BPMプロジェクト成功の鍵[3] - ROIの検討BPTrends(11)(1/3 ページ)

BPMプロジェクトの実施に先立って、その投資対効果が検討されるだろう。そこではBPMテクノロジがどのようなメリットをもたらすかを、詳細に見積もらなければならない。

» 2007年09月10日 12時00分 公開
[著:デレク・マイヤー, 訳:高木克文,日本能率協会コンサルティング]

ステップ3:ビジネスケースの作成

本稿は、米国BPTrends.comからアイティメディアが許諾を得て翻訳、転載したものです。

 推進委員会を開くまでに、パイロットプロジェクトに関する問題点、課題、さらにはアウトカムを列挙した“コンセプチュアル”ビジネスケース(※2)概要が準備されることが多い。それを取りまとめるのは、ワークショップの運営メンバーである。プロジェクトが正式に認可される前には、より詳細で包括的なビジネスケースの提示が求められる。選定したパイロットを後押しするため検証作業であることを前提にすれば、その概要が、詳細版を作成するための基礎資料となるであろう。

※訳注2:ビジネスケース=投資に先立ち作成する投資対効果の研究レポート

 一方、得られるベネフィットが極めて明確でリスクも比較的低い(例えば、部門単位のROIが十分に期待できる)という見通しが示せれば、すでに実施の承認を得たのと同然である。ビジネスケース作りにしっかり取り組み期待ベネフィットを文書化することは、ベストプラクティスの観点からも得策である。これが、その後の評価基準として価値を発揮する。すなわち、常に焦点をそらさずスコープクリープを回避するための指針となるのだ。

 詳細版ビジネスケースでは、現在の業務のやり方と代替案がもたらすベネフィットに関する、合理的で実際的な説明が求められよう。それには、改革によって得られる機会や既存の組織構造がさらされている脅威の本質的把握が必要だ。より素早く機敏に行動する競合他社が機会領域での主導権を掌握すれば、自社の市場シェア喪失と利益低下を招く。そこに脅威の源がある。

 意思決定者の心をつかむためには、彼らに自社ビジネスを取り巻く現実を分かりやすく伝える内容のビジネスケースでなくてはならない。それには、各社が提示する企業価値とコストに関する競合比較情報を、可能な限り取り込むべきだ。幸いなことに、今日では、Webに掲載される年次報告書その他の公開情報源を通じ、多くの外部情報が入手できるようになった。

 ビジネスケースで重要なのは、その内容が組織の設定する主要ビジネス目標(KBO:Key Business Objectives)と緊密に結び付いていることだ。そして、それらのKBOを裏付ける評価測定指標とベンチマークに照準を合わせる。

 ビジネスケースには、直接対象領域と競合他社を出し抜く可能性を秘めたすべての領域における改善機会を把握することが求められる。それぞれの改善機会については、どのようにすれば変革が達成できるか、それに関連してどのようなリスク要因を想定しているか、を示さなければならない。可能であれば、リスク低減のための方策についても明示しておくべきである。

■評価測定指標評価測定指標

 たいていの優良企業には、すでに、明確な長期目標(KBO)がある。しかし、それらの目標の達成に向けた個々の社内評価測定方法間の関係が不明確なことがある。ビジネスケース作成の一部として、対象領域における既存の評価測定方法を見直すとともに、自社のKBOに整然と対応した主要パフォーマンス指標(KPI)を設定することを勧めたい。

 企業が持つ指標は、一般的に、あまりにも多過ぎる。しかも多くの場合、KBOあるいは戦略との間に整合性を欠く。多過ぎる指標を持つ結果として生じるのは、何が重要かを社員がすぐに見失うという状況である。単に取り組むべき目標が多過ぎるためでしかない。これが不必要な混乱と複雑性に結び付き、プロジェクト・リスクを増大させる。

