2005年11月15日(火)、「第2回 有能プロジェクトマネージャ勉強会」(@IT情報マネジメント/ソフトバンク クリエイティブ共催)が行われた。今回は、受講者のノウハウをえぐり出す「バリューリスニング(VL)」を使ったノウハウ拡充会議を実際に行った。
株式会社プライド
執行役員 チーフ・システム・コンサルタント
大上 建(だいじょう たける)氏
前職で上流工程を担当する中、顧客の利用部門は必ずしも「開発すること」を望んでおらず、それを前提としないスタンスの方が良いコミュニケーションを得られることに気付き、「情報の経営への最適化」を模索することのできる場を求めてプライドに入社。株式会社プライドは、1975年に米国より社名と同名のシステム開発方法論の日本企業への導入を開始して以来、これまで140社余りの企業への導入支援を通じて、情報システム部門の独立自尊の努力を間近に見てきた。
有能PMが持つノウハウは、組織的に拡充することができます。
ノウハウをハンドリングするメタノウハウとして、「コンセプト・リテラシー」があります。これは、ノウハウを体系化した「1. メソドロジ」、気付きからノウハウを作り上げる「2. ATACサイクル」、価値あるものの聞き出しからノウハウの抽出を行う「3. バリューリスニング(VL)」、ノウハウの組織的充実を目指す「4. ノウハウ拡充会議」、はしの上げ下ろしではなく直接ノウハウ(方法論のコンセプト部分)を指導する「5. コンセプト教育」から構成されます。今回は、この内容を説明していきます。
ノウハウの体系化方法には、「メソドロジ(方法論)」と「ATACサイクル」の2つがあります。メソドロジについては第1回の勉強会でも触れましたので、そのレポートを参照してください。
PMノウハウ(メソドロジのコンセプト)は、シンプルに4象限(くらい)のフレームワークで整理できます。一例を挙げれば、「1. 一般PMはどのようにしているか」「2. その結果、どのようなロスがあるのか」「3. 有能PMはどのようにしているか」「4. その結果、どのような成果が上がるか」といった4つになります。これを、マトリクスに当てはめます。
「ATAC(アタック)サイクル」は、「あっ(Aha!)」という気付きからノウハウを作り上げるサイクルのことです。ATACサイクルを意識し、気付きを得る訓練、気付きを得られる環境作り、気付きをコンセプトのフレームワークで整理する訓練を行うことで、ノウハウの創造ができます。
ATACのAは「Aha!」で、日々の活動の中でピンと来ること。次のTは「Thought」で、ピンと来たとき、それは何かを一度立ち止まって考えることです。そこでノウハウの仮説構築を行います。その次のAは「Action」で、Tで考えたことを、実際に行って検証します。とにかくチャンスを見つけてやってみる。最後のCは「Conceptualization」、コンセプトとして固めることです。このように、ATACサイクルは「ノウハウを作るための訓練のフレームワーク」といえます。
ノウハウをえぐり出す方法として、「バリューリスニング(VL)」があります。有能者の実績を確認し、生々しい実践事例を聞き出し、それを改めて意味解釈することで、有能者のノウハウをえぐり出すことができます。有能PMは、一般PMにない何らかの工夫をしているから、結果がついてくるんですね。
VLの手順は、最初に「相手の初期説明を聞く」ところから始めます。ここでは、名前やピンと来たこと、繰り返される言葉からコンセプトの仮説を立てます。次に「事実を引き出す」のですが、具体的に、生々しく聞くことが大切になります。事例を聞いても漠然としたことをいう人もいるので、意味を解釈できる詳細さが必要です。その次に「『ピン』の深掘り」をします。価値があることですから、何にピンと来たのか、普通と何が違うのか、それによって何が良くなるのかなど、しつこく聞きます。そして類似事例、方法論のフレームワークを参考にしながら「コンセプトの仮説構築」をします。この一連の流れでは、ATACサイクルを回して聞きます。その後、事実を聞く質問で「コンセプトの確認(検証)」をし、「方法論の確立」をします。
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