これらすべての内容を明確化するために、BPTrendsアソシエイツのプロジェクトマネジメントに関するワークショップから抜粋した図1を参照してほしい。図1は、BPTrendsアソシエイツのBPM再設計方法論におけるフェイズ1の全体像を示す。このダイアグラムは、一般的な再設計への取り組みのフェイズ1における基本的なステップを示す。ほかのグループは多少異なる呼び方のフェイズを唱えるかもしれないが、誰でも以下のフェイズが必要なことに異論はないであろう。理解または計画、分析、再設計、実装、そして展開である。ほかのグループでは、多少異なる第2レベル・第3レベルのアクティビティを強調するかもしれない。
ここで強調したいキーポイントは、汎用的なフェイズや第2レベルのフェイズの話ではない。それらのフェイズが、スイムレーン上に記述されているという点である。
図の左側に、プロジェクトに関与すべきいくつかのグループが挙げられている。プロジェクト計画の最初では、プロジェクトマネージャとチームが、そのリストをレビューし、追加を行う。ほとんどの場合、特定のマネージャの名前がスイムレーンに記され、そのプロセスの変更に関心のあるステークホルダーすべてが挙げられる。ひとたびプロジェクトの潜在的な参加者全員が特定されれば、引き続き、プロジェクト期間中に発生する第2レベル・第3レベルのアクティビティそれぞれについて、誰を関与させるべきかを検討することができる。
われわれは基本的に、ダイアグラム上のアクティビティの長方形を修正して、誰がどのアクティビティに含まれるかを表現する。いくつかのアクティビティは、単にすべてのプロジェクトマネージャがプロジェクトを計画する際に行うことだ。しかし、いくつかは、ビジネスプロセス再設計の取り組みにおける特別なタスクを示している。
また、アクティビティの色は、重要エリアまたはアクティビティのゴールを示している。いくつかのアクティビティはデータ収集のためのインタビューを含む。これらは、再設計すべきプロセスの理解のために実施される。われわれは、例えば、現在あるがままのプロセス(As-Is プロセス)とマネジメントが思い描くプロセス(To-Be プロセス)との間の差異を理解するように努める。また、どのアクティビティがプロジェクトに含まれ、どれが含まれないかを定めることにより、われわれの取り組みのスコープを決定するように努める。これらの分析的なアクティビティは、通常、プロセス再設計の入門教育における重点ポイントとなる。
しかしながら、そのほかのアクティビティも同様に重要である。例えば、ビジネスプロセスを変更するプロジェクトが成功を収めるためには、プロセス変更により業務に影響を受けるシニアマネージャのコミットメントが必須である。さらに、もしプロセス変更により、従業員の日々の会社生活や存在が脅かされると感じたとすれば、それは容易には受け入れられず、結局、実現されないであろう。つまり、再設計プロジェクトにはコミュニケーションに注力するプロジェクトマネージャが必要であり、さらに効果的なコミュニケーションのためには、そのプロジェクトマネージャがチェンジマネジメントの基本とその特定プロジェクトに属する異なるステークホルダー間の関係構築のための特効薬について理解していることが求められる。
しかし、それだけでは不十分だ。プロジェクトチームもコミュニケーションするのだ。コミュニケーションの実施に先立って計画されなければならないアクティビティがある。いくつかのインタビューは情報を引き出すために実施される。そのほかのインタビューは検討内容を参加者に伝え、潜在的な抵抗感の兆候を引き出すために実施される。いくつかのセッションはシニアマネージャたちのコミットメントを獲得するために実施され、そのほかのセッションはそのコミットメントを有効な後押しとして実践に移すために実施される。同様に、従業員と開催されるセッションは、プロジェクトチームが検討している目的と代替手段を彼らに理解させるために実施され、そして、彼らの参画を得るために実施される。それが望ましい場合には新メンバをプロジェクトチームに参画させ、プロジェクトを通してその代表者の関心事を検討していく。
ここでは、ビジネスプロセス再設計プロジェクトのマネジメントに必要なスキルを駆け足で議論した。プロジェクトマネージャに必要な知識の多くは一般的なプロジェクト管理の経験から得られるが、優れたBPMプロジェクトマネージャに求められる知識のいくつかはBPM固有のものである。BPM再設計において、優れたイニシアティブを握るために望ましいフェイズを知っておくことにより、プランニングやスケジューリングをはるかに効果的に実施できる。また、プロセス変更により生じる抵抗勢力の種類を知り、そしてプロジェクトに参加させるべきグループを把握しておくことにより、さらに効果的に計画できるだろう。もちろん、最後に、取り得る分析・再設計技術の範囲を把握し、コスト効率の良い変更方法の種類を知り、極めて困難な変更の種類について知っておくことが、プロセス再設計プロジェクトの成否を分けることになるだろう。
プロジェクトマネージャとしての経験が豊かなチームリーダーは、ビジネスプロセス再設計チームに恩恵をもたらす。さらには、BPMに関する啓蒙(けいもう)活動が企業全般に及べば、それは企業のためにプロセス再設計に携わるプロジェクトマネージャに対して、強力な支援となるであろう。もし、あなたがマネージャで、この先2〜3年以内に成功を収めたいと思うのなら、BPMとプロジェクト管理の両方の基礎をマスターしておくべきだろう。
では、また。
ポール・ハーモン
Original Text
Harmon, Paul. "BPM and Project Management," Email Advisor, Business Process Trends, Volume 5, Number 9, May 15, 2007.
ポール・ハーモン(Paul Harmon)
ビジネスプロセスに関する情報提供を行うBusiness Process Trends(BPTrends)の創立者/エグゼクティブエディター。Enterprise Alignmentの創立者/チーフコンサルタント。
吉川昌澄(よしかわ まさずみ)
ウルシステムズ株式会社 ディレクター。
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