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» 2007年05月21日 12時00分 公開

複数の共謀者による不正をどう防ぐか?SOX法コンサルタントの憂い(2)(1/2 ページ)

前回、筆者は「内部統制には限界があり、経営者が内部統制を無視したら粉飾決算は起こり得る」と指摘した。そして、その解決策として、「経営者が下した重要な決定については、“経営者指示書”を作ってもらい、取締役会へ報告するべき」と提案した。今回は、複数の担当者が共謀して不正を働く場合の対策を考える。

[鈴木 英夫,@IT]

複数の担当者が共謀した場合には、どう防げばよいのか?

 前回、「内部統制には限界があります」という話をしました。例えば、経営者が内部統制を無視したら、粉飾決算は起こります。あるいは、複数の担当者が共謀してしまうと、やはり不正が発生します。

 また、筆者は「経営者による内部統制の無視を防止するため、記録の残りにくい経営者が下した重要な決定については、“経営者指示書”なる文書を作ってもらい、これを取締役会への報告事項としてはどうでしょうか」という提案をしました。

 もしその案を採用していただいたとしても、まだ、もう1つの重要な抜け穴の可能性が残されています。それは、「複数の担当者の共謀による不正」です。これには、どのように対応すればよいのでしょうか。

 対応する考え方は3つありそうです。1つは「統制活動として事前にチェックする項目を増やすこと」。2つ目は「行動規範などの社員教育を行う」。そして最後の1つは、「モニタリングとして事後に効率的なチェックを行うこと」です。

 複数の担当者による共謀に対応する方法

・統制活動として事前にチェックする項目を増やす

・行動規範などの社員教育を行う

・モニタリングとして事後に効率的なチェックを行う

 統制活動として、事前にチェックする項目を増やすには、どの勘定科目に不正が起きやすいかを絞り込まなくてはなりません。例えば、売り上げということでしたら、受注・出荷と売上計上の双方に担当者を複数置いて相互けん制を行うとか、上司の承認を複数の上司による承認とするなどの方法が考えられます。

 交際費でしたら、どうでしょうか。「上司が部下に命じて不正な交際費伝票を書かせ、自分で承認する」というのがよくあるパターンですので、これに対しては、経理部など独立的な部署による審査過程を設けるとか、上司のさらに上司までの承認を必要とするなどに改める方法があります。

 いずれにせよ、こういった形で統制活動を増やすことは、それだけ書類などの処理の工数が増加することになり、人件費や処理に要する時間が増加し、業務の効率性は悪化します。効率性を取るか、より厳格な内部統制を選択するかは、難しい経営判断です。企業は、創造力と効率性の競争の中で業務を遂行しているわけですから、効率性を犠牲にしてまでの厳しい内部統制は選択しづらいかもしれません。

 ほかのアプローチには、「従業員にコンプライアンス教育を行う」とか、「倫理基準や就業規則を守りますという誓約書を提出させる」といった方法も実際行われています。これは、一定の抑止力としては機能しますが、これだけでは、初めから意識的に内部統制違反をしようとしている者にはあまり効果がありません。残念です。

 おそらく効率性から見て、そして抑止力の点からも最も期待できるのが、「モニタリングとその結果によって判明した不正に対して行う処分」の組み合わせでしょう。モニタリングは、通常内部監査部門などが行う事後的なチェック機能のことをいいますが、そのターゲットは、不正の最も起きやすい勘定科目や業務に焦点を絞って行うことができますので、焦点さえ絞れば、それほど膨大な工数を必要としません。

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