増え続けるデータや法規制に どう対応するか?情報資産管理とバックアップポリシー(1)(2/2 ページ)

» 2005年09月15日 12時00分 公開
[藤巻 敬久,日本ヒューレット・パッカード]
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データ価値の向上

 さて、昨今の環境下で、爆発的にデータが増加していることはご理解いただけたかと思います。しかし、データは増えるだけではなく、その価値も上がってきていることを忘れてはいけません。

 コンピュータの目覚ましい性能向上によって、一度に作成されるデータには多くの要素が含まれており、企業はそのデータを基にビジネスを動かしています。顧客データベースや社内文書、マニュアルなど、さまざまなデータがデジタル化されて社内で共有され、日常業務で利用されています。

 もし、これらのデータを失うと、最悪のケースでは会社存亡の危機にも発展しかねないのです。また、データの価値が上がるとともに、これらのデータが第三者に漏えいして悪用されたり、重要な文書が改ざんされたりする犯罪が多発しています。それに伴い、国ごとにデータ管理に関する法規制が施行され、IT管理者は法規制に準拠したデータ管理をしなければならない状況にあります。

着実に広がってきている法規制

 増加し続けるデータに対して、各国でデータの保管/管理などに関する法規制が施行されつつあります。その背景には、電子商取引の増加による不正行為(データの改ざんや隠ぺいなど)や情報漏えい事件などが背景にあります。

 特に米国では法規制化が進んでおり、エンロン破たん問題をきっかけに、企業における重要データの保存に関し、より厳密に永久保護するための法令を定めた「米国企業改革法」や、電子メールによる通信データの保存を求める「米証券取引委員会(SEC)規則17条a-4」、医療情報に関するプライバシーを保護するための1996年の「医療保険の相互運用性確保及び説明責任に関する法律」(Health Insurance Portability and Accountability Act:HIPAA)、電子署名の利用条件を定義している「米食品医薬品局(FDA)の規制21

CFR Part 11」などがすでに施行されており、罰則を受ける事例も出てきています。これらの規制では3つの項目で共通点があり、規制に順守するうえでこれらの共通点を把握することが重要なポイントとなります。

 3つの共通点は、 以下の3点となります。

  1. 特定のデータが一定期間保存されていなければならない
  2. 企業はある時間内にデータを取り出せなくてはならない
  3. 保存されたデータは変更してはならず、企業はデータが上書きされたり修正された可能性がないことを証明できなければならない

 「米国企業改革法」や「米証券取引委員会(SEC)規則17条a-4」は、米国内の企業のみならず、アメリカ市場で株式取引を行う外資系企業にも適用されるので、日本企業としても、人ごととして考えるわけにはいかない状況なのです。国内でも、4月に個人情報保護法が完全施行され、企業としてデータの保管や管理、運用に対して真剣に取り組む必要があり、データの作成から削除、廃棄までを確実に管理運用する必要性が出てきています。

ALT 世界に広がる法規制

データの保管、管理と運用

 前の項で述べたように、データは猛烈な勢いで増加の一途をたどっています。しかしながら、これらのデータすべてが頻繁にアクセスされて使用されているわけではありません。

 通常データは作成され、時間の経過とともに利用頻度や目的、価値が変化します。これらのデータは、利用頻度や目的別に保存されて再利用される情報(リファレンスデータ)と常に使用されるデータ(オペレーショナルデータ)に区分され、オペレーショナルデータと、リファレンスデータの比率は2:8程度となっています。

 実際にこれらのデータを運用するに当たり、すべてのデータを同じプライオリティで管理することは、管理コストの増加にもつながっていきます。また、データが不要になった際の管理も、セキュリティや法順守の観点から重要な要素であり、何時、誰がどのように削除/廃棄したのかを把握できる管理プロセスの構築が必要になります。

 このような変化によって、データを一定期間保存する(アーカイビング)の必要性が増え、データを管理する管理者は、データ量の増加や容量増加に加えて、これらの膨大なデータをどのように保管、管理、運用し、最終的なデータ削除までを行うか、一貫した情報ライフサイクル管理(ILM:Information Lifecycle Management)を考える必要があるのです。

ALT データの利用目的、価値は時間とともに変化する

 このような課題を克服するためには、論理的で積極的な情報管理戦略の立案やプロセスの構築が各企業に要求されています。データの生成から廃棄まで、企業はデータを資産に変え、管理する手段としてILMが解決手段として注目を集めています。

 ILMは、効率的なデータ管理プロセスを提供することで事業運営にインテリジェンスを提供し、増大する法規制への対応を支援します。これにより、データの改ざんや破損からデータ保護を実現できるため、いまIT管理者が持っているデータ運用・管理に対する問題点を解決するソリューションとして注目されているのです。

ALT ILMによるデータ管理イメージ

 次回は、データアーカイブとバックアップの具体的な使い分け方を中心に、紹介していきます。

 

著者紹介

▼著者名 藤巻 敬久(ふじまき ひろひさ)

日本ヒューレット・パッカード株式会社 ストレージワークス製品本部ビジネス開発部リーダ

1982年横河ヒューレット・パッカード入社?計測器、コンピュータ製品の品質管理に従事

1991年?オプティカル、テープ、ILM製品の製品マーケティング担当として従事

2005年7月?ビジネス開発部リーダとしてストレージビジネス開拓、拡大に悪戦苦闘中


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