ストレージ容量を倍増させられる技術とは?これなら分かるストレージのキーワード(2)(2/2 ページ)

» 2007年03月08日 12時00分 公開
[三木 泉,@IT]
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パフォーマンスは向上する場合もある

  STN-6000シリーズには次のような利点があります。

1. 導入や利用が手軽にできる

 ネットワーク的にいうと、STN-6000シリーズはブリッジとして機能します。従ってこの装置の導入に際してIPアドレス構成の変更は不要です。導入後はデータの圧縮・伸長の作業はすべてSTN-6000シリーズが行うため、ほかの部分、つまりNASやクライアントPC、サーバに何らかのソフトウェアを導入する必要もありませんし、これらのCPUやメモリを消費することもありません。

 導入の際に従来のデータをまとめて圧縮するツールも用意されているため、すでに運用開始しているデータベースに適用することも可能です。

 また、STN-6000シリーズは、圧縮対象となるファイルのメタデータ(属性情報の部分)は圧縮しないので、ファイルのアクセス権設定などの情報は元の状態のまま保たれ、アプリケーションから見ても何も変わりがないように見えます。

2. パフォーマンスが落ちない

 こうした機器でまず気になるのは処理遅延です。米Storewizでは圧縮・伸長による遅延はSTN-6000の前世代に当たる「STN-5000」シリーズでも50〜200マイクロ秒で、ストレージ機器側におけるミリ秒単位の遅延に比べればまったく問題にならないとしています。新シリーズでは新たに、いったん圧縮したデータをディスクドライブに書き込む前に検証する機能が加わりました。この機能を利用しても、ハードウェア処理能力の強化により、NAS側の遅延を大きく下回る数字になっているといいます。

 パフォーマンスが落ちないだけでなく、逆に向上することも期待できるようです。その理由はNASに出し入れされるデータの量が減ることにあります。1つのファイルを読み出すにしても、ファイルサイズが小さくなっているためにNASからの取り出しに要する時間が短縮されます。また、NASのコントローラ部分の処理負荷も軽減されます。

 STNシリーズはインテルのCPUを使ったPCベースの機器ですが、前世代のSTN-5000ででは最上位機種でもCPUはシングルコアプロセッサ、バスアーキテクチャはPCI-Xベースでした。これに対してSTN-6000シリーズはエントリモデルでもCPUはデュアルコアプロセッサ、バスアーキテクチャはPCI-Expressになっています。さらに上位機種では圧縮・伸長用に補助用CPUコアを搭載し、処理能力を上乗せしています。

 もう1つ気になるのはデータの安全性です。何らかの障害が発生したときにデータは守られるのでしょうか。

 まず、STN-6000シリーズでは2台を並列で配置し、冗長性を確保する構成が推奨されています。アクティブ―アクティブ、アクティブ―スタンバイのいずれの構成も可能です。データ暗号化装置では故障によって暗号鍵が失われてデータが取り出せなくなることもあり得ますが、STN-6000シリーズでは鍵を使っているわけではないので、故障した装置の代わりに別の装置を設置するだけで復旧することができます。非常時のためのデータ伸長用ソフトウェアツールも提供されているため、代替機が即座に入手できない場合はこれを使うことが可能です。

 では、NASの障害に対してはどのように備えることができるのでしょうか。まずSTN-6000シリーズにおいてもNASにおけるデータ複製ツールや一般のバックアップソフトウェアを利用することができ、データ保全のための手順は従来どおりで済みます。NASの冗長化構成への対応も、NAS接続ポートとLANへの接続ポートを1対1で固定化してあれば、NASのリンク状態が失われた時点でLANへの接続ポートのリンクも落とすことでこれをLAN側に伝えるため、別接続のバックアップ用NASへの切り替えができます。

 STN-6000シリーズには現在、ライバルと呼べる製品がないため、新ジャンルの製品群として紹介しにくいのが難点ですが、「ネットワーク経由でのストレージでの読み書きをその場で圧縮・伸長するアプライアンス」という発想のシンプルさと導入効果の分かりやすさ、そして使い勝手の良さで今後注目されることは十分考えられます。2007年第3四半期には守備範囲を広げ、ファイバチャネルSANに設置してファイバーチャネル・ディスク装置上のデータ量を減らす製品を提供予定としています。

著者紹介

▼著者名 三木 泉


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