[ファルコンストア] バックアップはどう進化できるかストレージ関連ベンダ それぞれの戦略(11)(2/3 ページ)

» 2007年08月01日 12時00分 公開
[三木 泉,@IT]

──CDPやVTLでは、それぞれに特化した製品を提供する競合ベンダがいます。ファルコンストアが統合的なソリューションを提供しているということの積極的な意味とは何でしょうか。

 われわれがまずプラットフォームを開発したのは、さまざまな企業が提供する各種の物理機器、例えば各社のテープドライブや、iSCSI、ファイバチャネル、InfiniBandといった通信プロトコルからの適切な隔離を提供するものが欲しかったからです。

 こうした基盤さえあれば、われわれはサービス機能の開発においてストレージや通信プロトコルそれぞれに対するサポートを気にしなくて済みますし、機器側も、仮想化やアプリケーションなどのサービスのことを気にしないでいいのです。

 素晴らしいことは、VTLを使うにしろ、CDPを使うにしろ、仮想化、レプリケーション(複製)をはじめとした4つの機能が共通に利用できるのです。競合他社を見てみてください。VTLベンダや仮想化製品ベンダ、レプリケーション専門ベンダと称する企業がたくさんいますが、規模の経済をまったく持っていません。1つの機能を製品化しているだけです。小規模なベンダにとって、例えば(バックアップ対象である)Exchange Serverからディスクドライブ上の各セクタに至るまで、すべてを見通せるようなソリューションをつくることは非常に困難です。このエンド・ツー・エンドのビジビリティ(可視性)は、瑣末(さまつ)に聞こえるかもしれませんが、非常に重要です。さらに重要なのは、この可視性を、パフォーマンスや復旧コストの点で犠牲を強いることなく実現することです。われわれの実現している復旧スピードには誰も勝つことができないと、自信を持っていえます。従って、われわれの取った手法には非常に満足しています。基礎がしっかりしているわけですから、家を建てたり、橋をつくったり、空港を建設したりといったことが次々に実現します。

 VTLとCDPの販売代理店に対し、セールストレーニングを実施するとしましょう。すると、われわれなら1日目にまずIPStorを教え、次の日にCDPを教え、3日目にVTLを教えることができます。IPStorに戻ってもう一度教えることなく、2つの製品についてトレーニングできるのです。サポートのことを考えても、別々のアーキテクチャ、管理インターフェイス、システム構築方法、サポート体制を持つ2つの製品を扱うのは、大きな負担です。さらに、われわれの製品なら、リセラーはまずVTLを売り、次の週には同じ企業に対してCDPを提案する、ということも可能です。

 買う側にしても同じことです。もしあなたがCIOなら、2社、3社、4社と多数のベンダを使うよりも、1社に責任を負わせたほうが楽です。複数のベンダを使い分けるなら、インテグレーションも必要になります。しかしCIOであるあなたの仕事はインテグレーションではなく、活用していくことです。

 プラットフォームをベースとした手法は、われわれにとって最初は面倒でした。しかし、いったん構築してしまった後では、あらゆる製品の基礎として機能してくれています。

VTLはストレージ機能として今後も不可欠

──ファルコンストアはVTLをIBMやEMCにOEM供給しているということですが、なぜこれらの企業は自社でVTLを開発せずに、他社からOEM供給を受けるのでしょうか。

 IDC、フォレスターリサーチ、ガートナーなどいずれの業界アナリストに聞いても、VTLがバックアップの質の向上にどう貢献してきたかを語るはずです。VTLはITコミュニティに歓迎され、普及が進んでいます。

 VTLはバックアップに掛かる時間を短縮し、その信頼性を向上する非常に重要なソリューションです。導入に際しても、既存の環境に一切変更を加える必要がありません。バックアップソフトウェアは設定を大きく変更することなくそのまま使うことができます。物理的なテープライブラリ装置が仮想テープライブラリに変わっても、バックアップソフトウェアにとっては違いがまったく分かりません。当社のVTLでは物理的なテープライブラリを100%エミュレートすることができますし、バックアップソフトウェアの振る舞いについては良く知っています。高いレベルの互換性を保つことによって、非常にトランスペアレントなソリューションの提供に成功しています。なにしろ物理テープ装置を追加せずにVTLを活用することで、ユーザーはスペース効率やエネルギー効率を高められ、総体的なコストを減らすことができます。

 VTLはEMCにとって非常に重要です。なぜならディスクの拡販に直結するからです。一方、IBMは物理的なテープライブラリ装置のリーダー的存在であるため、VTLは敵だといえます。従ってIBMは自社の顧客に対し、「VTLは駄目だ」といい続けたいところでしょうが、顧客はVTLが良いということはもう知っています。このため、物理テープライブラリとVTLを一緒に売って、顧客が双方を併用できる環境を提供しているのです。IBMはストレージ機器を売っているので、ディスクがたくさん売れることも同社にとっては重要です。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