問題解決案を導き出す「柔軟な発想力」を鍛える問題発見力勉強会(3)(1/3 ページ)

2005年12月13日、「第3回 問題発見力勉強会」(@IT情報マネジメント/ソフトバンク クリエイティブ共催)が行われた。3回目の今回は、「柔軟な発想力」を後天的に身に付けるための講義とワークショップが行われた。その内容をお伝えする。

» 2006年03月09日 12時00分 公開
[生井俊,@IT]

柔軟な発想力を後天的に身に付ける

Speaker

株式会社リアルナレッジ代表取締役

秋池 治氏

横浜国立大学卒。メーカー系情報システム会社にてシステム企画とシステム開発に従事。その後、ユーザー系企業でデジタルビジネスの企画および社内改革に取り組む。2003年に数名の仲間とともに株式会社リアルナレッジを設立、業務プロセスの可視化やプロセスの最適化により、経験や勘に依存せず業務を遂行するためのパフォーマンスサポートを提供している。著書に『情報エキスパート』(アプライドナレッジ刊)がある。



 第1回、第2回でもこの図を示しましたが、今回は「解決策の発想」にスポットを当ててお話をします。これまでの流れですが、「仮説構築」をしたら、「仮説の検証」(仮説の確認作業)を行います。ここでは、ヒアリングスキルと構造化のスキルが必要で、この前提があって、「問題の理解」という問題をつかみ上げる段階に入ります。構造化スキルにより問題をつかみ上げたら、今度はどう知恵を絞るかという「解決案の発想」をします。ここでは柔軟な発想力が必要で、発想をしたら後はプレゼンテーションで「解決策の提示」をしていくことになります。

ALT 図1 問題を理解したら、柔軟な解決案を発想する

 例えば、新規事業として、発想の奇抜さだけ目立つものがあります。しかし、発想力だけがあってもダメで、ヒアリングスキル、構造化スキルによる仮説検証と問題理解という土台の上に、発想力が立ってないといけません。発想力に関しては、「アイデアマン」や「コロンブスのタマゴ」といった言葉があり、先天的な能力だといわれますが、後天的に身に付けることも可能です。例えば、一代で上場した企業の社長は「アイデアマン」といわれたりもしますが、その裏側では仮説の検証をしっかりやっているものなのです。

ALT 図2 目的を見失うことなく、思考・発想は柔軟に(クリック >> 図版拡大

 柔軟な発想力でアイデアが出るのはもちろん、さまざまな効果をもたらします。

 図2の右側をご覧ください。業務を遂行するとき、失敗する場合と成功する場合とがあります。「その差は何か」と見ていくと、目的を見失わないことが鍵になります。失敗例でよくあるのは、プロジェクトのカットオーバーの日時を最優先事項に置いてしまうといった、「手段がいつの間にか目的になってしまう」というようなことです。一方、成功しているプロジェクトでは、常に目的が頭から離れていないため、目的を見失わないで済みます。

目的を見失ってしまった事例

 ある企業では、4月から6月にかけて、キャンペーンを実施し、この期間の売り上げに応じ、インセンティブを支払っていました。その結果、昨年の同じ時期より売り上げを伸ばすことができましたが、年度が終わったときには年間の総売上が、昨年度を下回る結果となりました。このケースから分かるように、長期的な目的として、短期的なカンフル剤を打つのがいいのか、ということも考えなければいけません。

 また、昨年度は市区町村の合併が相次ぎました。市区町村の合併を行うことで、総務などのロスを減らし、合理化していくことができるというのがその目的でした。しかし、一方で合併により一時金が出たんですね。ある市町村の合併では、合併により住民の人口が1.5倍に対して市の職員は2倍に増えてしまい合併後に早期退職の募集を行うなど合理化を進めています。今後、合理化がどこまで進められるのか動向を見守る必要がありそうです。合理化を目的として相次いだ市区町村合併には、途中から一時金が目当てになってしまい、当初の目的を見失ってしまったケースもありそうです。

 図の真ん中にいきます。目的を見失わないためには、いつでも自分を客観視する「高い視点」「多面的な視点」を持つことが必要です。「お客さまの立場で考える」とよくいいますが、これは多面的な視点の1つだといえます。この2つの視点を合わせて「メタ思考」と呼びます。

 目的とのギャップを認識したときは、本勉強会第1回で説明していますが、CPDサイクルを回します。ギャップの認識は、是正につながる大きな宝です。是正するためには、これからお話しする柔軟な発想が必要になります。

 メタ思考を経て、今度は構造化(図式化)します。これは、構造化については第2回でお話ししていますので、レポート記事をご参照ください。

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