電子メールやシステム・ログ、販売や在庫、会計のデータなど、日々の業務の中で蓄積されていくデータは増えていくばかりだ。データの増加に対応するため、企業はその場しのぎでヘテロジニアスな環境を作ってきたが、そろそろ無理がたたってきた時期ではないだろうか。この連載では、IT環境で増加するデータや法規制にフォーカスし、企業として求められている変化にどのように対応するべきかを解説していく
いま、ITを取り巻く環境では大きな変化が起きています。
このような変化の中で、ユーザーも「必要なデータを必要なときに入手できて、さまざまな変化に対応できる迅速なサービス」を求めています。もし、企業のIT環境がこの要求に対応できないのであれば、単にユーザーニーズに対応できていないばかりではなく、企業としての経営自体を危ういものにしかねません。
いままで多くの企業は、ビジネス要件に応じてさまざまなハードウェアやソフトウェアを導入し、多くのアプリケーションシステムを構築してきました。このような対応でシステムを段階的に拡張する方法は短期的には機能しても、長期にわたっていろいろなシステムを導入することで、互換性のない多種多様なシステムが混在する環境(ヘテロジニアスな環境)を作ってきてしまいました。
このヘテロジニアスな環境下では、それぞれのシステム内で情報が閉じてしまっている「情報の孤島」となり、各システム間で情報の整合性を維持することが非常に困難になってしまいます。さらに、ヘテロジニアスな環境がコスト削減へ圧力を掛けるきっかけとなり、バックログの増大やサービスレベルの低下、さらには社員のモチベーション低下までを誘発し、IT自身が企業として求められている変化への対応を阻害する原因の1つになってしまうケースもあります。
この連載では、現在のIT環境の下で増加するデータや法規制にフォーカスし、企業として求められている変化にどのように対応するべきかを解説していきたいと思います。
いま、身の回りにはさまざまなデータが存在し、増え続けています。ある調査機関の調査によると、2003年度の全世界でのデータ容量は約530P(ペタ:ギガの1000倍)bytesでしたが、2006年には何と4.5倍以上となる約2430Pbytesにまで、猛烈な勢いで増加(CAGR:年間平均成長率65%)すると予測されています。
データが猛烈な勢いで増加している理由として、さまざまなエリアや業界で電子化(デジタル化)されたデータが扱われるようになってきていることが挙げられます。例えば、デジカメで撮った写真を友人に電子メールで配信したり、作成したマニュアルを社内のファイルサーバ上で共有したりすることなどです。こういったデータのやりとりの回数が増えたことに加えて、データ容量自体も爆発的に増加しているのが現状です。
デジタルカメラが普及し始めたころ、デジカメの解像度は10万画素程度でファイル当たりの容量も数Kbytes程度だったかと思います。しかし現在では、400?600万画素のデジカメが主流となり、最高画質のイメージであれば、1つのイメージが数百Mbytesという大容量になる場合もあります。このような変化が、デジタルデータと容量の増大の大きな要因となっています。
それに加えて、最近では国内でも話題になっているコンプライアンス(法順守)対応に関係する情報の増加が、データ増加の大きな要因になりつつあります。各企業は法規制に対応するために、なんらかの対策を講じる必要が出てきています。コンプライアンス対応による情報増加の1つの要因として、法規制緩和によるデータ増が挙げられます。
法規制緩和によるデータ増とは、いままで紙で保持していたデータを、スキャニングなどで電子データへ移行することによるデータの増加です。これは、従来紙での保存が必要だったものが、規制緩和によってデータでの保存でも良いことになってきているためです。逆に、適正な形のデータでの保存を義務付けられているものも出てきています。
また、一部の業界に対して法規制で義務付けられている「電子データの長期間または一定期間の保管」が、データ量の増加の一因です。日本では個人情報保護法が4月より完全施行され、個人情報の取り扱いや情報漏えいに関するニュースが毎日のように取りざたされていますが、法的な問題が発生した場合、速やかにデータを証拠として提出し、開示するためのデータのすべてを一定期間保管することが、データ増加の大きな要因となるのです。コンプライアンスに対応したデータ管理をするのであれば、データの改ざんにも考慮し、データ管理ポリシーを策定することも忘れてはいけない項目の1つです。法規制に関する詳しい説明は、後の項で解説します。
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