ストレージ・ネットワークの技術上司のためのストレージ・ネットワーキング (2)(2/3 ページ)

» 2006年06月24日 12時00分 公開
[辻 哲也,ブロケードコミュニケーションズシステムズ]

 SANは、スイッチなどを使用してサーバとストレージを結び付ける「ネットワーク」を指す用語である。繰り返すが、「ネットワーク」であるということに注意されたい。SAN自体はその上に位置するプロトコルやファイルシステムを意識しない。オープンシステムでは、SCSIプロトコルを用い、データを「ブロック」という単位でストレージに対して読み書きするのが一般的だが、SANではファイバチャネル(Fibre Channel:FC)やIPプロトコルをSCSIプロトコルと対応づけることで、SAN内でデータの読み書きを実現することができる。

 従って、SANは「ブロックレベルの通信を仲介するネットワーク」と表現できる。上記のとおりSANはファイルシステムに対して透過的で、サーバは自身が認識できるファイルシステム(WindowsであればNTFS、SolarisであればUFSなど)でストレージ内のボリュームをフォーマットし、SANの先に存在する外部ストレージに内蔵ディスクと同じようにアクセスできる(図4)。

ALT 図4 SANではSCSIのデータブロックをネットワーク経由で送ることができる

 ただ、NTFSやUFSといったファイルシステムはサーバごとに存在し、単一ボリュームを複数サーバから同時にアクセスできるように構成できない。これを可能にするために、複数サーバでボリュームを共有するSAN対応のファイルシステムなどが提供されている。この場合は、サーバ間のアクセスを管理するサーバなどが別途必要となる。

 NASはその名のとおり、「ネットワークに接続された」ストレージ装置だ。ここでいう「ネットワーク」とは「IPおよびEthernet」であり、SANとは違って「ファイル」単位でのアクセスが基本になる。つまり、クライアントはIPネットワークを経由してNASに存在するファイルにアクセスする(図5)。

ALT 図5 NASはネットワーク経由でファイル単位のアクセスを実現する

 ファイル共有システム(プロトコル)として代表的なのは、Windows環境で使用されるCIFS(Common Internet File System)と、主にUNIXおよびLinuxで使用されるNFS(Network File System)である。これらはIPネットワーク上で動作するクライアント・サーバ型のプロトコルで、サーバ(つまりNAS)側で排他制御などのファイル管理を行っている。従ってNASの場合、SAN環境にはないファイル単位での排他制御や同時アクセスが可能である。ただしファイルをアクセス単位とするNASにおいてはOSのファイルシステム処理が加わるため、パフォーマンスという観点で比較すると、ブロックアクセスを前提とするSANに比べるとオーバーヘッドが大きい。

 「SANとNASはどちらが優れているのか」と両者を比較しているケースがしばしば見受けられるが、これは「ネットワーク(SAN)」と「ストレージ(NAS)」という全く異なった技術を比較していることであり、本質的には意味のない議論だ。またNASは、クライアント側へ提供するインターフェイスはCIFSもしくはNFSというファイルレベルのアクセスだが、NAS自体のストレージへのアクセス(こちらはもちろんブロックレベルのアクセスとなる)の手段としてSANを用いることができる(図6)。この場合、NASサーバ筐体内のストレージ容量に限定されることなく、ストレージを効率的に拡張していくことが可能になる。このようにSANとNASは対立するものではなく、補完し合う技術と考えるべきだろう。

ALT 図6 SANとNASは単純に比較できない技術

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