[ファルコンストア] バックアップはどう進化できるかストレージ関連ベンダ それぞれの戦略(11)(1/3 ページ)

PCサーバのバックアップソフトウェアとして、一時期は圧倒的な存在だったARCserveの開発責任者が設立した米ファルコンストア・ソフトウェアは、“バックアップソフトではないバックアップ製品”の提供によって急成長中だ。同社が独特な切り口で取り組むサーバのデータ保護のあるべき姿とは何か。創業者自身に聞いた。

» 2007年08月01日 12時00分 公開
[三木 泉,@IT]

 1990年代に、PCサーバ用のバックアップソフトウェアとして、知る人のいないほどの存在感を示した米シャイアン・ソフトウェアの「ARCserve」。このソフトウェアの開発責任者として知られるレージェン・フーアイ(Rei Jane Huai)氏がその後設立したファルコンストア・ソフトウェアは、継続的データ保護(CDP)、仮想テープライブラリ(VTL)といったサービスを実現するストレージサービス・ソフトウェアを提供し、急速に成長している。当時のARCserveにおける強みの1つは、さまざまな機器との互換性をいち早く確保したことにあった。ファルコンストアも、おもに接続性の部分を担当する共通プラットフォーム「IPStor」を持ち、この上にCDPやVTLをアプリケーションとして載せているのが1つの大きな特徴だ。

 日本支社のファルコンストア・ジャパンは2007年7月中旬、同社のCDPソフトウェアをVMwareのVirtual Applianceとして実装した「CDP Virtual Appliance for VMware Infrastructure」を発売した。「Virtual Appliance」とは、VMwareをインストールしたコンピュータに取り込むだけで動作する、アプリケーションとゲストOS(この場合Linux)が一体化したパッケージのことだ。CDP Virtual Appliance for VMware Infrastructureの機能は、同社がこれまで一般的なソフトウェアとして提供してきたCDPアプリケーションと基本的に変わらない。しかし、新製品ではVMwareを2つの点でうまく活用している。

 1つは、Virtual Applianceにしたことで、インストールや設定が簡単になったこと。VMwareがコンピュータハードウェアの差異を吸収してくれるため、いわゆるインストール作業は不要。さまざまなハードウェア上で設定変更などをすることなく稼働できる。もう1つはこの製品の下で動作するVMwareを活用し、CDPの対象サーバがダウンすると、代替サーバを仮想サーバとして即座に立ち上げられるようにしていることだ。

 一般のバックアップソフトウェアベンダとは異なる切り口でデータ保護・復旧ソリューションを提供するファルコン・ソフトウェア。その戦略につき、創業者であり会長兼CEOを務めるフーアイ氏に聞いた。

プラットフォームの上にサービスを構築する

──ARCserveで知られた米シャイアン・ソフトウェアが米CAに買収され、しばらくしてあなたが自身の会社を始めた際に、最初に考えたことは何ですか?

 生き残ることです(笑)。 最初はコンセプトがあっても製品がない状態でした。しばらくすると製品はできましたがパートナーがいない状態になりました。そしてやっと、コンセプト、製品、パートナーが準備できました。いまでは本当の企業になり、生き残りの段階から繁栄の段階に移ることができたと思っています。

──ファルコン・ソフトウェアの製品は段階的に進化してきたように見えますが、最初に持っていたコンセプトとは何だったのですか?

ALT 米ファルコンストア・ソフトウェア創業者、会長兼CEO リージェン・フーアイ氏

 シャイアンはサーバベースのソリューションを提供するベンダでした。当時は1990年代の前半で、LANが標準でした。しかし2000年までには(ストレージの世界は)LANからSANに移行していきました。そこでわれわれは、ストレージネットワーキングにおける問題を解決するための新しいアーキテクチャや手法が必要だと考えたのです。データ保護のような問題を解決するための革新的なアプローチを提供できるという信念のもとで、ファルコンストアを設立しました。

 サーバごとに(バックアップソフトウェアなどを)稼働するそれまでの手法では、いわゆる「バックアップウィンドウ」(バックアップのためにサーバを停止しなければならない時間)を回避することができません。われわれは、サーバにおけるバックアップの仕事を肩代わりすることで、サーバが本来の仕事に専念できるようにと考えたのです。では、どうすればこれを実現できるか。必要なのはネットワークベースのソリューションであり、IPStorはまさにこのために生み出されたのです。

 IPStorは基礎として仮想化サービス(複数のストレージアレイを単一のものとして扱うなどの機能)を提供しています。究極の目的は、アプリケーションサーバの可用性や信頼性を向上することです。同時に、バックアップによって生じるアプリケーションサーバへのパフォーマンス上の影響を最小化しなければなりません。そこで、IPStor上のソリューションとしてCDPを開発しました。CDPは革命的で非常に強力なバックアップ用のソリューションです。1日に1回ではなく、10回でも、サーバに影響を与えることなくバックアップが実行できますし、復旧作業も5分程度で終えることができるからです。IPStorはわれわれのサービスプラットフォームだといえます。これはVTLやCDPをはじめとした、さまざまなストレージサービスのための仮想化プラットフォームなのです。

 VTLとCDPという異なるサービスを同時に提供している理由は、管理者それぞれに好みがあることを知っているからです。CDPを気に入ってくれる管理者もいます。オープンなネットワーク環境を構築していて、ネットワークベースのソリューションが欲しい管理者にとって、CDPは最適です。しかし、これまでのバックアップソフトウェアを使い続けたいと思っている管理者もいます。そういう人たちにはVTLが適しています。

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