IT投資を成功させるためには、悪者になることも必要ITガバナンスの正体(7)(2/3 ページ)

» 2006年03月16日 12時00分 公開
[三原渉(フューチャーシステムコンサルティング),@IT]

ITマネージャは悪者になることも必要

 本連載では、以前「情報や情報システムの視点から、全社のほぼすべての人・制度・業務を網羅しなくては、ITマネージャ、情報システム部門における全体整合性を考えながらの活動は、遂行できない。そう考えると、ITマネージャや情報システム部門のメンバーは、まさに経営の根幹を握っているといっても過言ではない」と解説した。

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 ITマネージャの中には、日々の対応に追われ、近視眼的になってしまっている方も多いことと思う。いや、多くの方がそのような状況に陥っていることは想像に難くない。リーダーの役割は、大きな流れを作り出すことにある(もちろんリードするレベル・内容にもよる)。明日のこと、来週のことだけにとらわれていては、大きな流れは作れない。だからこそ、考える時間を持てるように、急がば回れでメンバーの育成に注力している方もいらっしゃると思うが、短期的には、自分の仕事を無理やりにでもメンバーに任せてしまえ、という一種悪者になる場面が必要になってくると思う。優しいだけでは、ITガバナンスをつかさどる一員としてのITマネージャとはいえない。

 メンバーが将来的に楽になれるようにするために、そうしている(無理やり自分の時間を作るために、メンバーに一時期迷惑を掛けてしまう)ということ、を理解してもらえるように話し合う時間が必要だろう。

 えっ? そんな時間も持てない? そんな場合には、単純に一時的に悪者になるしかない。ただし、上司にはそのようにすることを理解しておいてもらう必要がある。それもできない? ならば、誰かが必ず見ていてくれるものだ、という気持ちを少なくとも持っていたい。ITマネージャが集まり、合宿を開くというのも手だ。常日ごろから近視眼的になってしまっているITマネージャが集うことによって、全社的な整合性を考察し、将来像を共有することほど、ITマネージャ間で整理・共有しなくてはならないものはない。ITマネージャが1人だけならば、他社のITマネージャが集まる会合に出席して、意見交換する場をぜひとも持ってほしい。「経営者は孤独だ」とよくいうが、ITマネージャが孤独ではその会社の経営は成り立たないのだ。

 ベンダにおんぶに抱っこで、癒着しているようなやから、会社にとって背任スレスレのやから(踏み込んでしまっているやからもいないとも限らない)は、自分の能力で仕事をしていないわけで、いずれ淘汰されるものだ(誰かが見ている)。そんなやからでない限り、みんながみんな会社を何とか良い方向へ向かわせよう・向かわせたいと考えているわけだから、そのベクトルを一致させれば大きな力になるはずだ。そのためにも将来像を共有したい。そこに行けば、こんなことが待っている、ということを早々に共有したい。このことが、戦略IT投資の像・内容につながっていくはずだ。

 少し精神論になってしまった。話を元に戻そう。冒頭説明したように、戦略的なIT投資においては、コアコンピタンス投資領域とコモディティ投資領域に分けて考えることが肝要だ。しかし、実際に投資するに当たっては、必ずといってよいほど、「効果は何か」を問われるものだ。そのときには、効果は出るものではなく、出すものだ、と考えたい。

 コモディティ領域に関しては、効果うんぬんではなく必要なものだから投資する、ということでマネジメント層と共通認識を持ちたい。例えば、会社でいう必需品とは、電話(固定・モバイル)やコピー機、プリンター、机やいす、といったものが挙げられるが、机やいすを購入する場合の「投資対効果」なんて聞いたことがない。それらの必要性はとやかくいわれないはずだ。

 つまり、コモディティ領域に関しては、机やいすの購入と同等の稟議でよいと考える。メールシステムを新しく導入するときに、「投資対効果」がうたえないから導入しない、ということは考えにくい。ただし、一度入れたシステムを刷新する場合には、その具体的な理由(何が変わるのか、何が良くなるのか)を定性的に説明する必要はあるだろう(定量的には難しいことが多い)。直接的な効果として、システム運用費の削減レベルだろうか。

 その半面、コアコンピタンス領域への戦略投資は、利活用部門のリードが不可欠だ。利活用部門のリードや理解がないままで、システム部門が推進したプロジェクト(戦略投資プロジェクト)での成功は聞いたことがない。システム部門が主となれる戦略投資(とあえていえるもの)は、システムそのものに掛かる費用(ランニングコスト≒保守・運用コスト)のコスト削減か、経営戦略変化への即応のためのシステムの柔軟性確保くらいだろう(老朽化対応は、戦略投資とはいわない)。

 これら以外のコアコンピタンス領域への戦略投資は、必ず利活用部門のマネジメント層が、その導入効果をコミットしたうえで進める。「この仕組みの導入により、わが部門・事業部はこのような効果を生み出す所存である」ということを、コミットしてもらうのだ。効果は自然と出るものではなく、利活用部門が導入されたシステムを存分に使いこなして初めて効果を出せるもの、という認識の下で投資の意思決定を下していきたい。

 コアコンピタンス領域は、つかさどる利活用部門が自分たちで、どのような業務にしたいのか、どんな事業計画を持っているのか(イメージしているのか)、ということをきちんと把握・共有するところから、IT戦略投資をするのか否かの判断を下していかなくてはならない。この意味で、コアコンピタンス領域への戦略投資に「他社との比較」や「他社事例」を適用するということはナンセンス、ということを理解していただきたい。参考・参照程度、あるいは「他山の石」とするならば害は少ない。効果は利活用部門で「出すもの」。そこで、効果のモニタリング、ということになる。

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