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» 2007年08月20日 12時00分 公開

ビジネスプロセス改革と3つのイノベーションBPTrends(9)(1/2 ページ)

「イノベーション」はビジネス界で頻繁に使われる言葉だ。しかし、単純に「プロセス改革」「製品改革」だと理解するだけでは、これから登場するさまざまな情報を読み解くことはできない。

[著:ポール・ハーモン, 訳:高木克文(日本能率協会コンサルティング),@IT]
本稿は、米国BPTrends.comからアイティメディアが許諾を得て翻訳、転載したものです。

 突如として、「イノベーション」がホットな用語になっている。最近、ビジネス出版業界が取り上げる流行語として、アジャイルとエクセレンスに取って代わった。この6カ月間を振り返っても、イノベーションに関するかなり多くの書籍が出版された。

 ビジネスウィーク誌 2007年6月11日号では、イノベーションに関する特集が組まれた。「スリーエム社では、シックスシグマ活動のためにイノベーションが阻害された」という内容のカバーストーリーを掲げている。BPTrendsでも、イノベーションに関するいくつかの論稿を取り上げた。現在も、イノベーションの諸側面に焦点を当てた2つのコラムを掲示している。

 ここでいったん後戻りして「イノベーションとは何か」という問い掛けとともに、さらに「それが、どのようにプロセス改革と関連付けられるのか、それを明らかにできるのか」に焦点を合わせた考察を行うことも価値を持つかもしれない。前述のような関心の高まりを受け、このように考えて本稿の筆を執った。

企業に不可欠な“イノベーション”

 メリアムウェブスター社のカレッジエート英語辞典によれば、イノベーションは以下のような事柄を包含する。

  1. 新しい何かを取り入れること
  2. その新しい何かとしては、アイデア、メソッド、あるいはデバイスが想定される

 オックスフォード英語辞典の解説によれば、斬新な物事の導入を意味するラテン語に由来する言語であり、英語で今日のような意味を持つ用語として初めて用いられたのは、1927年であった。

 明らかに、ここでは新しいコンセプトについて言及していない。

 同様に明らかなのは、企業が常にイノベーティブであろうとしてきたことだ。企業家は新しい何かを創造し新しいビジネスを立ち上げる。マネージャは、新しいプロセスの導入に際しイノベーティブである。マーケティング部門はユニークな広告キャンペーンの展開においてイノベーティブであり、新製品開発部門は、新技術を駆使した新製品/サービスの創出においてイノベーティブである。

 現代マネジメント理論の先駆者、ピーター・ドラッカー(Peter F. Drucker)が「Innovation and Entrepreneurship」(※1)と題する著書を出版したのは、1993年のことであった。以降、多くのビジネス論者が、このテーマに関する文献を著してきた。

【参考書籍】
※1 「イノベーションと企業家精神」 ピーター・P・ドラッカー=著/上田惇生=訳/ダイヤモンド社/2007年

 ドラッカーは、「企業家にはイノベーションが必要である」と論じた。急速に変化する世界においては、あらゆる企業が生存のためにイノベートしなければならない……。今日ではたいていの著者が、こう説いている。

プロセスイノベーションの3カテゴリ

 プロセス改革の一環としてのイノベーションという視点にもっと狭く限定すれば、最近の文献を、大ざっぱに3つの基本カテゴリに分類できよう。

 1つは、創造性を強調し、ブレーンストーミングそのほかの関連技法を重視する流れである。それらの技法は、チームメンバーに、あるタスクを完遂するための代替的方法について考えさせるのに利用できる。この流派は、クリエイティブ・シンキング派として総括されるかもしれない。

 第2の流派は、ロシアの理論家であるゲンリック・アルトシュラー(Genrich S. Altshuller)の研究成果を起源とする。これはシステマティック・アプローチあるいは“エンジニアリング”アプローチともいうべきもので、TRIZと呼ばれる。この技法は問題を吟味し、新しい可能性を生み出すのに活用できるものだ。

 TRIZは、発明に関する問題解決理論とでも表現できるような概念を意味するロシア語の頭字語で、本来は特許分析業務との関連で開発されたものであった。ハワード・スミス(Howard Smith)は、YouTubeサイト(※2)にアルトシュラーの映像を掲示するとともに、彼の理論について解説している。また最近、BPTrendsにすばらしいコラム・シリーズを寄稿し、プロセス再設計に関連してTRIZをどのように適用できるかを示してくれた。

【参考リンク】
※2 YouTube

 プロセス改革との関連でイノベーションという用語を用いている第3の主流を率いるのが、イノベーションの重要性について書いたマイケル・ハマー(Michael Hammer)だ。その好例が、彼がハーバード・ビジネスレビュー誌(HBR) 2004年4月号に寄せた論述、「Deep Change: How Operational Innovation Can Transform Your Company」(※3)である。ハマーは、イノベーションを改善と対比し、次のように説く。

 「単に既存プロセスの改善を望むだけという場合がある。そして、ビジネスのやり方をイノベートし完ぺきに変えたいと望む場合もある」。換言すれば、ハマーは、イノベーションをリエンジニアリングの同義語として用いているのだ。

【参考リンク】
※3 邦訳:企業を進化させる組織力 オペレーショナル・イノベーションの競争優位(DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー 2004年8月号)

 イノベーションはプロセス改善とプロセスリデザインを区別する、という主張を耳にしたことがあった。ハマーは、イノベーションはリエンジニアリングと、プロセスリデザイン/改善のいずれをも区別する、といいたいようだ。われわれは、これを特に妥当性の高いガイドとは思わない。

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