問題解決案を導き出す「柔軟な発想力」を鍛える問題発見力勉強会(3)(3/3 ページ)

» 2006年03月09日 12時00分 公開
[生井俊,@IT]
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発想力がブレイクスルーする瞬間を体感する

 さて、今度はグループでこのクイズに取り組んでもらいます。次の動物を分類して、同じ種類でくくってみるものです。生物学的にどうかは関係ありません。ここで重要なのは、発想力のブレイクスルー発想力がブレイクスルーする瞬間を体感することです。5分間でいくつ挙げられるか勝負します。分類方法を付せん紙に書き、模造紙にどんどん貼っていってください。

ALT 写真1 「トラ」「ウシ」「ペンギン」「イルカ」「ワニ」「ワシ」「イヌ」「ティラノサウルス」を分類する

会場 「話をする」というのもありですか?

──奇抜さがあって良い答えですね。ここでは多面性が出るかどうかを見ます。いままで一番強かったのは小学校3年生ですね。さて、始めてください。

4人1組のグループで、一斉に作業を開始。自分がひらめいたことをどんどん意見していくチームや、おのおのが気付いたことをまず付せん紙に書き出すチームとに分かれた。分類を見ていくと、「胃の数」「歯の有無」といったものから、「食用かどうか」「革に価値があるか」「野球チームのキャラクターになっているか」といった意見まで書かれていた。

──では、ここで区切って各チームに発表してもらいます。

Aチーム 「現在いるか、いないか」

──恐竜はいませんね。でも、わが家には強くて怖いのがいるんです。

Bチーム 「常温か、変温か」「(生息地が)日本か、ほかの国か」

──まだ、ブレイクスルーのポイントはないですね。

Cチーム 「ペットになるか」「字の画数」

──うわー、ブレイクスルーのポイントですね。文字の数ですね。動物的なものではなく、多面的に見られるようになりました。わたしからも2点挙げておきます。「右を向いているか、左を向いているか」「写真の背景が明るいか、そうではないか」。こういったものでもいいと思います。

 まず、皆さんは、生物としての種別を考えてしまいます。そこを「分類を30、挙げましょう」というと、苦し紛れにいろんなものが出てきます。そこが、ブレイクスルーポイントになります。会議の前に10分間だけ、これをやって議論に入ると、脳が活性化して度合いが違ってきます。

身近な「コロンブスのタマゴ」を探す

 続いて、身近なコロンブスのタマゴを探す作業をしてもらいます。どんなものかですが、森永製菓の「ウイダーinゼリー」やPHS事業者の「ウィルコム」が挙げられます。ウイダーinゼリーは当初、カロリーメイトのような位置付けでスタートしました。しかし、コンビニで品ぞろえしたところ、栄養補給からお手軽な食事として意識されるようになり、キムタクのCMと相まって人気商品になりました。一方、ウィルコムは淘汰される運命であったPHS事業を、「携帯対PHS」という対立の構図ではなく、2台目にPHSを持つと安いですよ、という戦略で成功へ導いています。こういったものを探してください。そして、それらは「1+3」のどの発想方法で発想されたのかを考えてみてください。

再度、グループで作業を開始。「ポストイット」を挙げた人は「接着剤開発の失敗から生まれたもの」とグループのメンバーに説明をしていた。「甘栗むいちゃいました」と書いていたチームに対して、スピーカーの秋池氏自身が「良いですね。これは、東日本キヨスクとカネボウフーズの共同開発商品で、一番始めはキヨスクに置かれたんですよね」とコメントする場面も。ほかに、「カメラ付きケータイ」を挙げたグループもあった。

──では、各チームに発表してもらいます。

Dチーム 「発泡酒」ですね。ビールののどごしがあれば、(原材料が)麦でなくてもいいということで、源流追求型ではないでしょうか。

──現状否定型もあると思います。ビールの売り上げが落ち込む中、税金を払うのを減らしたいという思惑もあるでしょう。政府が発泡酒の税率を引き上げれば、今度は第3のビールが出てくるという。結局、小手先のことに振り回されて、本来のことが見えていませんから政府の税収が落ち込んでいますよね。

Cチーム 10分1000円で髪の毛がカットできる「QBハウス」を考えました。これは源流追求型、現状否定型、課題解決型のすべてではないでしょうか。

──床屋さんがもっと売りたいと考えたケースですね。いままでは1時間で4000円だったものが、10分で1000円ですから、これは明らかに発想の転換を念頭に置いていますね。これを実現するために、洗髪はなく、人の頭を掃除機で吸うという発想に結び付いたのですね。

 ここまでいろいろと説明しましたが、「1+3」にこだわらず、「あれ?」と思うことや、ほかの人の発想を学ぶことを大事にしていってください。そうすることで、柔軟な発想力を伸ばすことができます。

編集部から

 勉強会の感想として「視点の持ち方・考え方を具体的に挙げながら説明してくださり、大変分かりやすかった」「具体的なプロジェクトの内容に関する知識が豊富で分かりやすかった」「『1+3』の柔軟な発想法は分かりやすく、いまの仕事のつまずいている部分が見えた気がします」といった意見が寄せられた。


※ 文中の各社ビジネスモデルの定義・解釈は、スピーカーの秋池氏および勉強会参加者の独自の意見・見解です。


筆者プロフィール

生井 俊(いくい しゅん)

1975年生まれ、東京都出身。同志社大学留学、早稲田大学第一文学部卒業。株式会社リコー、都立高校教師を経て、現在、ライターとして活動中。著書に『インターネット・マーケティング・ハンドブック』(同友館、共著)『万有縁力』(プレジデント社、共著)。



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