ITスキル標準をやみくもにユーザー企業に理解してもらおうとしてもうまくいかない。その理由には、ITスキル標準そのものが分かりにくかったり、ユーザー企業で活用するメリットを見いだせないことが挙げられる。今回は特に前者に焦点を当て、ITスキル標準を少しでも分かってもらうために説明していく。
ITスキル標準をやみくもにユーザー企業に理解してもらおうとしてもうまくいかない。その理由には、ITスキル標準そのものが分かりにくかったり、ユーザー企業で活用するメリットを見いだせないことが挙げられる。今回は特に前者に焦点を当て、ITスキル標準を少しでも分かってもらうために説明していく。
前回の記事で筆者は、ITスキル標準を普及させていくためには「ユーザー企業における理解の促進が早道である」と指摘しました。ただし、やみくもにユーザー企業の方々に理解してもらおうとしても、なかなかうまくいきません。なぜならば、現時点におけるユーザー企業は、以下のような理由でITスキル標準を敬遠してしまっているからなのです。
そこで今回は、まず上記の1に焦点を当てて、ITスキル標準が少しでも理解できるように説明してみたいと思います。また同時に、ITスキル標準センターも、ITスキル標準をより分かりやすく説明し、多くの人に使ってもらえるものにしようと改善・努力を行っています。その活動についても、少し紹介してみたいと思います。
2005年7月6日、東京・元赤坂の明治記念館にて、「ITスキル標準プロフェッショナルコミュニティフォーラム2005」が開催されました。フォーラムでは、2004年度のプロフェッショナルコミュニティの活動報告や今年度の活動予定が発表されたのですが、この中で、
「現状のITスキル標準は“読みにくい、使いづらい、理解しにくい”の三重苦だ」
という非常に厳しい指摘がなされました。そして、このフォーラムに集まった約400名のほとんどの人が、この指摘がなされた瞬間に大きくうなずいたのです。
そうなのです。ITスキル標準を初めて見た人は、おおむね以下のようなパターンの反応をするようです。
「なんだ、このボリューム(ページ数)は!」
⇒ITスキル標準センターのサイトから、全部のドキュメントをダウンロードし、プリントアウトまでしてしまった人……
「なんか、同じような表現が何度も繰り返して出てきて、頭の中が混乱してきた」
⇒まったく同じ内容なのか、それとも微妙に異なるのか、違いを探るべく目で追うと、かなり疲れます。あるいは途中で挫折してしまいます。
「『達成度指標』とか『スキル熟達度』とかいった、独特の言葉の意味が分からない」
⇒これらはITスキル標準独自の言葉です。言葉の定義はきちんと説明がしてあるものの、やはり一般的な言葉ではないので読む人にはピンと来ません。
これらがまさに「読みにくい、使いづらい、理解しにくい」の原因なのです。ただし、こんな現状のITスキル標準でも、上手に読み取れば、実はうまく理解することができます。そしてそこにはいくつかのコツがあるのです。
上記でも書きましたが、ITスキル標準センターのWebサイトからITスキル標準全体をダウンロードして、一気にプリントアウトすると、ひどい目に遭います。プリンタが大量印刷可能なものであったなら、A4のチューブファイル1冊に収まり切らないくらいのドキュメントが次々に吐き出されてくることでしょう。さらに、研修ロードマップというものが別途用意されており、これはこれでまたかなりの分量です(ITスキル標準センターも、さすがにこのような状況はまずいと思ったらしく、現在は職種別に分けてからしか、ダウンロードできなくなっています)。
たいがいの利用者は、この時点で一気に引いてしまいます。
「この膨大な資料を、全部読んで理解しなければならないのか……」と。
つまり、ITスキル標準全体のボリュームに圧倒されてしまうのです。実はITスキル標準の一部だけを参照し、理解すれば良かったのかもしれないのに、全体のボリュームを見て一気に読む気を失い、せっかくのITスキル標準を理解するチャンスを逃してしまっているのです。これは利用者にとっても不幸ですが、ITスキル標準を普及/浸透させたい、ITスキル標準センターにとっても大きな不幸でしょう。
ということで、ITスキル標準を目にする人に最初にいいたいことは、
「ITスキル標準の全体のボリュームに圧倒されるな!」
まずはここからです(ただし、プリントアウトするときは、あえて全体を印刷しなくても、必要な部分だけを印刷すればよいのです。念のため)。
さて、「ボリュームは、取りあえず気にしない」という第1関門が突破できたら、次は「ITスキル標準のフレームワーク」を理解しましょう。
下記の図を見てください。
このように分解して見ていくと、ITスキル標準の構造がおぼろげながらも見えてきます。ここで重要なのは、個々の言葉にとらわれずにフレームワークを理解し、その構造をざっくりと把握することです。
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