問題解決案を導き出す「柔軟な発想力」を鍛える問題発見力勉強会(3)(2/3 ページ)

» 2006年03月09日 12時00分 公開
[生井俊,@IT]

発想力のフレームワーク「1+3」による柔軟な発想法

 「1+3の柔軟な発想法」と名付けましたが、発想力のフレームワークについて、簡単に説明します。先ほども申し上げましたが、発想力は後天的に伸ばすことができます。「1+3」の発想を組み合わせると、そのトレーニングができます。では、その「1+3」とは何か、ですが、1はメタ思考、つまりお客さまが望む“目的を達成する”ための目的志向を指します。3は「源流追求型」「現状否定型」「課題解決型」という発想方法を指します。源流追求型は「なぜ、なぜ」とさかのぼる方法、現状否定型は制約条件を外して考える方法、課題解決型は問題がなくても何かを設定して取り組んでいく方法です。

ALT 図3 メタ思考の下、3つの発想方法を組み合わせて利用する

 メタ思考とは、現在考えている事柄を客観的に高い視点で俯瞰(ふかん)することをいいます。実際には「ズームの視点」と「多面的な視点」の2つの視点も必要です。高い視点の代表例は鳥瞰図(ちょうかんず)です。バーズアイともいい、最近はカーナビでも搭載されています。高いところから見られる人は、評論家といわれたりして、会社で浮いてしまったりするんですね。それを避けるためにも、ズームの視点と多面的な視点が必要です。富士山を見るときには、宇宙からも見る視点もあるし、登っている視点もある。ズームの柔らかさがないと、現実的ではないわけです。また、鳥瞰図だけでなく、真上から見たり、真横から見たりと、多面的な視点が必要です。このメタ思考は、コーチングにもかかわってきます。

何を売るコーヒーショップなのかを考える

──さて、クイズです。スターバックス、ドトール、ルノアールというお店があります。「どれもコーヒーショップじゃないの?」といわず多面的な視点で、どんな特徴があるかを考えてください。例えば、ルノアールは純喫茶といわれるものです。ほかの純喫茶がことごとく閉店していく中で生き残っています。少しヒントを出しましょう。この中でコーヒーを売っているのは、スターバックスだけです。それぞれ、何を売っているお店でしょうか?

会場 ルノアールは長くいても怒られないので、空間と時間を売っていると思います。

──ビンゴです。最近では、Yahoo!の無線LANサービスが入っていて、ノートPCを開くと「電源を使いますか」といわれるし、長居しているとお茶まで出てくる。ビジネスマンをターゲットにして、時間と場所を売っているんですね。だから、サービスとして無線LANがあるし、電源も貸すわけです。ここでは、コーヒーがおいしいかはポイントではありません。では、ドトールでは何を売っているのでしょうか。

会場 タバコが吸い放題。最近、飲食店でもタバコが禁止されていることが多いので、価値があります。

──ドトールコーヒーのお店に連れ立って入る人たちを見ていると、ほかの人が注文しているうちに、もうタバコを吸っているという人もいます。喫煙者にとって、安心してタバコを吸える場所なんですね。

 この3つのブランドは同じコーヒーショップとしてくくられますが、サービスの向上を考えるときにベースが異なっていることを認識する必要があります。

柔軟な発想には、源流追求、現状否定、課題解決の3つがある

 柔軟な発想法「1+3」の「3」側を説明していきます。

 1つ目が「源流追求型」です。これは、現在の姿(状況)から「なぜ?」を繰り返し、問題の核心に迫る思考方法です。「あれ? なんでだろう?」と、いろいろなものに対する興味・関心を持ち、疑問を持つことからスタートします。「あれ? あれ?」と思うことで高まっていきます。

 ある日、うちの社員が池袋駅でメイプリーズという100円ケーキの店を発見したんですね。買って食べてみると、100円ケーキと思えないくらいおいしい。それで、どういう会社か調べてみたのですが、100円ケーキの店が下火になっている中、駅構内を中心になぜか増えているんですね。ビジネスモデルを調べていくと、ホテルのバイキングなどにもケーキを納めていることが分かりました。安くておいしいし、駅ナカにあるし、収益が見込めるという形でしょうか。そこからの推測ですが、この会社の主たる事業はホテルのケーキにあるのではないかと見ています。駅ナカに出店し、ここは収支がトントンでもいいのです。量を多く作ることにより、全体のコストが下がり、本業でのもうけが増えるのではないでしょうか。

 2つ目が「現状否定型」です。この思考は、現在の阻害要因や制約条件が、もし「ない」としたらどうなるか、です。「○○がしたい」といったときに、でも時間が足りなくて、予算が足りなくて、といったり、いわれたりするケースがよくあります。それなら、時間や予算の制約がなければいいのですか、とその制約を取り払ってみます。そうすると、時間や予算は本当の阻害要因ではなく、実はスキルの問題だったりします。

 3つ目が「課題解決型」です。現在は問題がないように見えている中から、あえて次の課題を設定してそれに取り組む思考パターンです。「10%の改善ではなく、50%に半減」など、そんなムチャな、という条件設定から発想していくやり方です。

 例えば、ユニクロのフリースです。それまでちまたでは1枚5000円前後で売られていたものを、1900円で提供して大ヒットしました。「どうやったら、この値段で作れるか」から始まって、材料調達や色を限定するなどの手法を使い、この価格を実現しました。

 以上の3つの要素は、1つだけ該当するということもありますが、複合的に組み合わせて使われる可能性も多くあります。

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