BPMに求められるプロジェクトマネジメント・スキルBPTrends(8)(1/2 ページ)

BPM活動の中でビジネスプロセス再設計は、いわゆる“プロジェクト”となる。ビジネスプロセス再設計プロジェクトのマネジメントに必要なスキルとは何だろうか?

» 2007年08月06日 12時00分 公開
[著:ポール・ハーモン, 訳:吉川昌澄(ウルシステムズ),@IT]

プロジェクトマネージャのスキル

本稿は、米国BPTrends.comからアイティメディアが許諾を得て翻訳、転載したものです。

 今回は、ビジネスプロセス・マネジメントの1つの側面に焦点を当ててみたい。ビジネスプロセス再設計プロジェクトのマネジメント責任を持つプロジェクトマネージャに必要なスキルは何かということだ。特に、ビジネスプロセス再設計プロジェクトを順調に推進し目的を達成するためには何が必要かという点にフォーカスしたい。

 最初に、わたしたちは改善プロジェクトと再設計プロジェクトを区別しなければならないだろう。改善プロジェクトは現存するプロセスをより効率的、あるいは、より効果的に変更するために実施される。シックスシグマはプロセス改善の有名なアプローチであり、その改善業務を管理するのは、時と場合によっては、そのプロセスの日々のマネジメント責任を持つ当人であったり、あるいは、“黒帯”の専門家が率いるチームであったりする。一方、再設計プロジェクトは、望ましい状態で機能していないプロセスに対して、重要な変更を与えるために実施される。再設計プロジェクトの過程においては、業務フローの一部を省いたり自動化して、そのフロー自身を変更する可能性を検討する。再設計プロジェクトは、通常、改善プロジェクトよりも複雑で広範に及ぶため、複雑なプロジェクトを扱うスキルにたけたマネージャが必要となる。

 日々のオペレーションの管理と異なり、プロジェクトマネジメントはプロジェクトの開始があり、一連のステップがあり、最後に成果物を評価する。ビジネスプロセス再設計プロジェクトの場合、具体的な再設計課題のためにプロジェクトチームが編成され、そして、プロジェクト完了時には解散することになる。要するに、プロジェクトマネージャには、日々のオペレーションの管理者とは少し異なるスキルセットが求められるわけだ。

 本稿で、プロジェクトマネージャの基本的スキルにフォーカスするつもりはない。それは、プロジェクトマネジメント協会(PMI)のプロジェクトマネジメントフレームワーク(PMCDF)によく書かれている。PMIはさらに、組織のプロジェクトマネジメントスキルを評価したい人のために、プロジェクトマネジメント成熟度評価モデルを提供している。

※訳注:原文では「Project Business Management Maturity Evaluation Model」と記されているが、組織的プロジェクトマネジメント成熟度モデル(OPM3:Organizational Project Management Maturity Model)を示すものと推測する

 ここでは、プロジェクトマネージャがビジネスプロセス再設計プロジェクトを成功裏に管理するために、特に必要となる具体的な知識について焦点を絞る。

ビジネスプロセス再設計の4つのエリア

 わたしたちBPTrends AssociatesのBPMカリキュラム作成に当たり、ロジャー・バールトン(Roger Burlton)とわたしは、再設計の取り組みが成功するために必要なものは何かということについて、散々議論してきた。当初、わたしは、ゲリー・ラムラー(Geary Rummler)と同じ意見を論じていた。そして、何年かにわたり、わたしは多数の企業をコンサルティングし、ビジネスプロセス再設計プロジェクトを率いるスキルのあるプロジェクトマネージャとスキルのないプロジェクトマネージャの両方を見てきた。

 その結果、わたしは、BPMプロジェクトマネージャが理解しなければならないこととして、ビジネスプロセス再設計の4つの重要なエリアに的を絞ることになったのだ。(1)プランニングとスケジューリング、(2)分析と設計、(3)インタビューとファシリテーション、そして、(4)コミュニケーションと変更管理である。

■プランニングとスケジューリングプランニングとスケジューリング

 最初の重要エリアは、プロジェクトのプランニングとスケジューリング、そしてプロジェクトチームの編成である。ここでは、プロセス再設計方法論がフェイズを定め、各フェイズで誰を巻き込むべきかを示唆してくれるため、プロジェクトマネージャの仕事は大いに簡易化される。

■分析と設計分析と設計

 第2の重要エリアは、分析と再設計技術の基礎知識であり、再設計チームがプロジェクトの過程で活用することができる。このエリアは最も複雑であり、プロジェクトの特徴により変化する。複数企業間のサプライチェーンの再設計のような大規模プロジェクトにおいては、小規模の再設計の取り組みとは異なる技術が必要となる。自動化に必要となる技術に関しても、単にインセンティブシステムが原因と考えられる問題に取り組む場合と、日々のプロセスマネージャが業務を遂行するメンバとのかかわり方を変更する場合とでは異なってくる。プロセス再設計に取り組むプロジェクトマネージャなら誰しも、1〜2のプロセス分析と再設計の教育コースを受講すると良いであろう。

■インタビューとファシリテーションインタビューとファシリテーション

 第3の重要エリアは、BPMインタビューとファシリテーション技術である。ここでも、かなりの範囲で一般的な技術が利用できるが、BPMプロジェクトに従事する人に非常に有益な特別の技術が存在する。このエリアは分析と再設計の技術と深く関連しているが、収集したデータが理解しやすく、かつ、正確であるためには、どのような情報が必要で、どのような質問をすべきで、どのリソースについて当たらなければならないかを知っていることが重要である。

■コミュニケーションと変更管理コミュニケーションと変更管理

 第4の重要エリアは、BPMコミュニケーションと変更管理の課題である。ここでもまた一般的な技術が重要であり、プロジェクトマネジメントまたはBPMのどちらに従事する者にとっても変更管理の一般コースが有益である。しかし、また、BPM特有の観点もあり、プロセスのプロジェクトがよく出合う障壁のタイプや、いつどうやってほかのグループと交渉すべきかに関して知っておくことが有益である。

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