BPMプロジェクト成功の鍵[4] - 支援獲得と実行組織BPTrends(12)(1/2 ページ)

BPMプロジェクトの成功には、経営トップからの理解・支援と、プロジェクトを実行する機能横断的BPMチームが必要だ。その方法を見ていこう。

» 2007年09月13日 12時00分 公開
[著:デレク・マイヤー, 訳:高木克文,@IT]

ステップ4:エグゼクティブ・スポンサーシップの獲得

本稿は、米国BPTrends.comからアイティメディアが許諾を得て翻訳、転載したものです。

 BPMプロジェクトに携わる人たちが抱く共通の懸念は、シニア・エグゼクティブのコミットメントの獲得に際して予期される困難である。プロジェクトは、組織内のさまざまの領域と個人から発案される。まず、組織を主要ビジネス目標(KBO:Key Business Objectives)の達成に向けて前進させることが必要だと認識したエグゼクティブ・ボードから持ち出されることがある。また、ビジネスライン(LOB)、あるいはIT部門さえもが提案してくることもある。しかし、プロジェクトの出所がどこであっても、スポンサーかつ支援者(チャンピオン)となってくれるエグゼクティブの確保が重要であることに変わりはない。

 エグゼクティブ・スポンサーがいなければ、それに起因する一連の問題が生じる可能性があり、プロジェクトのリスクも増大する。BPMプロジェクトマネージャ(次ページ「ステップ5:BPMプロジェクトチーム編成」の項を参照)は、プロジェクトに関連するビジネスマネージャの巻き込みに苦労することになるかもしれない。トップからの明確な指示がなければ、ビジネスライン部門はすぐにプロジェクトに対する関心を失い、推進期間中であってもリソースをほかの活動に振り向けるような事態も考えられる。

 逆に、適切なエグゼクティブ・スポンサーを得て、プロジェクトが成功裏に完了したとする。彼は、その成果の経営者層に対するPRに一役買い、将来のBPMプロジェクトによるイノベーションを促進するための触媒的役割を演じてくれるであろう。

 一般的には、COOCEO、LOBマネージャ、シニア・バイスプレジデント、ビジネスユニット・マネージャ、あるいはディレクターといった肩書を持つ役職者(ここでは集合的にエグゼクティブと総称)が、このスポンサーの役割を担う。

 あり得るシナリオのすべてについて言及することは不可能である。従って本項では、スポンサーシップにかかわる主要課題のいくつかに絞り、論じることにしよう。

■エグゼクティブの特性を知れ!

 プロジェクトの成功に必要なハイレベルのコミットメントとスポンサーシップを得るためには、エグゼクティブによる「知的」納得が欠かせない。ビジネス上のインパクト、および自社の戦略目標に向けて組織を動かすのに当該アプローチがどのように役立つのかの提示が、ここでのコア戦術である。

 エグゼクティブたちは、通常、独特のスタイルを持ち、個人的に重視する課題(いわゆる「ホットボタン」)を抱えているものだ。それらを十分にわきまえたうえで事に当たることが、極めて重要である。人間は目前のアプローチ(プロセス)に多くのエネルギーをつぎ込む。それと同時に、現状を脅かすような動きを拒絶する習性を持つものだ、ということを念頭に刻み込んでおかなくてはならない。

 従って、各エグゼクティブが担当する部門について語るときには、相応の注意を要する。部門内業務に見られる重複や非効率について綿密に述べるのではなく、課題を機会としてとらえて提示するべきである。否定的で対立的な姿勢を避け、エグゼクティブの目を機会に向けさせ、彼らを新ビジョンの実現に的を絞ったコラボレーションに引き込むことが重要なのだ。

 エグゼクティブがどのように意思決定を行うかを理解するには、彼らが日常的に努めているやり方に留意しなければならない。個々のエグゼクティブは、通常、信頼を置く中核幹部グループを持っているものだ。彼らは、そのエグゼクティブ傘下のビジネスユニットや機能グループに所属し、意思決定を補佐する。プロジェクトを議題に乗せ承認を得るためには、こうした影響力を持つ人間(インフルエンサー)に接近し、彼らを巻き込む努力を続けることが重要である。

