ITIL Version 3はなぜ必要なのか(後編)IT管理の最新事情(2)(2/3 ページ)

» 2007年08月24日 12時00分 公開
[三木 泉,@IT]

インシデント管理は必ずしも出発点ではない

――長年にわたり、ITILについては多くの人々がどこから手を付けるべきかと悩んできたと思います。タービットさんの意見では、やはりインシデント管理から始めるべきだということになりますよね?

ALT アクセンチュア パートナー マイケル・ニーヴス氏

ニーヴス氏 「自動車はどこから始まるか」という質問に置き換えて考えてみましょう。運転手にこの質問をすると、「ハンドルから始まる」と答えるでしょう。トヨタ自動車(のような自動車メーカー)に聞けば、「部品会社からのパーツが出発点だ」というでしょう。自動車販売会社に聞けば、「まず小切手(支払い)からだ」と答えるかもしれません。子どもに聞けば、「車の前端から」と答えるでしょう。これは視点の問題で、仕事や役割によって変わってくるのです。問題を解決することに責任を負っている人は、病状の激しい部分から対処したいと思うでしょう。CIOなら、顧客(である企業)の要求することから始めたいと思うでしょう。従って、正しい答えや間違っている答えはなく、始める場所はいろいろあり、視点によって変わってくると思います。

――そこが問題ではないのでしょうか。ITILが最終的には全社的に1つのプロジェクトとして推進されなければならないのに、企業の経営陣、CIO、現場の担当者のそれぞれがまったく別の動機を持っているため、まとまりがつかなくなりがちです。

ニーヴス氏 2つのことを混同してはいけないと思います。どこから始めるか、つまりどこから行動を始めるか、ということと、目標は何かということは別物です。目標は必ず、顧客の側に立って必要なことから始めなければならず、IT組織の成功、失敗はこれによって計られます。コストの削減ではなく、効率の向上でもありません。コスト削減や効率向上を実現しても、顧客の目から見れば失敗になり得るのです。一方、どこから始めるかについては、先ほどお話ししたとおりです。CIOのオフィスから始めるのか、現場から始めるか、場合によって異なります。

 製造業のモデルからの脱却についてすでにお話ししましたが、製造業ではこの2つが同じことを意味しています。組み立てラインで生産が行われますが、まさにこれが目標となっています。われわれは「ちょっと待て、サービスではどう協力し合うか、どうやって関係者をまとめ上げるかに難しさがあるのだ」といっているのです。手を付け始める場所は変わるかもしれません。しかし目的は変わらないのです。だからこそITIL Version 3では工場ではなく、顧客のマインドから必ず始めるべきだとしています。

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