 指標全体をKPIと確実に連結させること、さらには、そのKPIと主要ビジネス目標との間に整合性を持たせることが重要なのだ。

 一例を挙げれば、英国の某大手小口取引銀行が、実に数百に及ぶ、微妙に異なる指標が社内に存在することに気付いた(しかも、130種類もの改革プログラムが全社的混乱を引き起こしていた)。それらの指標を分類した結果、比較的小さな指標とベンチマークのセットに整理され、全社内のパフォーマンス評価に合理性を持たせることができた。

 たいていの大手企業が、同様の経験を持つのかもしれない。多彩な改革活動から生じた数百種もの評価測定方法が存在し(いまも使用されているものもあれば、そうでないものもあろう)、それらの大半が重複し無意味になっている状況だ。

 既存のパフォーマンス評価測定指標とベンチマークを見直すこと──通常、それが、BPM実施対象として設定した領域における目標の、かなりの簡素化に結び付く。パイロットプロジェクトの最終目標が顧客サービスの改善であるとすれば、顧客の現実的要望に合わせた指標を重視しなければならない。それが、総合的パフォーマンスを、最も大きく左右することになるからだ。

 いったんプロジェクトを完了すれば、その過程で用いた手段をレビューし、BPMプロジェクトで汎用的に適用できる指標に関するガイドラインを作成してほしい。

 ビクター・バゼリ(Victor Basili)とその仲間が開発したGQM(Goal Question Metrics)法は、前述の整合性を確実にするための方法論として役立つ。その成果として得られるのは、測定データを解釈するために設定した課題項目とルールに照準を合わせた測定システムの仕様である。個々の目標が、対象課題を主要コンポーネントに分割する、いくつかの設問によって明確化される。そして、さらに、個々の設問が評価指標に転換されるのだ。指標には客観的なものもあれば、主観的なものもある。この手法に関する、より詳しい情報については、Web上(※)で参照することができる。

 以下の設問は、測定指標の有効性を検証するのに役立つであろう。

  • 目的・仕様 - その指標は、どのような目的に役立つか。誰が、その指標を用いるのか。それは、主要ビジネス目標(KBO)と連結しているか。
  • 運用の手間とコスト - データをどのように収集し、用いるのか。その指標の運用には、どれほどのコストが掛かるか。その指標の導入に際し、どの既存指標を削除あるいは修正するべきか。
  • 報奨システムと従業員の行動 - その指標は、従業員の適切な行動を助長するか。従業員には、どの程度のフィードバックが支給されるのか。

 個々の指標に関しては、ある時点にビジネスの中で起きている現実を把握しなければならない。可能であれば、その現実を、競合企業のそれと比較・対比する。そして、把握した現状に基づき、各指標について、なるべく高く、しかし現実的な目標を設定するのだ。

 測定指標と、それに伴うベンチマークの重要性は、いくら強調しても足りることはない。後に関係者に成果報告を行うことになれば、プロジェクトのメリットを疑問視しているメンバーに納得させるための基本的数値が欠かせない。ここでの最大のポイントは、自社のKBOと直結した指標に焦点を合わせることである。

■ベネフィットの拡大

 ベネフィットについては、ハード・ベネフィットとソフト・ベネフィットの双方を明確に示さなければならない。従業員数で除した創出価値を基礎に生産性を定義しておけば、ハード・ベネフィットはとらえやすい。一定の価値創出のために投入する従業員数を減らせば、生産性は向上する。

 一方、ソフト・ベネフィットには、通常、俊敏性や価値要因的な表現が用いられる。それらの定量化は実に困難であるが、ハード・ベネフィットと同等の重要性を持つ。

 ソフト面の把握には、従業員、顧客、およびサプライヤーを対象とする調査とインタビューが有用である。この対象を、大口・親密顧客だけに限定するようなことがあってはならない。少数派の賛辞に光を当てることではなく、マジョリティの真の経験を明るみに出すことが目的だからだ。また、すべてのソフト・ベネフィットについて、それらがどのようにハードな金額目標(通常はKBOについて設定される)の達成に寄与するかが伝わるように表現するべきである。

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