 エグゼクティブの関心を得るだけでも、1つの挑戦であろう。恐らく、多くの既存の組織活動が、BPMプロジェクトと競合することになる。たいていの企業では、実に数百ものプロジェクトとスキームがばらばらに存在する。実際には、これが対話の良いスタートポイントになるかもしれない。これらのばらばらの変革プログラムを1つの傘の下に統合できれば、部門内の混乱の減少と、既存の評価指標の整理が促進されるであろう。

■“最前線を体験してもらう”ことが有効“最前線を体験してもらう”ことが有効

 では、どのような戦略が有効なのだろうか。業界の趨勢(すうせい)と競合他社の戦略に関するエグゼクティブの理解を深めることは、常に意義を持つ。この場合、関連するケーススタディ、参考文献、書籍などの引用も役立つかもしれない。しかし重要なのは、現実に自社で起きている事柄に関する理解を深めてもらうためのリアリズムを欠かさないことだ。

 その1つのアプローチが、「受注担当者としての1日」を体験してもらうプログラムだ。実際に部門内を歩き回り、そこで起きる事象を追跡する。例えば、某大手保健会社では、1件のヘルスケア・クレーム処理の完了に平均7.6日をかけていた。試しに2人のシニア・マネージャが同じクレーム処理に就いたところ、正規担当者を尻目に、わずか45分で済ませてしまった。

 あるアメリカの大手銀行では、顧客の見方に関するシニア・エグゼクティブの理解を深めるための活動を開始した。毎月2時間、顧客サービス担当者と同席し、自社に対する顧客の実際の発言に耳を傾けることがシニア・エグゼクティブの責務となった。社員との定期的「タウンホール・ミーティング」を開催している企業もある。

 換言すれば、エグゼクティブが戦場で実際に起きていることを体験し、それがビジネスに与えるインパクトを見る場を提供するということである。過去にさかのぼれば、「職場めぐり(ウォーキング・ザ・ジョブ)」という名称で知られていた。シニア・マネージャが時間を取って社員と同席し、最前線で直面する課題の実態を、より明確に把握するのである。

 バンクオブアメリカでは、活動の開始に際し、エグゼクティブチームを対象とする3〜6カ月間の研修と気付きのための講座を設けた。プログラム作成は、改善チームで行った。この講座は一種の「プロセス入門編(プロセス101)」であり、その目標は、顧客の理解と顧客重視の姿勢を助長することであった。参加グループが2つの重要指標として主眼を置いたのは、顧客満足サイクルタイムであった。BPMチームは、企業価値と快適で一貫性のある顧客経験の牽引車は自社プロセスにほかならない、という事実を強調するように努めた。よくデザインされたプロセス、サイクルタイムの短縮、および顧客満足度向上の間にある、ごく当たり前の関係を実証することができたのは、そのうえでのことであった。2つの重要指標における改善が、活動の推進に弾みをつける原動力になったのだ。

■具体的、定量的にリターンを示せ!

 組織がKBOを達成するうえで、そのプロジェクトがどれだけ貢献できるのか。それを示す金銭的リターンも強調しなければならない。

 経費削減や価値イノベーションはどこからもたらされるのか。ライバルを出し抜く機会がどこにあるのか。議論の核心部分では、これらについて説明し、どのようにすればこの改革が実現できるのかを詳細に述べなければならない。

 コスト削減に関する総論的解説は避けよう。具体例を挙げ、具体的改善策を示すべきである。こうすることで、より定量的で現実的な内容になり、改善機会に対する関係者の理解が深まるであろう。同時に、リスクを明確にし、それらの可能性を最小限に抑制するための方策を示すべきである。

 BPMプログラムの長期的継続のためには、一連のステージゲートを設け、各部門をそのステージに乗せるための周到な計画が必要なのだ。

 エグゼクティブとLOBマネージャには、それぞれに課せられたパフォーマンス目標があることも心得ておいた方がよい。BPMプロジェクトとそれを支援するテクノロジ・スイートは、彼らが目標を達成するために有効に活かせるであろう。従って、彼らが抱える課題を把握しておきたい。彼らに、BPMがいかに優れたメカニズムを備えているかを理解してもらうのだ。

 コンプライアンスを確実にし、オペレーション上のリスクを低減しながらも、企業の俊敏性を高め、ビジネスをやりやすくする。そして、高いパフォーマンス(より少ないリソースによって、より高い成果を、より迅速に達成すること)をもたらすメカニズムなのだということを。

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