ブログによるマーケティングを検討しているが、どこから手をつければいいのかよくわからない。そんな人々Webマーケティング担当者のために、本連載を通じて、ビジネスブログを使いこなすためのいくつかのガイドラインを提示します。
「従来のWebマーケティングでは期待どおりの成果が上がりにくい」
「Web上でアクションを起こしても、思うような反応が返ってこない」
近ごろ、マーケティングに携わる方から、このような声を耳にする機会が多くなりました。企業サイトの運営と検索エンジン最適化(SEO)に始まり、検索連動やバナー広告を使った販促キャンペーン、アフィリエイトの活用、メールマガジンやコミュニティの活性化などのアプローチが一般化している中で、インターネットへ費やされるコストも年々増大しています。2006年のインターネット広告費は、対前年比29%増の3630億円に上り、いまや雑誌広告に匹敵する規模になりました。成長率は鈍化しつつあるものの、テレビや紙媒体の広告と比較しても、群を抜いた伸び率を見せています。
あなたもマーケティング担当者として、さまざまな選択肢の中から最も費用対効果の高いと思われるプランを、実施しては検証という作業を日々繰り返していらっしゃることでしょう。そういった地道な努力を重ねているにもかかわらず、「結果が芳しくない」と感じたことも1度や2度ではないはずです。
対外的なPR、見込み客の獲得へ向けた情報発信、既存顧客との関係構築等、企業と消費者をつなぐコンタクトポイントとしてインターネットは欠かせない存在ではあるものの、狙った効果を得るにはそれなりに創意工夫が求められます。情報の取捨選択スキルが向上しているインターネットユーザーは、簡単にバナーをクリックすることも、メールを開封することもありません。また、企業のメッセージをうのみにせず、情報の裏を取ろうとすることもあります。それ以外にも個人情報の保護に対する意識の高まりもあり、顧客リストを用意することも入手することも難しい世の中です。ターゲットにメッセージを届けるには、そういった二重三重のハードルを越えねばならず、以前のように“打てば即響く”わけではなくなりつつあります。
この手詰まり感を破る次の一手として、ブログが数年前から注目されています。さすがにブログと聞いて、「ごく一部のインターネットユーザーが書いている日記サイト」と連想される方は、いまでは少数派だとは思います。総務省の発表によると、2006年3月時点の国内のブログ数が868万を突破し、現在は1000万を超えるブログが存在するといわれています。インターネットユーザーの25.7%が現役ブロガーという調査結果(インターネット白書2007)もあり、ざっとインターネットユーザーの4人に1人がブロガーであることからも、その急成長ぶりが実感できると思います。
ブログおよびブロガーが企業から注目されている理由は、単純にその母数が多いからということもありますが、その本質は彼ら(彼女ら)の持つ強い影響力にあります。ブロガーと一般的なインターネットユーザーの違いは、「情報を発信する媒体を持っているか・いないか」です。
ブログ単体で捉えれば影響力は既存のメディアに劣りますが、数多くのブログが集合することで、強力な影響力を持つ消費者生成メディア(CGM)となり、時に企業の意思決定に影響を及ぼすほどの力を発揮することもあるのです。
その結果、インターネット上に生み出されるコンテンツの総量が増え、検索結果の上位に個人のブログがずらりと並ぶという現象も見られるようになりました。その動きを察知した企業は、プロモーションの一環としてブログをクチコミマーケティングツールとして商品の販促に組み込んだり、期間限定キャンペーン用の告知に活用したりする動きを盛んに見せているのです。
インターネットユーザーの4人に1人がブロガーであるとすれば、単純計算で自社ウェブサイト訪問者の4人に1人がブロガーであると仮定できます。その25%を「まだ少ない」とみるか、それとも「もはや無視できない」と意識するのか、あなたはどちらでしょうか?
「ウチはブロガーと関係ない業種だから」といい切れない現実は迫りつつあるのではなく、もうすでにそこにあるのです。インターネット上で存在感を増しているブロガーは、企業が遅かれ早かれ対峙せねばならない、避けて通れない存在となりつつあります。
とはいうものの、ブログはまだ新しいメディアですし、ブロガー特有の行動や考え方についても未知の部分が多く、つい身構えてしまいがちです。
「ブロガーが自分や自社にとって無関係ではないことは分かったけれど、ではどうすれば?」
「ブロガーとどう接し、コミュニケーションを取ればよいのか、ノウハウがないので分からない」
といった理由でブログの検討をためらい、導入を先送りしてしまうマーケティング担当者も少なくないと思います。
いわゆるブログ黎明期は、ブロガー=ITスキルにたけた一部の特殊層的な面もありましたが、いまは会社員や主婦、学生、シニア層を含む、ごく普通のインターネットユーザーに限りなく近いといえます。
「ブロガーは特別なインターネットユーザー」という先入観をお持ちでしたら、それは忘れてください。既存の自社でのインターネット対策の一環として、ブロガーの対策を含めることは可能です。
もちろん、ブロガーならではの付き合い方・接し方はあります。それについては今後解説していきますが、ブロガーを意識はしても、特別視する必要はありません。
多くのブロガーがごく普通のインターネットユーザーであることを踏まえ、では実際にブロガーとはどんな人々で、企業に何を求めているのでしょう。
まず、ブロガーは「自分の発言・主張を企業に聞いてほしい」「企業から多くの情報発信をしてほしい」という2つの特徴を持っています。ブロガーが求めているのは、一方通行ではない双方向のコミュニケーションです。
シックス・アパートがインターネットユーザーを対象に実施した調査によると、回答者の8割以上が、
「消費者の声を聞いてほしい」
「消費者が意見をいえる取り組みを見せてほしい」
と自分の声に耳を傾けることを企業に求めています。
そして7割以上が、
「もっと情報を発信してほしい」
「オープンな姿勢を見せてほしい」
と逆に企業からの発言を要求しています。
このことからも、企業の発信する情報は、ブロガーを含めたインターネットユーザーの求めるレベルに達していない実情が浮かび上がってきます。
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