UMLとBPMN、それぞれのビジネスモデリング実践! UMLビジネスモデリング(4)(2/2 ページ)

» 2007年08月10日 12時00分 公開
[内田功志システムビューロ]
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同期と分岐を表現する

 続いて、「材料を仕入れる」というビジネスユースケースを使って比較をしてみましょう。

 まず、アクティビティ図では以下のようになります。

ALT 図4 アクティビティ図:材料を仕入れる

 並行処理が含まれていますが、アクティビティ図の場合は、フォークとジョインという黒いバーで並行処理であることを表現します。また、分岐がありますが、分岐条件はお互い必ず排他になるように設定する必要があります。

 さて、ワークフローの内容です。まず、仕入れ担当者が業者に対して金額と納期を問い合わせます。この仕入れ担当者は、経営者夫妻のうち、実際に仕入れを行ういずれかの人、ということになります。2人で分担しているのなら、そのとき仕入れを行う人が「仕入れ担当者」になります。

 業者は当然、金額と納期を調べてそれを提示します。今回のケースでは2社に問い合わせて、安かったり納期が短かったり、条件や優先順位に応じて業者を選定します。なじみの業者がある場合は、そちらに先に問い合わせて、こちらの都合に合わない場合は別の業者を当たる、というモデルになるでしょう。または、なじみの業者1社としか付き合わないなら、納期などを相手に合わせて発注するといったことになるかもしれません。

 発注に対して業者はそれを受注し、材料を用意して出荷納品します。仕入れ担当者はそれを受け取って、または受け取りを確認して、その時点で「材料を仕入れる」は終了します。

 これをBPMNで表記すると、以下のようになります。

ALT 図5 BPMN:材料を仕入れる

 BPMNはもともとそれぞれのレーンが独立していて、メッセージなどで同期を取りますので、アクティビティ図のようなフォークやジョインといった記述は必要ありません。また、BPMNでは異なる種類の分岐がいくつか用意されています。排他だけではなく、ANDやORなどもありますので、排他である場合はそのことを明示する必要があります。

タイマイベントを扱う

 最後に、タイマなどの時間によるトリガの扱いを見ていきましょう。「洋菓子を作成する」というビジネスユースケースを使って比較します。

 まず、アクティビティ図の場合は以下のようになります。

ALT 図6 アクティビティ図:洋菓子を作成する

 この図は、タイマからタイムイベントでワークフローが起動されることを表しています。そのワークフローの流れを見ていきましょう。まず、営業日ならその日の始まりをトリガに洋菓子の作成が始まります。レシピを用意し、材料を用意します。材料を用意する段階で材料が設定している量を下回ったら、「材料を仕入れる」ことになります。

 最後に、レシピにしたがって洋菓子を作成していきます。販売を予定していた分すべての洋菓子を作成したら、「洋菓子を作成する」は終了です。

 このワークフローは、BPMNでは以下のようになります。

ALT 図7 BPMN:洋菓子を作成する

 BPMNでもタイマレーンを作ってそこから起動するという表現もできますが、BPMNの場合はビジネスアクタなどを意識することはないので、ここではタイマレーンをあえて外しました。

アクティビティ図とBPMNの使い分け

 今回はUMLのアクティビティ図とBPMNの比較を行いましたが、どちらも同様の流れを表現できることが分かりました。アクティビティ図は複数のレーン同士の協調動作を表現しますが、BPMNは独立したレーン間でメッセージなどを使って協調するといった、より実際のビジネスに近い表現ができるようになっています。

 ただし、われわれの方法論ではアクティビティ図でも十分にビジネスの流れをつかむことはできますので、アクティビティ図で特に支障はありません。もちろん、BPMNを使ってはいけないということはなく、BPMNによるほかの解析などと組み合わせて使うことも可能です。

 UMLのアクティビティ図とBPMNは、状況に応じて使い分ければよいのではないかと思います。柔軟な思考はモデリングにとって重要です。

(注1)UML

(注2)BPMN

筆者プロフィール

内田 功志(うちだ いさし)

システムビューロ 代表。日立系のシステムハウスで筑波博に出展した空気圧ロボットのメインプログラマを務め、富士ゼロックス情報システムにてオブジェクト指向の風に触れ、C++を駆使して印刷業界向けのシステムを中心に多数のシステムを開発。現在、ITコンサルタントとして、システムの最適化や開発の効率化などの技術面、特にオブジェクト指向開発に関するコンサルティングやセミナーを実施してきた。最近ではビジネスに即したシステム化のコンサルティングを中心に活動している。


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