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» 2005年12月17日 12時00分 公開

情報資産管理とバックアップポリシー(4):データ管理ポリシー策定と運用の仕方は? (1/2)

2005年4月にe-文書法が施行され、これまで書面による保存が義務付けられていた財務や税務関連書類も電子的に保存することができるようになった。これにより、文書保存コストや工数の削減が進むことが期待されている。今回は、階層型のデータ管理をソフトウェアで実現する方法などを紹介する。

[大内 剛,日本ヒューレット・パッカード]

e-文書法とは?

 第1回で説明しましたように、2005年4月にe-文書法が施行されました。e-文書法はこれまで書面による保存が義務付けられてきた財務や税務関連の書類や帳票などの文書を、電子的に保存することを認めた法律です。政府が策定したe-Japan戦略の中でも、重要な柱として位置付けられています。

 e-文書法は民間事業者の文書保存コストの軽減や経営の効率化、利便性の向上を目的としていますが、同時にIT技術の進展により文書保存の電子化を推進し、さらに工数やコストの削減を進めることが期待されています。

電子保存が適用される文書と関係する法律

 e-文書法というのは通称であり、正式には法律第149号「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」、および法律第150号「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」といいます。

 これまで民間企業に義務付けられていた文書の保存が、紙での保存に加えて、スキャナで読み取った電子イメージでも認められました。e-文書法が求めているポイントは次の2つで、これらの条件を満たす電子イメージを保管していれば、紙でなくとも正規の文書と認められます。

  1. 改ざんされていないこと
  2. 真実性が証明できること
分類 関係法律 保存期間
税務関係書類 3万円未満の契約書・領収書、見積書、納品書、注文書など 所得税法、法人税法、地方税法など 7年間
医療関係書類 診療録、処方箋など 医師法、歯科医師法、薬剤師法など 5年間(診療録)
3年間(処方箋)
会社関係書類 定款、株主総会の議事録、営業報告書など 商法、銀行法、証券取引法など 10年間(本店)
5年間(支店)
適用外 緊急時に即座に確認する必要があるもの、その性質上、電子化になじまない書類や法的地位を標章するような書類、電磁的記録の容認を行うことが適当でないもの

オペレーショナルデータとリファレンスデータ

 電子化した文書データは、いったん作成すると後で変更することはありません。またデータは日々発生し、蓄積していきますが、一定期間後は保存のためにそれらのデータを保持し、参照するケースはほとんどありません。このように一定期間を経たデータをリファレンスデータ(参照用データ)と呼びます。リファレンスデータには、CAD/CAMシステムで作成した設計データや、画像・音声などのデータ、病院で患者の検査記録を保持しているデータなどがあります。

 一方、企業の基幹業務に使用するデータベースや、大勢のメンバが使用するファイルサーバ上のデータのように、1日に何度も更新されるデータもあります。このようなデータはオペレーショナルデータと呼ばれ、高速なアクセスと高い可用性、信頼性が要求されます。

オペレーショナルデータ リファレンスデータ
アクセス頻度 高い 低い
アクセス性能要求 高い 低い
データ量 全体の20% 全体の80%

 オペレーショナルデータは通常、高速なアクセスが可能なハードディスク上に保存します。しかし大量のリファレンスデータをハードディスク上に保存した場合、大容量のハードディスクが必要となり、システムのコストが増大します。更新や参照の頻度が低くなったデータをコンピュータ上に保存する場合、単位データ容量当たりのコストが低い記録媒体に保存すべきでしょう。

階層型ストレージ管理(HSM)とは

 これは従来からある階層型ストレージ管理(HSM:Hierarchical Storage Management)という考え方です。当初はアクセス速度が高速な主記憶、一次記憶装置が非常に高価であったため、データの格納場所を工夫して高価な装置をできるだけ効率よく利用することが狙いでした。

 ところが、2000年前後からディスクアレイ製品の大容量化と低価格化が進み、最近はむしろ大量のリファレンスデータを保持することによる非効率性が問題になっています。e-文書法の施行により、リファレンスデータが爆発的に増加することが見込まれており、これを管理することが、第1回で説明したILM(Information Lifecycle Management:情報ライフサイクル管理)の目標の1つでもあります。

 コンピュータの記録媒体の特徴を比較すると、下表のようになります。容量で比較した場合はHDDが優れていますが、テープや光学式メディアであるUDO(Ultra-Density Optical)などは、オートチェンジャーの利用によって大容量化を図ることができます。データ保持期間に関しては大きな差はありませんが、HDDは駆動装置を内蔵するため故障するリスクがあり、運用中の維持管理が重要になります。データの保護を保証するのに定期的なバックアップが必須です。またテープやUDOなどのメディアを使用するうえでの注意点として、将来的なメディアの互換性が挙げられます。

媒体別記録容量などの比較
ファイバチャネルHDD SCSI HDD ATA HDD テープ(LTO) UDO
容量 146GB 146GB 250GB 400GB 30GB
価格 28万円 6万円 4万5000円 1万円 1万円
1GB当たり単価 1918円 411円 180円 25円 333円
データ転送レート 200MB/秒 320MB/秒 150MB/秒 160MB/秒 8MB/秒
想定運用時間 24時間/日 24時間/日 8時間/日 ? ?
データ保持期間 10年 10年 10年 30年 20年
注:MB/秒 = メガバイト/秒、価格や仕様は参考例です。

 一般的に高性能なストレージほど、単位容量当たりのコストが高くなるため、必要なアクセス速度や想定運用時間が得られれば、できるだけ安価な媒体にデータを持つ方がコスト的に有利になります。

 単純な例で考えてみましょう。ファイバチャネルHDD上に、5T(テラ)bytesのデータが記録されており、そのうちの20%がオペレーショナルデータ、残りの80%がリファレンスデータだとします。すべてのデータをファイバチャネルHDD上に保持しておくのは効率が悪いので、リファレンスデータはATA HDDに移行することにしました。

移行前:1918円/GB×5000GB=959万円

移行後:1918円/GB×1000GB+180円/GB×4000GB=263万8000円

 実際はデータを記録する媒体以外の製品も必要になるため、一概にはいえませんが、単純計算で約72%のコスト削減ができることになります。

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