光が見えたプロジェクトと気付かぬ恋心(第6話)目指せ!シスアドの達人(6)(2/3 ページ)

» 2005年11月18日 12時00分 公開
[西野雅裕(シスアド達人倶楽部),@IT]

どちらの方向へ?

  坂口は豊若と飲んだ翌日、第3回のプロジェクト会議を招集した。今回は、岸谷小五郎と藤木直哉も何とか職場を抜け出してきて、出席した。

坂口 「それでは、前回保留となっていた物流管理の機能について、議論したいと思います」

岸谷 「前回は失礼しました。前回の議事録を読んで、私は良い提案だと思いました。しかし、配送センターの連中には、システムが導入されたら職を失ってしまわないか? という危機感があります。なので、物流管理をシステム化するのは、もう少し先にしていただけたらと思います。私はもっと彼らの身近なところで、ITの便利さを体験させてやりたいと思います」

 これが坂口からの電話の後、岸谷が思い悩んだ末の結論だった。

藤木 「工場も同感です。まず、自分たちの仕事の中で改善できる部分があるのに、そこに手を付けないうちに、他部署と連携したシステムを導入するのは抵抗が大き過ぎます。私も物流管理システムは、近い将来に絶対必要なシステムだと感じていますが、そのために私もまず工場内のITリテラシーを向上させることに注力したいと思います」

 岸谷の発言に同調するように、藤木も発言した。

坂口 「私も前回の会議の後、岸谷さんや藤木さんとお話しさせていただき、物流管理システムを導入するのはまだ早いと思いました。そこで、いま、新しい営業支援システムでできそうなことで、将来のシステムにつながりそうなことは何かと考えました」

椎名 「それで、何が見つかったんだ?」

坂口 「はい。PDAです。前回の会議で松下さんから、情報共有のためのPDA導入のご提案がありました。深田さんからも、PDAへの情報配信のご提案がありました。いま、岸谷さんや藤木さんも、将来における物流管理システムの導入には賛成してくださいました。そのときの情報配信の手段として、PDAが利用できると思います。私は営業活動で外出するとき、PDAに情報をダウンロードしてから出掛けます。まずプロジェクトの第一歩として、営業部員にPDAに慣れてもらう必要があると思うのです」

 これは、豊若のアドバイスを一語一語思いだし、考え抜いた末に坂口が出した結論であった。

深田 「えー? では、私のアイデアも実現するの?」

坂口 「すぐには無理でしょうが、いずれは実現したいと思っています」

松下 「そうよ。営業成績に直結することから始めるのがいいわ」

福山 「まぁ、PDAでの情報提供ならセキュリティの確保さえ気を付ければ、そう難しくないでしょう。その案であれば、良いのではないでしょうか」

椎名 「でも、使い方がよく分からないな」

 これは、「システムなどなくても仕事ができる」と思っている椎名の、せめてもの抵抗だった。

坂口 「今回のプロジェクトでは、コンテンツも大事ですが、PDAになじんでもらうことにも重点を置きたいと思います。従って、画面の作りを工夫し、ユーザーフレンドリーなものにしたいと思います」

椎名 「携帯電話で通信するとしても、電波の届かないところがあるじゃないか。そのような場所では、PDAで見たいコンテンツがすぐに出てこないこともあるんじゃないのか?」

坂口 「その辺りは、営業部員が待てるレスポンスタイムを調査し、コンテンツの作り方を工夫して対応したいと思います」

椎名 「そういうつもりなら、システムを開発する前に、営業部員の要望をよく調査してくれよ」

 椎名にこれ以上抵抗する理由はなかった。

松下 「じゃあ、これで決まりね!」

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