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» 2006年11月30日 12時00分 公開

企業にとってのリスクと事業影響度分析事業継続に真剣に取り組む(3)(1/2 ページ)

BCPの策定と準備の作業とは、BCPを策定するに当たっての規定、体制、方法を検討し、実施、評価、見直しをすることだ、今回は、このBCP策定のステップを紹介する。

[喜入 博,KPMGビジネスアシュアランス株式会社 常勤顧問]

 第2回では、BCP策定に取り組む企業が実施すべき作業、検討事項をご紹介しました。それでは、BCPは、どのようなリスク、どのような事業分野に対して策定すればよいのでしょうか? BCPの策定、BCMの構築に対して投資できる人、物、金などの資源には限りがあります。有限の資源を最大限に活用し、より効果を上げるために、BCP策定対象の検討方法、手順を明確に定めることは極めて重要です。今回は、企業活動を取り巻くリスクを整理し、その中からBCP策定対象を選定する事業影響度分析(ビジネスインパクト分析=BIA:Business Impact Analysis)をご説明しましょう。

事業影響度分析の実施手順

 事業影響度分析は、大きく2つの作業からなります。1つは、事業活動において想定されるリスクを整理し、事態発生時のシナリオを作成する「リスクシナリオの作成」であり、もう1つは、その事態への対応が企業にとって必要であるかを判断するための「影響度調査とリソース調査」です。図1は、この2つの作業の手順を整理したものです。それぞれの作業の内容に関してご説明しましょう。

ALT 図1 事業影響度分析の実施手順

リスクシナリオの作成

 リスクシナリオの作成の作業は、事業活動において想定されるリスクを整理し、リスクの発生から事態の推移をまとめたシナリオを作成する作業で、次の3つの内容からなります。

  1. リスクの洗い出し
  2. 対象リスクの絞り込み
  3. リスクシナリオの特定

1. リスクの洗い出し

 企業は、さまざまなリスクに取り囲まれています。リスクは、その事象が発生すると企業に収益増や社会からのより良い評価を得られるプラスのリスクと、発生すると利益が減少する負のリスクがあります。このプラスのリスクとマイナスのリスクの均衡を適切に図り、全体として企業の業績を上げ、企業価値と評価を高めていくことが経営者の役割です。

 通常、BCPは、企業を取り巻くリスクの中でマイナスのリスクを対象とします。発生すると企業に損失をもたらす事象に対して、その損失を最低限に抑え、短期間で通常状態へ復帰させることがBCP策定の目的です。

 それでは、企業を取り巻くリスクには、どのようなものがあるでしょうか。図2は、企業を取り巻くマイナスのリスクを分野ごとに整理したものです。企業活動はそれぞれの企業により異なっており、当然、リスクの有無や影響度は異なります。従って、図2は一般的なリスクとして整理したものと考えてください。

ALT 図2 企業を取り巻くリスクの例

2. 対象リスクの絞り込み

 リスクは、企業の外部の要因に起因するリスクと内部の要因で発生するものに分類できます。外部の要因で発生するリスクは予防的な対策を実施することは困難です。しかしBCPの策定においてはこの外部要因も含めたリスクを検討の対象とします。

 自社に起因するリスクに対しては、何よりもリスクを発生させない、あるいは発生回数を減少させるための施策を立案し、実行することが重要です。そのために、資源(人、物、金など)を準備し、発生防止策を策定、実行することが効果的です。しかしながら、発生防止策の実施だけで問題が解決すればよいのですが、時には想定していた防止策が効果を果たせなかった場合や、策定済みの防止策の実施段階での破綻(はたん)が起こり得ます。

 従って、防止策を策定したリスクに対しても、次項でご説明する事業影響度分析の対象とし、必要な場合はBCPを策定する必要があります。また、リスクには、発生する原因が異なっていても、自社の事業活動に与える現象は同一の場合があります。例えば、原材料の調達先の企業が倒産した場合も、また原材料を輸送している交通機関で事故が発生し物流が停止した場合も、原材料が調達できず自社の生産活動が停止することになります。その場合のBCPは、「原材料の入荷停止」として整理することができます。従って、リスクを洗い出すとともに、自社の事業活動にどのような影響があるかを分析し、整理する必要があります。

 それでは、整理したリスクに対して、自社にはどの程度のリスクが存在するかをどのように明確にするのでしょうか。リスクの大小は、通常、次の計算式による数値で評価します。

  リスク = 発生可能性 × 影響度

 この計算式によって高いスコアとなったリスクが、一般的に対応が必要なリスクであるといえます。しかしながらここではまだこの高スコアの事業活動へのリスクへの対応コストは考慮していません。従って、この段階では事業活動の継続への対応が必要な候補にしかすぎません。

3. リスクシナリオの特定

 リスクシナリオは、リスクが発生した場合の影響、被害を時系列、組織別に整理したものです。またある事態が発生した場合、リスクの整理作業で明確にした事業への影響が、一度に同時期にそろって起きるものと、徐々に起きるものとがあります。前者の例には、大規模な地震の発生で社員への被害や生産設備の損壊が起きた場合があり、後者の例としては、調達先企業のサービス停止で原材料の入荷が停止した場合が挙げられます。原材料の入荷停止を「影響が徐々に起きるもの」に分類する理由は、しばらくは予備、備蓄していた原材料で生産活動の継続が可能だからです。リスクの整理に当たっては、どの部署や業務に対し影響が波及していくのかの整理を行います。いくつかのリスクを整理することにより、BCPの策定に当たってのグルーピングが可能になります。

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