良い顧客が良いITプロジェクトを作る開発チームを作ろう(5)(2/4 ページ)

» 2007年09月25日 12時00分 公開
[佐藤大輔,オープントーン]

金融基幹Java、チームリーダーHさん

 今回は金融の基幹システム現場が舞台です。大規模な複数のベンダが50名以上の体制で臨むシステム構築で、ミッションクリティカルなJavaベース(JSF)のシステムです。開発者の規模は200名以上、人月ベースでは1000人月以上に上ります。デザインパターンなども検討し、硬めのフレームワークをプロジェクト全般に伝搬させています。そして、上場クラスのSIベンダが多数参加するこのプロジェクトに、一技術者として入ってきた4人ほどのチームがいました。

 彼はそのリーダーです。当初チームは人数も少なく大ベンダに囲まれて決してプロジェクト内で重要な存在とはいえなかったメンバーでした。しかし、このプロジェクトでは非常に良いポイントが1つありました。参加するSIベンダを少数の大きなベンダの下に付けて任せてしまうのではなく、比較的小規模なベンダについても顧客自身がスキルの判定を行っていることでした。その上で、顧客は、優秀であれば、小規模なSI企業にも直接発注を行っていたことです。

 通常、大規模なシステム開発になればなるほど、日本(あるいは世界)を代表する数社のベンダのピラミッド構造で運営されることが当たり前の業界です。受注側の与信・口座などの営業的な問題だけではありません。大規模プロジェクトには多数のベンダと多数の技術者が参加します。そのリソースの管理や契約の管理を直接行えば、顧客は非常に多くのリソースと管理のノウハウが必要になってしまいます。

 その複雑さを思えば、特定の「管理するノウハウ」を持っている数社にプロジェクトの運営を委託することはビジネスの上では十分に理解できます。そうすることにより、ユーザー側は少ない「システム開発部」ないし「システム子会社」でプロジェクトを運営することができるからです。

 業界の「ピラミッド構造」にもそれなりの事情があって存在しているのです。

 しかし、結果として「ITガバナンス」を喪失している企業を大変多く見てきました。いま「システム」というのは企業にとって、社員や資本と同じくらい重要な存在になっている要素です。ところが、システムについては多くの企業が、「ガバナンス」を維持できるほどの経営資源を当てているとはいい難いケースが大半です。また、その喪失した状態を「もちはモチ屋に」「むしろ正常である」と見なしている企業が多く見受けられます。

 しかし、今回この顧客のシステム部門では、経営資源、特に人的資源をきちんと当てていました。前述の優秀なベンダへの直接発注のためには、「実際に手を動かす技術者」を自分たちで面接などを行い選定していました。その結果「技術者の質の把握」も直接していました。このことは、このユーザーがITガバナンスを維持し、技術者を直接把握していることで、Hさんとそのチームは技術力を正しく評価してもらえる機会に恵まれていたのです。

 結果、Hさんとそのチームは実装力を正しく評価してもらえる機会に恵まれていたのです。

ALT 図2 ガバナンスの喪失

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