学術分野などにおけるハイパフォーマンスコンピューティングや、金融、石油・ガス業界などでサーバやストレージの高速接続技術として利用されているInfiniBand。コンポーネント・ベンダとしてこの分野で確かな地歩を築いているメラノックスは、次のデータセンター接続技術をどう見るのか
米メラノックス・テクノロジーズは、サーバとストレージの接続やサーバ間の接続に使われるInfiniBandのアダプタやアダプタ用のチップ、そしてスイッチ用のチップを提供し、急速に伸びている企業だ。2006年度の売り上げは4850万ドル。2007年第3四半期は前年同期比69%増を達成したという。
メラノックスの顧客はヒューレット・パッカード(HP)、IBM、サン・マイクロシステムズ、デル、NECなどのサーバベンダやシスコ、QLogic、ヴォルテア、サンなどのスイッチベンダ、ネットワークアプライアンスやHPなどのスイッチベンダなど幅広い。まさに接続技術としてのInfiniBandの伸びに伴って成長してきた企業だといえる。ただし、メラノックスは単一のチップでInfiniBandと10Gbpsイーサネットの双方に対応しており、複数の接続技術を提供できるというユニークな立場にいる。
サーバやストレージの接続は今後どのように変化していくのか。メラノックスはこれにどう対応していくのか。同社のプロダクトマーケティング担当副社長、サッド・オームラ(Thad Omura)氏に聞いた。
――メラノックスはInfiniBandとイーサネットの両方のソリューションを持っているということですが、この2つはそれぞれどう位置付けられているのですか?
現在の主力ビジネスはInfiniBandです。イーサネットは来年の終わりにかけて市場ができてくるでしょう。イーサネットといっても、当社では10Gbpsイーサネットに絞っていますが、10Gbpsイーサネットの導入例はまだ少ないのが現状です。2008年の中頃から終わりにかけて市場は立ち上がり、2009年により大きな市場に成長すると考えています。
最終的には10Gbpsイーサネットの市場規模は大きなものになるでしょう。しかし同時に、現在の1Gbpsイーサネットと同様なコモディティ・マーケットとなるでしょう。
メラノックスでは今後も、InfiniBandとイーサネットを同一のチップで提供できる唯一のソリューションとして、サーバとストレージのインターコネクトに取り組んでいくつもりです。同一のチップで2つの接続技術を提供することは、当社の顧客(であるシステムベンダなど)にとって非常に大きな付加価値となります。なぜなら、これらの企業はエンドユーザーに対し、InfiniBandと10Gbpsイーサネットのどちらでも選べる柔軟性を提供できるからです。
――イーサネットでは、「データセンター・イーサネット」とも呼ばれるさまざまな新技術の標準化が進んでいます。これについてはどのようなスタンスですか?
おっしゃるとおり、まず「Converged Enhanced Ethernet」(CEE)という規格が標準化作業中で、当社も積極的に参加しています。製品にはすでにCEEの暫定バージョンを実装しています。さらに、Fibre Channel over Ethernetという、標準化途中のもう1つの規格についても暫定バージョンを実装済みです。つまり、当社の製品ではこれらすべての技術を使えるようにしています。
メラノックスが目指すのは、InfiniBandだけでなく、CEEやFibre Channel over Ethernetにおいてもリーダーになることです。一方でわれわれは、ストレージとサーバのインターコネクト技術として、InfiniBandが最高のパフォーマンスと機能を提供し、市場をリードし続けると考えています。
信頼性の高い接続ファブリック、QoSの整備といったCEEに見られる機能は、すでにInfiniBandに組み込まれています。イーサネットのコミュニティがやろうとしているのは、InfiniBandには備わっていてもイーサネットには欠けているような機能を、イーサネット上で標準として持ち込もうということです。当社としてはInfiniBandで実現してきたようなことをイーサネットで実現すればいいので、これらの機能を実装するノウハウは十分持っています。
メラノックスの目標は、ユーザーがInfiniBand、CEE、Fibre Channel over Ethernetのいずれの技術を採用したいとしても、単一のデバイスで対応できるという柔軟性を提供することです。
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