[ファルコンストア] バックアップはどう進化できるかストレージ関連ベンダ それぞれの戦略(11)(3/3 ページ)

» 2007年08月01日 12時00分 公開
[三木 泉,@IT]
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──ディスクを売るという観点では、例えばEMCはアーカイブディスク製品も出しています。アーカイブディスクだけでは不足だということですか?

 ディスクを売る方法はいろいろあるでしょう。しかし、(ストレージシステムベンダにとって)多数のディスクを売る一番簡単な方法はVTLです。バックアップシステムは、最もデータ量の多いシステムです。バックアップは一般的に、ファイルベースで行われています。すると、バックアップを済ませたファイルに何か変更を加えると、そのファイルをもう一度バックアップしなければならなくなります。このため従来型のバックアップにディスクを使うと、たくさんの領域が消費されることになります。これが、EMCのような会社が喜ぶ理由です。

 いま説明したように、VTLは非常に強力ですが、われわれはバックアップソフトウェアがあまりインテリジェントではないという問題も認識しています。そこで、VTLでは次にde-dup(重複排除)機能を投入します。一方、当社のCDPはブロックレベルで実装されており、差分のみを順次バックアップしていくため、de-dup機能はすでに備わっていることになります。当社のCDPはまさに地球上で最も効率の高いバックアップ製品だといえます。

──売り上げの半分をVTLが占めているそうですが、この比率は今後1〜2年で変わっていくと思いますか?

 現在、当社の売り上げの55%がVTL関連で、残り45%はIPStor、レプリケーション、CDPなどです。今後ともVTLとCDPはともに競い合うようにして成長を続けていくでしょう。シェブロンやハリバートンをはじめ、当社の顧客の多くが双方の技術を導入しています。なぜCDPが必要なのかといえば、より優れたバックアップ手法が求められているからです。ではなぜまだVTLが必要なのかといえば、こうした企業には記録保管のためにテープを必要とするアプリケーションがあるからです。どちらもIP時代のデータセンターには不可欠な技術です。

市場にはまだ理解が足りない

──次の目標は何ですか。

 次の課題は、事業の拡張性を高めることです。製品のインフラは十分効率的ですし、販売チャンネルも効率の高いものができていると思います。VTLやCDPを提供していくために、これらを活用していきたいと考えています。目標は、この会社を以前のシャイアン・ソフトウェアより大きくすることです。これを達成したら、また次の目標をお教えします(笑)。

──競合として認識している企業はどこでしょう?

 同格の競合他社はありません。VTLやCDPのそれぞれで小規模の競合企業はありますが、われわれに脅威を与えるほどの規模の競争相手はいません。現在のところ、市場自体が最大の「競争相手」なのかもしれません。つまり、ファルコンストア(の技術や製品)に対する理解のなさを克服する必要があります。技術や製品の観点では、われわれは最高のものを提供しています。唯一の課題は空間的、地理的な壁を越えて、できるだけ多くの人々にファルコンストアのソリューションの良さを伝える必要があります。

──ストレージ仮想化では、EMCやIBMも競合だといえませんか?

 たしかに両社はディスクを仮想化する製品を持っています。しかし、顧客はストレージ仮想化そのものを買いたいわけではありません。仮想化の結果としてのVTLやCDPを買おうとしているのです。オラクルのデータベースと同じです。Oracle Databaseは優れた製品ですが、会計システムや人事システムとして使われてこそ価値があります。当社の目標はIPStorがこれと同様なプラットフォームとなり、その上で各種のアプリケーションが、プラットフォームのパワーを活用するようにしていくことです。

 ユーザーは仮想化自体に興味を持ちません。クラッシュした自社のExchange Serverを復旧させるのにどれだけ時間が掛かるのかを知りたいのです。私が顧客に「仮想化製品をつくりました」と話しても、何のためだと聞かれるのがオチです。しかし、「私の仮想化技術を使えば、あなたの会社のクラッシュしたExchange Serverは7分で復旧しますよ」といえば、それはいくらなんだ、いつ買えるんだと聞いてくるでしょう。顧客の心配事を理解し、これを解消するために仮想化技術を利用することで、この技術の価値を示すことが重要です。7時間ではなく7分で復旧できるんですよといえば、価値ははっきりします。

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▼著者名 三木 泉


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