若への答えを見つけられないまま、キックオフミーティングの日を迎えた。自分なりに考えて、営業部以外にも情報システム部と配送センター、製造部の主力メンバーに声を掛けてある。そういったメンバーを集めることは簡単ではないが、そこはあらかじめ社長経由で通知を出してもらって集めた。社長の力は利用できるところは利用すべきだ、との豊若のアドバイスを生かしたのだ。坂口はあらためてメンバー名簿を見ていた。

 配送センターからは、岸谷小五郎。在庫管理を担当しており、「営業からの依頼はいつも無理が多くて困る」が口癖の男だ。今回のシステムで状況が改善されるならと、出席を承諾したのだった。

 製造部は、製造第1課主任の藤木直哉。ビール製造一筋といった職人タイプの彼は、なぜ自分が営業部のミーティングに呼ばれたのか分からぬまま、けげんな表情で席に着いている。

 情報システム部の福山雅人は、今回の新営業支援システムの開発担当である。西田社長からは、最新技術を駆使したものを作るようにと指示されているらしいが、会社の身の丈に合わないITは失敗することを肌で感じている人物である。

 営業部からは松下真樹をメンバーに加えた。営業部全体の情報や書類関係なら彼女が一番詳しいからだ。もちろん、経費申請書の一件以来、少しずつではあるがITに興味を持ってきている。

 深田祐子は総務部の新人だ。本来メンバーの中には入っていなかったのだが、例の経費清算申請書の件で何回か話すうちに深田自身がプロジェクトに興味を持ち、立候補してきたのである。最初は断った坂口だが、あまりの熱心さに負けてメンバーに登録したのである。

 ミーティングは、その後、坂口が提案した基本案の説明と簡単な質疑応答で終了した。各部署に持ち帰り、基本案を基に意見を集めてもらってから、あらためてミーティングを行うことにしたのだ。グループウェアにはメンバー限定の電子会議室を設け、業務にできるだけ支障のない状態で情報を集められるようにしてある。何しろ各部署のキーパーソンである。忙しい人間ばかりで、簡単に時間を合わせることができないからだ。とはいってもパソコンをまともに使えるのは坂口と福山の2人だけ。先行きに不安を抱く坂口だった。

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