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» 2007年03月07日 12時00分 公開

ユーザー企業から見た「ITSS」(6):進化するITSSと人材スキルを見極める新たな動き (2/3)

[島本 栄光,@IT]

ITスキル標準のカバー範囲はどこまでか?

 さらに、今回のバージョン2では、“ITスキル標準のカバー範囲”を明確にしています。以前のものは、このカバー範囲が明確でなかったが故に、ITスキル標準が「さも万能なものである」と勘違いされるケースもあり、その後、現実を知ってがっかりし、「使えない」と思われてしまうこともあったと思います。

図2:ITスキル標準の汎用レベル

 今回はまず、ITスキル標準が扱うのは、この図の中段で規定している汎用レベルということを明確にしています。逆にいえば、その上にある、特定状況や、製品・プロセスに特化したスキルは、ITスキル標準の対象外であるということ。また、前提となる、ITに限定されない基礎的・概念的なスキルも、ITスキル標準の対象にしないということを明確にうたっています。

 このような範囲をどこまでにするかという点については、いろいろな議論があるかもしれません。しかし、このような標準を公開するうえで、そのカバー範囲を明確にすることは非常に大事だと思います。

図3:活用の考え方

 また、企業によって当然ビジネス戦略が異なるため、ITスキル標準の活用もさまざまです。これは当たり前のことですが、いわゆる“お上の出した基準”となると、それを金科玉条のように必要以上にありがたがり、すべてをその基準に合わせなければならないと考えてしまうケースもままあります。

 そこで、今回は、適用の仕方についても、共通の指標と個別企業の指標に分けて考えるように明記しています。そのうえで、ITスキル標準は実は基準や仕様ではなく、参照モデルであるといい切っています。すべてを必ず使う、そのまま使うという位置付けにはないということを鮮明に打ち出しているのです。多少冷たい感じもしますが、実際に活用するとなると、こういった考えをはっきり示しておくことの方が現実的です。

 おそらく、バージョン1のときにも気付いていた人は気付いていたと思いますが、大きな誤解あるいは認識誤りがあったと思われる部分に対して、今回あらためてはっきりと考えを示したという意味で、大きな進化といえるでしょう。

 このように、『1部概要編』では、バージョン2での変更点と併せて、ITスキル標準を活用していく考え方についても、明確に示して、利活用する人々にはっきりとしたメッセージを送ろうとしているのが分かります。

 以下、いくつか特徴的な項目についてもう少し掘り下げていきたいと思います。

キャリアとスキル

 バージョン2での変更点で大きなものは、キャリアとスキルを明確に切り分けて定義し直した点です。これは、スキル標準そのものを「2部キャリア編」と「3部スキル編」に分けていることでもお分かりかと思います。

 では、このキャリアとスキルを、バージョン2ではどのように切り分けているのでしょうか。

 まず、それぞれの定義は以下のように明示されています。

キャリア:各プロフェッショナルがよりどころとなる専門領域。単に、企業やプロジェクトにおける役割を定義したものではない。

スキル:実務能力。単に要素技術を束ねたものではなく、要素技術をいかに選択し、いかに適用して課題解決の実現ができるかを実務能力ととらえている。

 では、ITスキル標準のドキュメントの中で、キャリアとスキルはどのような関係になっているのか見ていきましょう。

図4:ITスキル標準の基本構造

図5:ITスキル標準の構成要素

図6:構成要素間の関連

 個々の要素についての解説は、ITスキル標準のドキュメントを見ていただくとして、ここでは、その大まかな関係性を見て、感じをつかんでいただければと思います。

 上図のように、キャリアフレームワークをイメージし、その構成要素であるスキルを分解して整理していくと、スキルとしての基本要素に分解することができます。それを集め、まとめたのが、スキルディクショナリです。

スキルディクショナリ:ITスキル標準で定義されているすべてのスキル項目、知識項目を網羅して整理している。スキル項目と知識項目を階層化し、職種と専門分野との対応を一覧形式で示している。

 少々極端にいえば、このスキルディクショナリがITスキル標準のすべての基であり、これを組み合わせていくことにより、それぞれの職種・専門領域が成立していくということです。

 今回のバージョン2でこのような構造化を図ったことが、ITスキル標準をより汎用性の高い、また利活用のできるものに進化させたといえるのです。

ITスキル標準プロフェッショナルコミュニティフォーラム(IPCF)2006

2006年7月7日、前年同様、都内でIPA主催でITスキル標準プロフェッショナルフォーラムが開催されました。ここで、昨年度の各プロフェッショナルコミュニティによるITスキル標準の改善検討成果が発表されました。出席者は500名を超え、昨年よりも規模が拡大しており、ITスキル標準に対する関心の高さがうかがえました。

IPCF2006のサイト


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